彼の思い(2)
二時間かけて書いた続きが保存できなくてパーになった。ショック!
彼女はかなり訳ありな事情でこの孤児院にやって来た赤ん坊だった。彼女を連れてきた男は始まりの血を色濃くついでいることがはっきりとわかるだけでなく、仕草や言葉づかいから高貴な雰囲気も見てとれる。そんな男によく似た赤ん坊はこの施設に預けられるらしい。別れる間際、そっと赤子の頬にキスを落とす仕草から彼女が愛されているのがわかる。
それから8年後。
「先代の巫女が亡くなられた際の遺言により彼女が後任者に決まった。」
彼女を連れてきた男はそう言って再びこの施設にやって来た。品は失われていないものの、かつてよりもやつれ年とった印象を受ける。
少年は少女をそっと抱き締めるぐらいしか出来なかった。赤子だった彼女の世話をずっとしてきた彼は恨めしそうに迎えに来た男を睨み付ける。そこに護衛らしい男達がやって来て二人を引き離した。大泣きで連れていかれる彼女のもとに行こうともがくが護衛の一人と孤児院の院長に阻止される。そんな彼の前にまた一人立ちはだかり声をかける。
「巫女は家族との手紙のやり取りは許される。君の手紙は…私に預けてくれれば彼女に届られると思う。」
いまさら家族面をする男にイラつきながらも彼はそれに従うしか無いのは理解していた。でも納得が出来ないのだ。
それから2ヶ月間、彼は手紙を出すことは無かった。何度も都の神殿へ彼女を尋ねたが門前払いをくらい帰ってくる日々が続く。
「手紙を預かって来た。出来れば返事を書いてやってほしい。」
突然また男は孤児院にやって来た。少女を迎えに来たときより少しばかり顔色の良くなった男は穏やかな顔で少年に手紙を渡して来た。男のことは気に入らないが手紙は気になり封を開ると彼女のつたない文字が懸命につづられている。
内容は自分を巫女に選んだ神をうさぎのぬいぐるみに封じ込めて嫌がらせをしたこと、それにより動くようになった"うさちゃん"の可愛さや逃亡の計画を立てていることなどが書かれていた。神相手に不敬にも程がある彼女らしい内容記された手紙に彼は別の意味で彼女の事が心配になった。
「何年もほったらかしにしていて言えた義理ではないが…。ほぼ毎日のように元気いっぱいトラブルを起こしてくれているよ。ここは躾とか教育とかは出来るような環境では無いしな…まあ私はあの子が元気に育ってくれただけでもとてもうれしいよ…」
ため息をつきながら男はなんだか嬉しそうだった。彼女をずっと育てて来た彼としても元気なだけでもうれしいのは一緒だ。それからしばらく男と少年は少女の言葉を交わしたのだった。
「ではこの手紙は預かろう。また手紙を預かったらまた来る。」
そして二人の文通が始まった。書ける手紙は1ヶ月に1回程度だったが時を重ねて行く内に家族愛から異性に対しての愛に感情が変化していった。
ちなみに彼はずっと彼女が16歳になったら告白しようと思っていたが、それより早い彼の20歳の誕生日に届けられた手紙によって先を越されてしまい、大人となった彼をうれしいような、悔しいような気持ちにさせたのはまた別のお話しである。