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その二 見えざる力


ー翌日ー


「おい爺さん、起きたか?」


まだ日も登らぬ早朝に勝治は起こされた


「むぅ…どうした?」


「俺はこれから仕事に出るからよ。留守番でも頼むわ。」


「それは構わんが何も出来んぞ?」


「あー、それは大丈夫。誰も来やしないからな、爺さんはソコでゆっくり休んでなよ。あと腹減ったらテーブルにパンあるからな、食べてくれよ」


そう言い残すとディーノは手弁当1つぶら下げて家を出て行った。


(…はてさて、この状況はどうしたモノかのぅ?…)


勝治は今の現状を見つめ直す`


(どうやらワシは`ピルケ`と言う所におって外国?の様じゃ。介護ベッドごと運ばれて…棄てられたのかのぅ…)


身体を動かすのが困難な勝治にはそこから先は全く判断出来ず悶々と部屋の天井を見つめていた


「ん?そう言えば何故ベッドは動いたんじゃ?」


草原のど真ん中で、そして今この部屋の中で、ベッドのリモコン操作でリクライニング等が動いている


ー通電していないのにー


勝治は重い体を何とか起こすとコンセントを探すが見つかる筈もない


蛍光灯もなく家電も見当たらないガランとした室内にあるのは天井からぶら下がったランタンとテーブルの上の蝋燭だ


(となるとどうやって動いているのかが本当に分からんの…)


そう思いながら勝治はベッドをリクライニングさせる


(…祐二や美鈴さんに何とか連絡を取らないとダメじゃの)


とは言え先程確認した限りでは電話など求める方が間違っている


(一体どうしたらえぇのじゃろう…それにしても喉が渇いたわい…)


勝治は頭を動かして辺りを見回すが水道らしきモノはない。

ふと流し台を見ると脇に水瓶の様なモノが置いてある


「…あそこまで行かんと…」


勝治は衰えた体を必死に動かし起き上がるが水瓶迄が果てしなく遠い


「あ、、あ、、」


思わず漏れ出た声の先には勝治が渇望する水がある


「あ…んっ?」


必死に伸ばした手にいつの間にかグラスが握られその中には水が入っていた


「これは…どういう事じゃ?」


勝治には全く訳が分からなかった

届かないと諦めかけていた水が手元に突然握られていた

しかも驚く事に透き通ったグラスの中には「氷」がカランと音を立てている

冷蔵庫も見当たらないこの部屋で氷が入った冷たい水が突然現れた


愕然とグラスの水を眺める勝治だが喉の渇きには逆らえずそっと口をつけた


「美味い…」


水がこんなに美味しいと感じたのはいつ以来だろうか…


ひと心地つくと次は空腹に襲われる。


(確かパンがあると…)


。。。遠い。テーブルが遠い。


身体が不自由というのはこれ程絶望を味わうのか、と改めて思う


「…どうせなら焼き魚に味噌汁、白米なんぞを食べたいのぅ」


ー!?ー


勝治は呆れて考えるのを止めた


ベッドに備え付けのテーブルの上には今正に作りましたと言わんばかりに湯気を立てて置いてある


「何じゃ⁉これは一体…?」


勝治は恐る恐る箸をつける


「…美味い…」


勝治は飢えに任せて目の前の食事を一気に平らげたのであった

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