その二十七 便利道具
ーチュイィィ~ン…ー
勝治達は丸太を加工している
床柱等に使う丸太は既に磨きがかけられ保管中だ
今の加工は板材を切り出す作業なのだがガルドは勝治の発現した道具に感動している
「それにしてもこの道具達は便利ですねぇ~」
「うむ。先人達は余多の道具を使い人の力で切り出していたがの、ワシはこの道具で効率化しておる」
勝治は電鋸やテーブルソー、数々の電動工具を発現し利用していた
「伝統に拘るなら手動なのじゃが大まかな部分はこうして電動に頼った方が手間が掛からんじゃろ?」
勝治は昔気質の職人ではあるが柔軟な思考の持ち主でもあった
拘る所は拘りそれ以外は効率化を図る事で作業を淀みなく進める事を是としていたのだ
「但し全てを効率化しては木も泣くんじゃよ。やはり最後は人の手で造りあげないとの。」
ガルドも思い当たる部分があり勝治のハイブリッドな思考に心服していた
職人は技術に拘るあまりに旧態依然としたしきたりを重んじる風潮があったりする
ガルドも弟子時代に仕込まれたしきたりに追従してそれを疑わなかったが
勝治は良い部分はそのまま残し悪いしきたりはあっさりと廃すると言っているのだ
(師匠のこの柔軟さは俺も見習わなくては…)
モリモリと作業を進める勝治を羨望の眼差しで見つめるガルドであった
「ふむ、ではこの辺で仕舞いにしようかの」
勝治達は粗方板材を加工すると資材置き場に運んだ
本来であれば丸太から木材に加工する為には乾燥させたり何だりとそれなりの時間が掛かるのだが
その辺は勝治の謎の力ですっ飛ばしてある。実に便利な能力なのだ
「師匠、今日はあの「刺身」が食べたいですね」
「おぉ、ガルドもあの味に惚れたか!ワハハ!」
この世界では保存技術が未発達な上に輸送手段も未熟な為生の食材をそのまま食べる習慣がない
万が一食あたりを起こしても治療の要である医療も蘭学が入る前の日本レベルなのだ
それ故に勝治の提供する刺身や生物はガルドの味覚に革命を起こしていた
捌きたての生魚を醤油とわさびで食べ日本酒を流し込む
この至福の一時はガルドにとってかけがえのない時間になっていた
「更に露天風呂での冷や酒は…じゅるり…」
「ほっほっ、ガルドよ。ヨダレが出ておるぞぃ?」
勝治の生み出すモノは全て驚愕と感動を生むが食への拘りはその中でも別格だった
勝治曰く「食の豊かさは職人の想像力を養うのじゃ」だそうだがそれを除いても素晴らしい味なのだ
「あ、親方、大師匠。おはようございます」
「馬鹿野郎!もう夕方だ!(ポカッ‼)」
「痛てて…病人に何するんですかっ⁉」
「二日酔いは病気じゃねぇぞ?」
「…そうでした。すいません」
「ほっほっほっほっ」
勝治は二人のやり取りを微笑ましく思った
勝治にとってガルドとディーノは既に弟子を越えて子と孫の様にも思えていたのだ
(この光景をいつまでも見ていたいモノじゃ…)
勝治は本心からそう願った
今日はこれにて。




