試験そして【麒麟児】
大分遅れてしまい申し訳ございません!
「とうちゃーく……っと。依凪には学園付近へ飛躍してもらったけど……あ、あそこだ」
光が止み、前方を確認すると大きな建物が見えていた。
アレが《神州第一魔法・魔術学園》か……。
とにかくデカい。びっくりするほど大きい。
「さてと……なるべく早く試験会場へと向かおうっと」
あ、でも時間は30分弱あるし街を観光するか。
そうと決まれば即行動。
妾がワープしてきた場所は裏路地だったから誰にも見られていない。
レンガ造りの裏路地から出ると街の景色が見えた。
「うわぁー綺麗だな〜」
神州もここまで発展したか。
……って言うかやけに人が多いな。
「すいません、どうしてこんなに人が多いのですか?」
妾は店の人に何故こんなにも人が繁栄しているのかを聞いた。
「ん?何だい嬢ちゃん?『首都』は始めてかい?」
少々訂正したいところがあるが素直に応えておこう。
「はい、そうですが……」
「それなら仕方が無いねえ…田舎の人は伝わってないかと思うが今年は【麒麟児召喚】というものがあってな。【麒麟児】が召喚されたんだぜ」
存じております。
「そしてその【麒麟児】達は《学園》で技術向上のため入学するらしいんだが……それを耳にした受験生と来たらすごい数でな倍率が100倍だというんだぜ」
「倍率100倍?何ですかそれ?」
ハッキリ言って倍率が分からない。
「はぁ…嬢ちゃん。倍率100倍って言うのはな100人受験を受けたとしよう。その時に受かる人数が一人という事だ」
そんな事も知らないのかよと言いたげな目をされたが別にいいじゃないか。
…でも百人中一人か……ハード。いや、ベリーハードだな。
「嬢ちゃんもこの《学園》を受けるのかい?」
「えぇ…まぁ、そうですね」
妾は女ではない。男だ。
そんな妾の心の声も店の人にはとどかない。
「ではそろそろ、教えてくれてありがとうございます」
「おう、頑張って受かるんだぞ!」
励ましの言葉を貰い、妾は《学園》へと向かった。
───────────────
筆記試験の会場は《学園》内の一室で執り行った。
筆記の内容は…こんなもんか。と、言う程簡単だった。
次は実技試験の会場の闘技場という場所へと向かっていのだが…そこへあるトラブルが発生した。
どうやら『満目の絶望』の目的の者達───【麒麟児】達が広場にいるらしいく人の群れが出来ていた。
ハッキリ言って邪魔だ。だがしかし任務の為だ。ちょこっと見たら試験会場へと向かおう。
「……アレか…」
人の群れの中心に2人の少女らがいた。
8人の内の2人……か。
「おい、あれが今代の【麒麟児】らしいぞ!」
「すげぇ!めっちゃ可愛いし美人だぜ!」
周囲から歓喜と興奮の眼差しが【麒麟児】に降り注ぐが中には観察といった力を量っている人達も少なからずいた。
「…背が低くて見えないなぁ…」
如何せん妾も注目をやや浴びてる者としてはなるべくここから離れて実技試験の会場へと向かいたいところだな。
名も知らぬ【麒麟児】達を尻目にこの場を離れようとしたその時───
───2人の内の1人の少女と目があった気がした。
「──ッ?!」
少女は妾と目が合うや否や周囲の群れから失礼、と言いながらその人波が妾と少女の間を割った。
「(国の刺客か?それとも【麒麟児】特有の直感と言うやつか?)──え、ええっと……何か御用でしょうか?」
「いえ、用というわけではないけれど…君男の子だよね?」
【麒麟児】を見た所【麒麟児】には様々な特徴があった。
この少女もその一人だ。
薄紫色のポニーテールに情熱的な紅の瞳、十人中十人が振り向く様な端正な顔立ち。
何処と無くお淑やかな印象を受ける少女は…妾が言うのもなんなんだが背がちっちゃい。140いってるのかな?
……お前は?って言った奴、後で集合な。
閑話休題この少女は今妾の事を男か聞いてきたのか?
「え?うん。そうですけど…何か?」
勿論イエスだ……まぁどちらにもなれるので半分嘘だが。
「やっぱりそうでしたか!……流石は異世界。やっぱり異世界は男の娘がいないと!」
ん?何か変な感じになってきてるけど……どしたのこれ?
