その二十六 マージの渇望(二)
「しかしこれは…」
勝治に色々と説明されてマージは驚愕を通り越して呆然としている
マージが所有する中でも最大の荷馬車よりも広い荷台、快適そうな御者台(運転席のキャビン)、そしてその巨大さである
「これが馬なしに走るのですか?」
「ふむ。その通りじゃが操るにはちと修練が必要じゃの。」
「…欲しい…是非とも欲しいです!」
「ほっほっ、それは構わんよ。元よりマージにやる為に出したのじゃからの」
「…カツジさん…」
マージは面食らった
元々勝治とはより良い条件を提示して「取引」をしようと意気込んでやってきたのだ
それなのに勝治は気前よく、更に「軽トラ」よりも凄いモノをマージに渡そうとしたのだ
「カツジさん…何故私にこの様に良くして頂けるのですか?」
「ワハハ!マージはもうワシらの「仲間」ではないか!のぅ、ガルド」
「はい、仲間ですな。ワハハ!」
マージは心の底からうち震えていた。
商人として辛い修行を経て一人立ちし、今の規模迄に育てた彼の人生には「商売相手」や「商売敵」はいても「仲間」はいなかった
それを今勝治やガルドは容易く「仲間」と言い切ったのだ
マージの胸は熱くなっていた
「カツジさん…私は…」
「ほれほれ、泣いていないで茶でも飲んで落ち着こうではないか」
勝治は崩れ落ちそうなマージの肩を抱いて家へと案内した
落ち着きを取り戻したマージは勝治達に様々な贈り物を提示した
元々「取引材料」として用意した「木材の無料提供」等に加え今後一切の資材の無料提供を提案した
それにトラックによる輸送の効率化で出た利益の分配案や今後の発明品に対する利権の話など
マージの商人人生を賭けた提案話は夜になっても終わらなかったのだ
「マージや、それだけ話せば腹も空いたじゃろ?今宵はワシのもてなしで酒盛りでもしながら話をしようではないか」
そう言うと勝治はテーブル一杯の山海珍味と日本酒を用意した
マージにとってもこれだけのご馳走は王族の食卓でも見られないと絶賛し、その味にも最大級の賛辞をしたのだ
「この「日本酒」は…実に味わい深い酒ですね、これは美味い!」
「ワハハ!そうかそうか!たんと飲んでくれぃ!」
こうして勝治達はどんちゃん騒ぎを心ゆくまで楽しみ
更にマージは露天風呂で腰を抜かす程の衝撃を受けたりと笑いが絶えない時間を過ごしたのだった
ー翌朝ー
「では失礼します」
マージは勝治が用意してくれた軽トラに乗り込み手を振った
ーブルルーン…ー
「師匠、マージさんは大喜びでしたね」
「ふむ、ワシらも沢山土産を貰ったの」
「ところであのトラックはどうしますか?」
「そうじゃの…一応運転手を育てるまではソコに置いておこう」
「なるほど、分かりました」
「あれが二台もあればマージの所も儲かるじゃろうて」
「!?二台も?そりゃ俺達にも相当の恩恵が出ますな?」
「ワハハ!そういう事じゃの!」
勝治とガルドは悪い顔をしながら笑いあった
「痛ててて…あれ?マージさんは帰ったんですか?」
ディーノが二日酔いの頭を抑えて家から出てくる
「今日は作業は休みだから寝てても良いぞ?」
「痛てて…そうさせて貰います…」
ディーノが家に戻った後、勝治とガルドは木材の切り出しに着手するのであった




