その二十九 親方代理の勝治
ー1週間後ー
「まぁこんなモンかの?」
「…大師匠…張り切り過ぎですよ」
勝治はこの1週間で本来なら1ヶ月は掛かろうと言う作業を終えてしまっていた
「む?そうだったのか…まぁ早目に終わるのは依頼主にもワシらにも良い事じゃろ?」
「まぁそうですけど…言いたいのはソコじゃなくてどんだけパワフルなんだよって事で…」
「ん?問題がないなら良かろ?では挨拶して帰るぞぃ!」
「あ、はーい」
ディーノは三人前働いた老人のパワフルさを突っ込むのは諦めた
(…前に大師匠が言ってた気合いと根性ってのはスゲェな…)
ーブルルーン…キィー…ー
「親方ぁ‼帰りましたよー」
「師匠、お帰りなさい‼」
「ガルドや、腰の調子はどうかの?」
「お陰様で大分良いです」
「ほ。それは良かったの」
「親方ぁ、依頼なんですが大師匠が頑張っちゃって今日終わりましたよ」
「へ?え?もう終わった?」
「はい」
「石を置いたりレンガをただただ積む作業だったからの、黙々とやっとったら捗ってしまってな」
「おいディーノ、あの邪魔だった大岩はどうした?」
「それが…大師匠が2つも3つもヒョイヒョイ持って片付けちゃいましたよ、1日で」
「はあ??」
ガルドは勝治の異様なパワーに愕然とした
「…俺とディーノが二人がかりで動かせなかったアレをか?」
「はい…ヒョイっと…」
「ほっほっ、日頃の鍛え方が違うのよ」
((…鍛え方云々じゃないと思うんだよな…絶対…))
「し、師匠‼さぞお疲れでしょう‼風呂にでも入ってサッパリして来て下さいよ」
「うむ、そうするかの。行くぞディーノ」
「あ、はい‼」
ディーノは先導する様に脱衣場に入る
「いやぁ、今日は流石に疲れましたね」
「ん?そうか?」
1ヶ月掛かる増築を1週間程度でこなしておいて勝治は事も無げにそう言い放つ
「でもあんなに根を詰めて働…⁉」
ディーノは脱ぎかけた上着をハラリと落とす
何にそこまで驚愕したのか?
それは…
引き締まった足、太い両腕、そして見事に割れた腹筋を持つ勝治の肉体だった
「だ、大師匠?」
「ん?」
「確かお年は…」
「おお、八十を越えておるな」
「えっと…正直凄いっす」
ディーノは今年21、親方も35、その二人を遥かに凌駕する厚い胸板に愕然としていたのだ
「…何食ったらそんなにマッチョになるんすかね…」
「ほっほっ、言ったじゃろ?若い者とは鍛え方が違うんじゃて」
ディーノはカラカラと笑う勝治を見ながら深く考えるのをやめた
「失礼しまーす」
そこへヒョコヒョコと親方が入って来た
「どうした?ディーノ…ってええっ???」
「ん?何じゃ?」
「師匠…その体は一体…」
「何じゃ?お主もか?じゃから鍛え方が違うんじゃと言っておるのだ」
「エェ…ソウデスネ…」
ガルドも即座に思考を停止させた
フンフンと鼻歌を歌いながら体を洗う勝治の広い背中を見つつ二人は呆けるだけしか出来なかった