妾が突然の事に当惑していると《瞬間転移》を使って此方に飛んできた影がいた。また【麒麟児】か?
「こら!シラ!また勝手に移動して〜…この子に迷惑でしょうが!」
そう言い少女に平手打ちをする少女。
……話の流れを見てみると小柄な少女の方がシラという名前の人物なのか。
ふむふむ、情報ゲットだぜ。
「イテテ…いやぁ、仕方が無いでしょう?逆にレニカは興味無いの?男の娘だよ?」
「…興味はあるけど……取り敢えず人様に迷惑をかけちゃダメ!」
「はーい」
その後ポニーテールの方の少女──シラとロングヘアの方の少女──レニカと、少し会話をした後、実技試験の会場に行く為にこの場を離れた。
─────────────
「只今より《神州第一魔法・魔術学園》の実技試験を行う。ルールは簡単だ。この修練場で百人ずつ広場に呼び出しをする。その広場で戦闘をしてもらう……しかしお前達受験生だけではなく試験官の教員もこの戦闘に加わる。合格判定はその教員が判断するぞ……ではこの後受験番号を伝える。最初に1番から100番は広場に来い」
「なるほどなるほど…要するに妾の見解だと教員を倒したら合格確定だな…っと妾は63番だから最初か」
指定された範囲内に妾は入っていたので広場入口に向かいそこに非殺傷武器があった。実技試験ではこの武器を使用しなければいけないのでこの中にある木刀を手に取り、広場に入った。
「うわぁ……人がいっぱいいるなぁ…」
『アナタは対人恐怖症でありますこと?』
『うるさいなぁ……てかちゃっかり意思疎通出来てるじゃん』
『だから言ったはずですよ?アナタの覚悟次第って』
『要するに暇だったんだな』
『あ?』
おー怖い怖い。あ、因みに[暁月夜]は妾の【亜空間】に閉まってある。
『さてと…そろそろかな?』
『つまらない勝負にワタシは興味が無いから堕ちるわ』
そう言って[暁月夜]と妾は意思疎通を止め、試験に臨んだ。
幸いにも【麒麟児】らしき者は一人もいなかった。幸いか?
「そろそろ実技試験を開始する。尚、試験官はこの私──千代田隆平が相手をする」
自己紹介の後おぉ…と、会場が少々ザワついた。ん?何だ?有名な人なのか?
広場にいる人を見回すと「【疾風】が相手とか…キツ…」等の落ち込んだ感情が見て取れる。
確かに強い…けどなぁ〜師匠を見た後だとどうにも少し…いや、結構霞むなぁ……。
まあいいや。だって完膚なきまでに倒せば合格確定だよね?
「では開始する……初め!」
妾達は等間隔に広場へと立たされたので他の受験生からは一定の距離がある。しかし、だ。
「───すぐ終わらせれば問題無い、よね?」
「───ッ?!!!!」
妾は一息で試験官である千代田先生の間合いに入り込んだ。そして一閃。
「──しっ!」
「くっ…!!」
横に振り払った木刀は千代田先生に当たる刹那ギリギリという感じて防がれた。
「おーこれを防ぎましたか……【疾風】の二つ名は伊達じゃないですね」
「(何なんだこの子は?!刀を振ってるのに全く迫力が感じなかっただと?!)───くっ…そ!!」
防がれた木刀を受け流されたので、妾は即座に体勢を戻した。
「んー見た所何個か強化魔法、又は魔術を使ったんですね」
「あぁ…確かに使ったが…君、名前はなんと言う?」
「受験番号63番、刀使いの來那沙耶です」
「因みに流派は何だ?」
えー流派?言っていいのかな?……まぁいいや。どうせ今から倒すし。
「神明夢想流ですけど何かありますか?」
「神明、夢想流…ッ?!!!」
ん?今気付いたの?でももうお終い。
「(またあの振り方か?!)舐めるな!!」
「───ふふ」
妾は木刀を先程とは違い縦に振り払った。
「グハァァ!!?(な、何故だ?あの子は今確かに横に木刀を振ったはずだ!?)」
「──抜刀流派生型:錯覚刀身。本物だけが全てでは無いですよ?千代田先生」
「…そうか。私の負けか」
傍から見れば唯の受験生に負けてしまったと言う恥があるかもしれないが…妾は唯の受験生では無い。
だって修行に及んだ時間が天と地の程に違うのだから。
試験官を妾が倒したことにより結局妾は誰からも勝負も挑まれず木刀を振るうことはなかった。
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