弎話 オワリノハジマリ
久々に投稿だー。
大目に見て下さい。
「………これでやっと勝てたってとこですかね」
妾の前には武師匠がとある刀を抜刀していた。
「…ほう。よくぞ妾の刀───[神剣天叢雲剣]を抜かせてみせたの〜」
見ているだけでも…いや、直視すら出来ない程のとてつもない迫力が妾を襲っている。
「5000年やって漸く一勝…って、どんだけ強いんですか?武師匠」
「む?何を言う沙弥よ。汝も禁忌神明夢想流しか使ってないじゃろ」
「まぁ……そうですけど…」
実を言うと妾にはもう二つ切札があるのだが生憎その内の一つはこの【亜空間】では使えないし、もう一つは使えるのだが今の勝負には必要が無い。
「……という訳で武師匠。勝負には勝ちましたので本当にこの前の話、飲んでくれますね?」
「うむ。致し方がないな。例の約束通り汝の話を飲もう」
何故毎日手合わせをしているのかは理由がある。それが…………
「では武師匠、下さい。妾の刀を」
「ほれ、彼処に置いてあるから自由に使え」
そう言った武師匠は奥の方を見るように促した。それにつられて妾も奥の方を見るとそこには一振の刀が置いてあった。
「わぁーい、ありがとうございます!武師匠!」
妾は刀の方へ駆け寄るとその刀を手にした。
「そう言えば武師匠。この刀の銘は?」
「───[忌刀・暁月夜]なのじゃ」
忌刀。忌まわしき刀とかなのかな?
「武師匠、忌刀とはどういった種類なのですか?」
「……忌刀とは即ち、汝の禁忌と似たように本来からは有り得ない、信じられない物事の有無から創られた不出来、不完成の刀なのじゃ」
「つまり失敗作の刀ってこと?」
「いや、この刀は少し特殊でじゃの〜歴代の使い手が揃ってこんな事を言うのじゃ『この刀には意思疎通が出来る』と、言われておるのじゃ。ま、妾の神剣も意思疎通が出来るじゃがの」
なるほど、最後らへんはどうでもよかったが……という事は今意思疎通が出来るのか?
「おーい[暁月夜]ー。起きてたら返事をしろーい」
「くっくっくっ……沙弥よ。本来意思疎通というのは頭の中でするものなのじゃ。だから声に出して意思疎通を図らなくてもよいぞ」
「え?」
師匠それ先に言ってよ!?うーわっ!恥ずかし!
……まぁそうだったのが分かったので今度は頭の中で会話をしてみる。
『おい。[暁月夜]、今日から汝の相棒となった十代目神明夢想流の使い手、來那沙弥だ。宜しく頼む』
『…………………………』
……はい!思いっきりシカトされました。わかってたよそんくらい。
「武師匠。まだ意思疎通が出来ないっぽいです」
「え?まだ試みておったのか?最初は殆ど無視されるのじゃ」
「それを先に言え」
久々に武師匠に少しムカついた瞬間だった。
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「あ、そう言えば武師匠。今後の事についてどうすればいいんですか?」
「む?何を言っておるのじゃ?汝は世界を変えたいのじゃろ?……なら、常識を学ぶのじゃ」
なるほど、常識を…ん?常識?常識ってナンダ?
「はぁ……やはり汝は常識を知らなかったか……そうだろうと思って汝にはこれを作っておいた。ほれ、これをやるのじゃ」
そう言って武師匠は懐から何かのカードらしき物を取り出すと妾に投げた。
「おっと…って、これは……身分証?」
「そうじゃ。これを使って学園へ行け。そしてそこで常識を学んで来るのじゃ」
「ふむふむ…分かりました。武師匠、ガクエンって何ですか?」
「え?そこから?」
その後、妾は武師匠から色々と説明を受け学園へ行くことを決意した。
「ではよいか沙弥よ。【亜空間】から出るという事は時間という概念が存在するのじゃよ。それについてはさっきの説明通りだからじゃぞ」
「はぁい」
取り敢えず現時点での目標としては学園の試験を首席で合格する。
あ、因みに学園の名称は《神州第一魔法・魔術学園》と言うらしいです。
首席で合格するのもあまり意味も無いです。
「───そうじゃ、沙弥よ。もうそろそろこの神州帝国に【麒麟児召喚】が行われるのじゃ。だから汝が今目標としている首席合格は本気で試験に挑むのじゃぞ」
「【麒麟児召喚】…………ってなんですか武師匠?」
「………………俗に言う異界から麒麟児──勇者を召喚し、【亜人】の完全殲滅を目的として行われるものじゃ」
なるほど。じゃあまとめると試験は全力で挑め…と。
「分かりました武師匠───妾、新井武の唯一の弟子にして十代目神明夢想流継承者、この來那沙弥全力で試験に挑もうと思います!」
「フッ…そうか。では頑張って来るのじゃぞ」
そう言うと【亜空間】の空間が徐々に亀裂ができ、瞬間に光が発光し妾の意識が闇に落ちた。
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意識が覚醒すると妾はいつの日にか見た森の中にいた。
「取り敢えず試験まで一ヶ月はあるから……どのくらい強くなっているか確かめるとするか」
そう言うと妾は近くに落ちていた木の枝をとると抜刀術の型を構えた。
そして妾は一直線上に抜刀をした。
するとズズッと妾の前、一直線に新しい道が出来た。
あ、違った────大木が次々と倒れていき、雑草一つ消え失せた。
……ありゃ?どうしましょ…。
拝啓武師匠。
どうやら妾も人間辞めたようです。
……ってそんな事じゃなくて。
「な、なるほど。やはり5000年修行しただけであって強くはなれているな」
閑話休題、どうやら妾は強くなれていた。
続いて妾は例の切札であるあることをする。
「────お、やっぱり出来る出来る。【魔素・魔力操作】:変換:固体化」
すると妾の手の上にピンポン玉程の球が九個出現した。
その玉を10メートル程離れた木々に向かって突っ込ますように指示させると物凄い速さで木々に突っ込んでいった。
『ドカッ!バキバキ!メッキャ!』
「うぇ…えげっねぇ……」
結論から言うと酷い有り様だった。
眼前にあったのは…あ、違ったわ。
眼前には何も無かった。
立派そうな数々の木々は無惨にも見るに堪えない形へと変形してしまっており、地面にも大きな穴が空いていた。
「これは…うん。アレですね……」
妾、化け物なのかな?
そう認識せざるを得ない状況となってしまった。
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