その十二 日々是鍛練
「じゃあ爺さん、行ってくるぜ」
「師匠、ご無理はなさらずに」
「うむ、気をつけての。」
ディーノ達が現場に向かった後は勝治の奮闘タイムだ
先ずはルームランナーで20分ウォーキング、そして休憩を挟んでチューブトレーニング
そしてまた休憩を挟んで3㎏のウェイトを持って上半身を鍛える
日本で行っていたリハビリメニューだがあの頃は気力も体力も追い付かず余生など望んでいなかった自分に苦笑する
「人間目標が出来ると変わるモノなのじゃな…」
自嘲気味に吐いた己の言葉に驚くが今は以前の自分とは違うのだ
気力が衰えた体力を凌駕しそれに伴い苦労を苦とも思わなくなっていた
「さて、今度は図面じゃな」
勝治は日本茶を啜りながら図面に目を落とした
ーディーノ達の現場ー
「親方ぁ、爺さんまた倒れてないですよねぇ?」
「大丈夫だ。師匠はそんなにヤワじゃねぇよ」
「それにしても爺さんの作ってたあの「図面」ってヤツ、凄かったですねぇ」
「あぁ、俺もあんな形で家作りを始めるのは聞いた事がない。多分あれは師匠の国で培われた技術なのだろうな」
この世界にも「設計図」は存在はしているがそれは城等を作る上級の建築士が独占していて
庶民の家は現場の職人、大工達の経験と勘に頼って作られていたのだ
とは言えその上級建築士でも勝治の作図程の細かさで描かれる事は殆どなかった
それは多分木材を組み合わせて作る家屋と石材等を積んで作る家屋との違いなのだろう
ガルドはいずれ師匠の技を学んで自分の糧にしようと固く誓うのだった
ーディーノの家ー
「帰ったぜ!お?今日は大丈夫みたいだな、爺さん」
「当たり前じゃ。そうそう倒れてなるものか」
「師匠!お手空きの時間で結構ですので俺にその「作図」を教えてやって下さい!」
「うむ、勿論そのつもりじゃて。お主にはワシの技術を全て伝授するからの」
「師匠…ありがとうございます…」
ガルドは勝治の言葉に男泣きした
「あーあー!野郎同士で湿っぽくなってもムサいだけだぜ?さっさと飯食って晩酌にしよう!ね!親方!」
「…うむ、そうだな。師匠、お願いします」
「お主らは年寄り使いが荒いのぅ。」
「爺さんはもう年寄りじゃないぜ?親方の師匠で俺の「大師匠」だ!」
「む?いつワシがディーノを孫弟子にすると言った?」
「そんなぁ~⁉俺にも伝授して下さいよー!」
「お主はまだ気合いが足りぬ」
「そうだぞ!師匠の俺と一緒に学んだらお前は孫弟子じゃなくて2番弟子じゃねぇか!」
「ちぇっ!一緒に学んで親方追い越そうと思ってたのによ!」
ーゴチンッ‼ー
「痛ってー‼そんなポカポカ叩くなよ、親方ぁ!」
「お前には百年早ぇ!」
勝治は二人のやり取りを微笑ましく思っていた
威勢の良い言葉は勝治の耳には懐かしく心地よいものだった
一刻も早く体力を取り戻し彼らの輪の中に加わりたいものだ、そう切望する勝治であった




