その二十四 軽トラパニック
勝治達が町中に巻き起こした衝撃は早速衛兵達の耳に届いた
「何っ⁉おかしな馬車が丸太を積んで町中を走っておるとな⁉」
衛兵は伝令を聞き色めき立つ
治安維持が仕事の彼等にはそういう類いの沈静化も当然使命の内だからだ
「急ぎ町へと出て犯人と荷馬車を捕らえよ!」
衛兵達は武装して町へと飛び出した
「あ、衛兵さん‼遅いよ~‼」
目撃者達は口を揃えて文句を言う
聞くところによるとその荷馬車は既に走り去ってしまった様だ
「あ、でも乗っていたのはガルドだったな?」
「あぁ、隣にゴツい爺さんも乗っていた」
目撃者の証言で犯人(?)はガルドだと一発で判明する
「お?何の騒ぎだい?」
ソコに運悪くディーノがのこのこと騒ぎに釣られてやって来た
「おいディーノ!お前の親方は何をしたんだ!」
「は?…え?」
「引っ捕らえよ!」
「え?…えぇ~~???」
こうしてディーノは衛兵に捕縛され詰所に連行されてしまったのだ
ー衛兵詰所ー
「…だからぁ‼あれは「軽トラ」って言う荷馬車なんですってぇ‼」
ディーノは衛兵の詰問に飽き飽きしつつぶっきらぼうに返答する
「その「軽なんとか」は武具ではないのかっ⁉どうなんだっ?」
「だからぁ‼軽トラは荷物を運ぶ道具だって何べんも言ってるだろ‼全く衛兵は頭が固くて仕方がねぇなぁっ‼」
「ディーノじゃ埒が明かんな…良し、そのカツジとやらを捕らえに行くぞ!」
「は?ちょっ、ちょっと待てよ!」
ディーノは慌てたが縄で縛られたままディーノの家に連れて行かれる
ーディーノ宅ー
「!師匠‼衛兵とディーノがやって来ましたよ?」
「ん?何じゃ?」
「ここにカツジはいるか⁉」
「うむ、ワシが勝治じゃが何用かの?」
「何用もへったくれもないわ!お前達が乗り回した「軽トラ」という馬車で聞きたい事がある!大人しく我々について来い!」
「ほぉ、何も悪い事はしていないのに引っ捕らえるとは…役人と言うのはどの世界でも同じだの」
「黙れ!おい!捕縛しろ!」
衛兵達が勝治とガルドを取り囲もうと動いた時、後ろから慌てた声が響いた
「ちょっと待ったぁ~っ!!」
見ればマージが馬に乗って駆け寄ってきていたのだ
「…と言う訳であの方は我々に多大な貢献をされたお方なのです」
マージの説明に衛兵の隊長は目を白黒させている
「何と…では近頃出回っている「手押し車」はあの者がもたらした発明品だと?」
「はい、それに彼は今後町に莫大な益をもたらす御仁です。今日の所は穏便に願いますよ」
「うーむ…だがこのまま放置すれば我々の面目が立たんぞ…」
「領主様には私が説明しておきますので隊長はお咎めなしと進言します」
「うむ、マージがそう言うのであれば…皆の者、撤収だ!」
マージの尽力で当面の危機は脱した様子である
「マージさん、助かったぜ。あのままでは師匠が捕縛されてた所だ」
ガルドがホッとため息を吐いた
「いえいえ、騒ぎを知るのが遅すぎて…知ったのはディーノさんが連行された後だったんですよ」
「おーい、親方ぁ…縄を解いてくれよ~…」
「全く…どれだけ間の悪い奴なんだ…」
ガルドはディーノの縄を解いてやる
「それにしてもカツジさんがご無事で良かった」
「ん?ワシは衛兵達とひと暴れしてやろうかとワクワクしておったのだがのぅ…」
「「「。。。は?」」」
勝治の脳筋は喧嘩っ早い江戸っ子の血をも復活させた様だった




