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その一 爺さん異世界を渡る


…此処は何処かの?


齢八十を越え寝たきりとなった勝治は今何故か草原にいた


力なく首を動かし辺りを見回すがそこは見慣れた自室ではなく家の中ですらもない


衰えた体を必死に動かしベッドのリモコンに手を伸ばす


ーウィィィ~ン…ー


リクライニング機能を使い上半身を起こすと勝治の目の前には信じられない「世界」が広がっていた


ー青い空白い雲、一面に広がる草原ー


小鳥のさえずりさえ聞こえるこの風景に勝治は頭を悩ませた


(ワシは一体どうなっとるんじゃ?まさか…姥捨て山にでも棄てられたかの?)


近代日本ではあり得ない話ではあるが全く考えられない訳でもない

だが勝治の息子達はそんな道を外す様な育て方をした覚えはなかった


「…おお~い、誰かいるかの~?美鈴さぁ~ん」


勝治は毎日献身的に世話をしてくれている長男の嫁、美鈴を呼んでみたが返事はない


「一体ワシはどうなるんじゃ…」


勝治が途方に暮れていると何処からか人の気配がした


「祐二、美鈴さん、ソコにおるのか?」


勝治の問いかけは空しく消える


「…爺さん、あんた此処で何してるんだ?」


返事をしたのは息子や息子の嫁の声ではなく若い男性の声だった


「…ワシも分からんのだ。此処は何処かの?」


「怪しい爺さんだな…ここはピルケ。ピルケだよ、爺さん」


「ピルケ?」


そんな地名は勝治の人生で聞いた事もない


(が、外国なのかの?ならワシはどうやって運ばれたんじゃ?)


「おい、爺さん‼お前珍しい寝具に寝ているな、魔導具か?」


魔導具?最近はベッドを魔導具とでも呼ぶのか?…まあ良い


「ワシは勝治と言う者じゃ。お主は?」


「俺か?俺はディーノって言うんだ。爺さん、こんな所で寝てたんじゃ魔物に食われちまうぜ?早く町に戻った方が良い」


(魔物?この辺は熊でも出るのか?)


「…動きたくても動けんのじゃ。ワシは立つ事すら出来んからの」


「おいおい、爺さん。じゃあどうやって此処に来たんだよ?寝具ごと捨てられたってのか?」


「それが分からんのじゃ。此処は日本ではないのかの?」


「は?ニホン?地名かそりゃ?兎に角見つけちまった以上助けねぇ訳にもいかねぇな…チッ‼仕方ねぇ。爺さん、町まで運んでやるよ‼」


「おぉ…すまんのう。」


ディーノは勝治を背負うと町へと向かった


「何ぃ⁉無一文だって⁉」


ディーノは目を見開く


「爺さん、体も動かねぇってのに寝具に寝かされたまま無一文で捨てられたって事かぁ⁉

…世知辛い世の中になったもんだな…良し‼爺さん俺のトコに来な。何とかなるまで面倒見てやるよ」


勝治はディーノの優しさに思わず涙した


「…すまんのう…」


「だぁ~っ‼泣くなよ爺さん。こっちが困るぜ」


こうして勝治はディーノの家で厄介になる事となった

因みにベッドはディーノがその日に回収きてきてくれたのだった

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