脱出
今回は短めです。
彼女の父親である男はゆっくり目を閉じてため息をつくと、
「あの子と共にあることが君の望みかね?」
そう問いかけた。
自らの本心を言い当てられた彼はゆっくりと顔をあげると控えめに頷き視線をそらす。
その様子を見て男はやさしく微笑むと懐から一枚の地図らしき紙と革で出来た手の平ほどの大きさの袋を取り出した。
「この都から少し離れた村に私の隠れ家がある。そこでしばらく身を隠していなさい。」
男がベッドのサイドテーブルの上に置かれたベルを鳴らすと執事らしき人物がドアを開けて入ってきた。
それと同時に男は椅子から立ち上がり青年に背を向ける。
「詳しい話はこの者に聞きなさい。」
そのまま執事と入れ替わるようにドアの方へ向かいノブに手をかけ、消えるような声で青年に最後の言葉を伝えた。
「…………娘を……愛してくれてありがとう……」
屋敷内に複数の足音が響いている。
「あの男はどこに行ったんだ?探せ!」
兵士達は慌てていた。
隣国との交渉が終わり、大国へ引き渡す予定の男がいるはずの部屋のベッドはもぬけの殻になっており庭に面する窓が開け放たれていた。
この隊の隊長らしき人物が指示を飛ばす。
「もうこの屋敷から出ているかもしれん!外も探せ!!
それとあの状態の者を逃がすには協力者もいるはずだ。許可はある!疑わしい者は全て捕らえろ!」