彼の受難
乱暴なシーンと危険な思考の人が出てきますのでご注意を…
「ねぇ。あなた、きれいな顔ね。」
市場で買い出しをしていた若者は横から服の袖を引かれ声をかけられる。
緩やかに波うった腰まであるストロベリーブロンドの髪にルビーのような瞳が印象的な少女がそこにはいた。
少女の愛らしいその容姿は始まりの民とは明らかに違っている。だが身形や立ち振舞いからその辺の庶民とは明らかに違うものが感じられた。
ふいに少女は若者の頬に手を伸ばす。
彼女は満面の笑みを浮かべている。
かつて巫女の少女と共に孤児院で暮らしていた少年は現在、端正な顔立ちの若者へと成長した。
彼は成人した時点で孤児院を出ようとも考えていたが、愛する人との文通や孤児院の環境改善をしたいという夢も出来たため、その場にとどまっていた。今では院長に代わり孤児院の業務や資金の運営等を行うまでになっている。
今日、彼は院の貴重な収入源である加工した薬草を都の市場に卸し、得た資金で食料の買い出しを行っていた。
「決めたわ。これを連れて来なさい。」
少女は後ろに控えていた護衛らしい男にそういい放つ。
踵を返した彼女と入れ代わるように二人いる男のうちの一人が彼の前へ歩み出た。
軽く睨まれ「来い。」と短く言われる。
彼はこの状況に全くついて行けなかった。本能的な嫌悪感が押し寄せ吐き気すらも込み上げて来ていた。
その様子に男は苛立ちを露にし、彼にだけ聞こえる声のトーンで暴言を吐く。
「早くしろ。待たせるな愚図。姫様は貴様のようなどこの馬の骨ともわからん奴を受け入れるとおっしゃったのだ。精々その小綺麗な顔でお慰めしろ。」
胸ぐらを掴もうと伸ばされた男の手を反射的にかわして距離をとった。購入した物も持たず本能的にその場から走り去ろうとする。
「手間をかけさせるな。」
訓練された男と彼の身体能力は比べるまでも無かった。
あっという間に右腕を後ろに回され地面に腹ばいになるように取り押さえられる。自由な左腕のみで起き上がろうと試みたが背中の中心に衝撃と重みが加わりより強く地面に抑えつけられた。
髪を掴まれ無理矢理顔を横向きにされれば背中の上にいる男と目が合う。
無表情だった男の顔が嗜虐的な笑いに変わったと同時に右腕をねじり上げられ彼は苦しさと痛みで顔を歪めずにはいられなかった。
「ほう。なかなか良い顔だな。これは姫様もお喜びになるはずだ。今回は何ヵ月持つか楽しみだ。」