その三十 マージ運輸始動
ーブロロロロ…プシー…ー
「どうですか?ウチの運転手の様子は?」
「ふむ、まぁまぁではないかの?」
予定であったガルドとディーノの依頼が早く切り上がった事で余裕が生まれ
勝治はマージにトラックを引き渡す為の運転教習をしていた
トラックも一応オートマで発現したものの乗用車とは違う操作等もあり、
運転手の育成には多少時間を割く必要があったのだ
「あ、旦那様‼かなり慣れてきましたよ‼」
ーブロロロロロロン…プシー…ー
「カツジさん、あの時々聞こえる気が抜ける音は何ですか?」
「おぉ、あの音は「排気ブレーキ」の排気音だの。トラックは自重も重いが荷物を積んだらもっと重くなるじゃろ?
普通のブレーキでは簡単に焼き付いてしまうのじゃ
それを補助する為に排気ガスを利用して制動力を生み出すんじゃ」
「…すいません、初っ端から理解不能です」
「まぁ仕方なかろうて。とにかくトラック二台に運転手を四人用意すれば回るじゃろ」
こうして2週間後、「マージ運輸」は開業したのだ
途中思わぬ誤算もあった。
この世界には魔物はいないが盗賊はいるので道中襲われる可能性もあるのだが
鉄製のキャビンに盗賊の攻撃が通じず何もせずに撃退出来たのだ
そもそもトラックの速度について来れる盗賊がいなかったのも幸いして
マージ運輸は荷物を期間内どころか迅速に届けてくれる、とあっという間に評判になったのだ
「大師匠!マージさんが嬉しい悲鳴をあげていると連絡がありましたよ」
「ほっほっ、商売繁盛は何よりじゃ」
「もう少し軌道に乗ったらもう何台か欲しいそうですが」
「ふむ、それも考えようの」
「師匠、我々は労せず金が成る木を手に入れましたか‼」
「フフフ…まぁそうじゃの。だが人は汗水垂らして得た金が一番じゃよ」
「そうですね。アブク銭より有り難みがある金の方が良いです」
「手押し車に運輸からのお金か…儲かりますなぁ、大師匠‼」
「ディーノは金に溺れるタイプじゃの、鍛え直さんと根性が曲がりそうじゃ」
「ゴメンナサイ…カンベンシテクダサイ…」
その夜とあるトレーニングルームからディーノの悲鳴が聞こえたとか
ー翌朝ー
「じゃあ親方、行ってきます」
今日は急遽舞い込んだ屋根の補修工事に勝治とディーノが対応する事になった
「ガルドよ、お主は腰を養生するんじゃぞ」
「はい」
走り去る軽トラを見送ったガルドは再びベッドへと戻るのだった
「ほう、ここの屋根は板葺きじゃの」
「この辺じゃちょっと珍しいですね」
「フフフ、久々に腕が鳴るわい」
勝治は梯子をスルスルと昇ると手早く傷んだ屋根材を剥がしていく
「ほ、粗いながらも柱もあるわい」
勝治は久々に大工仕事が出来るので上機嫌だ
「大師匠‼俺は何をしたら良いですか?」
「今日の作業は大した事はないから廃材を片付けちょってくれ」
「分かりました‼」
勝治が慣れた手つきで屋根材を葺き直しサービスで防水塗料を塗る
「ふむ、こんなモンじゃろ」
作業は半日で終わってしまった
「相変わらず早いですね」
「この程度の作業に時間は必要ないじゃろ」
「普通はこれ、1日以上の作業ですよ?」
「ほっほっ、迅速丁寧がワシのモットーじゃよ」
「半日で終わったし今日は外食でもしませんか?」
「お、えぇのう。何処か美味い店を知っとるかの?」
「任せて下さいよ!」
勝治とディーノは町にある食堂で舌鼓を打って帰路についたのであった
本日はここまで。




