救出
彼はただぼんやりと天蓋を見つめ続けていた。横になっているベッドはそれなりの広さがありとても質の良いもので本来であれば心地よい眠りに誘われていただろう。
しかし彼は記憶が混濁していた。自分が体験したことの断片的な情景は浮かぶがそれも鮮明ではない。心と体がうまくリンクしない状態に彼はどうすることも出来なかった。
「目が覚めたか?」
視界の中に見知った顔がそっと入ってくる。
人が側に来たことに全く気付かなかった彼は驚き一瞬震えた。
「あまり大丈夫じゃ無いようだな…。………動けるか?……」
月に一回顔を合わしているその男はなるべく感情を抑えて声をかけながら彼が体を起こすのを手伝った。
「……ここは?……なんであんたがいるの?……なんか思い出せな…
「それはいいことだ。たちの悪い奴に捕まって全身ボコボコにされたと思っておけ。そして思い出さんことだ。」
男は淡々とした口調で話を遮り、目の前に服を置くとそれに着替えるように促す。
「君の身柄については交渉済みではあるのだが…。しかしとんでもない奴らに目をつけられたな。執着もひどい。3ヶ月よく生きていたな……」
「……3ヶ月……?」
ベットの上で男は簡単に状況を説明する。
約4ヶ月前に隣国の王族がこの国に外交で来ていたこと。
その来ていた王太子とその娘の特殊な趣味のこと。
男が月に1回の手紙をもって孤児院へ行った際に彼が失踪したことを知ったこと。
失踪し手紙の返信の無いことに怒り狂う自分の娘の様子。
良くも悪くも目立つ彼の容姿のおかげで目撃者が多数おり詳しい状況が判明したこと。
それを知ってさらに怒り狂う自分の娘の職務放棄。
1ヶ月かけ交渉し隣国から連れ帰った時には彼の意識が無かったこと。
「先日今度は隣国がお前に関して交渉して来た。この国にとっては破格の条件を提示してな。」
内容盛りだくさんな話に理解が追い付いて行かない彼を気遣いつつ男はため息をついた。
「お前の身の危険は続いている。すでに始まりの民の部族長達の内4つの部族がこの交渉に合意の意思を示している。半数の承認を得るのにもう時間があまり無い。」
この国では別の国の人間の血が入っている彼のような人間は限りなく人権が無いのだ。決まれば拘束され堂々と隣の国に連れていかれることになる。
「君はどうしたい?」
そう問いかけられて沈黙がその場を支配する。
久しぶりに正気に戻った彼は回転の遅くなった思考回路を必死に動かした。
しかし行き着く答えは一つしかなかった。
「彼女と一緒にいたい。」
彼の願いは、言えることはこれだけだった。
何をされたかはご想像にお任せで……
姫様のご趣味は父親譲りです((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル