壱話 刃と刀
ちょっと遅くなりました。
ではどうぞ。
どうも。実は左利きの非人。來那沙弥です。
僕は今、武師匠に神明夢想流―――と、いうよりも刀剣について教えてもらっている。
「そもそも武師匠、神明夢想流ってどんな流派なのですか?」
「む?汝には言っていなかったか。………神明夢想流とは居合術、又は抜刀術の原初の流派だの。曰く、それを極めし者は神ですら殺せるとか無いとか……じゃの」
いや、はっきりしないんかい。
「じゃあ試しにあの木に向かってやってみるかの」
そういった武師匠は木の枝を拾い、腰に携えた。ちょっと待て。
「武師匠………僕の見間違いだったらいいんですけど師匠が今腰に構えたのって木の枝ですよね?」
「?何を当たり前のことを言っておるのじゃ?」
え?そんな細い木の枝でどうやってあんなに太い樹木を斬るんだろ?
「はぁ、沙弥よ。達人と言われるものはじゃの、たかがこんな枝切れ一本でもこのような樹木をいとも簡単に断ち切れるのじゃ……よっと」
そう言いながら武師匠は木の枝を横一文字に振り払うとたちまち、ズズズッと大きな音をたてながら樹木が倒れていった。
「え、えげつねぇ………」
なんじゃありゃ。てか武師匠の剣筋全く見えなかった。
「と、まぁこんな感じじゃの」
「今の状態じゃあ無理に決まってるよ!」
僕は思った。
武師匠みたいになるには莫大な時間がかかるだろうと思った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
あれから一週間、武師匠には取り敢えず刀の素振りでもしておくのじゃと言われ、どこから取り出したのかわからない木刀を渡され、森で素振りをした。
「フッ!イャ!タァ!―――」
それと素振りをする前にこんなことを言われた。
『沙弥よ。刀とは剣とは違い一撃が軽く、脆い。だがな沙弥、刀とは剣とは違い極めれば神殺しまでをも成し遂げられることが出来るのじゃ。………そしてじゃな、この言葉を忘れるんじゃないぞ。『刃は万物万象一切のモノを断ち切れる可能性が秘められておる。……刃は生物全てに存在する。心の刃、感情の刃など様々あるのだ。もし、その刃を解放せし者は真の刀神へと至れるのだ………』もう一度言うぞ。絶対に忘れるんじゃないぞ。……絶対じゃ』
あの時の武師匠は何故かはわからないけど純粋に可哀想だと思った。
まるで何か大切なモノを失った直後のような顔だった。
「おぉい沙弥よ。素振りは順調に進んでおるかの?」
ようやく折り返し地点の25セット(1セットにつき素振り100回)の終わりにかかったところに武師匠がやって来た。
「はい。これも強くなって世界を変えるために頑張ってやっています」
「そうか、そうか。ならキリのいいところで飯にするのじゃ」
「あ、はい。わかりました」
僕はなるべく急ぎながらも素振りをきちんと丁寧にこなし、武師匠のもとへ向かった。
「そう言えば武師匠。今更なんですが神明夢想流とはどのような技があるのですか?」
僕は質問しながら武師匠が作ったであろうホットドッグを頬張った。うん、やっぱり普通に美味しい。
「ん?技じゃと?技といっても精々6つ位しかこの神明夢想流にはないぞ?」
「6つ?たった6つと言っては何なんですが見せていただけますか?」
「ん?あぁ、そういうことか。そうだな。最近妾も沙弥を素振りに任せっぱなしだったから体をそこまで動かしてないしの」
「有難うございます」
これでようやく居合術というものが見れる――――ッ!
―――――――と、思っていた時代も僕にありました。
昼食後、僕は武師匠が神明夢想流の刀技を見せてくれるということでしかとこの目に焼き付けようとしたのだが………。
「武師匠。ここ、何処ですか?」
「何処って妾が創り出した〈亜空間〉じゃよ。自らが創り出した〈亜空間〉へと相手を引きずり込むというものじゃ。………まぁ安心するのじゃ。これからはここで修行するのじゃぞ」
いや、何処にも安心できるような点なんて無いんだけど………そもそも〈亜空間〉って何?
「これが神明夢想流の刀技、神明夢想流:六の夢幻じゃよ」
「神明、夢想流………」
なるほど、確かに夢みたいに幻想的だな。(語彙力皆無……)
「え?でも武師匠、ここで修行するにしてもお腹減ったらどうするんだ?」
「うむ。そんな事は心配いらない。この妾が創り出した〈亜空間〉はのぉ、創り出す時に設定というか何というか………そう、理を操れるのじゃよ。ちなみにじゃが今妾達はここにいると空腹にならず年も取らずまるで朝昼晩毎日ご飯を食っているが身体に何ら影響が無いといった世界のルールを創ったのじゃよ」
うん。なんとなくだけどえげつないな神明夢想流!?
まぁ確かにお腹が空いた感覚は感じないなぁ‥‥。
「さて、一応神明夢想流は全部見せたんじゃ。一の■■からやってみるかの。ほれ構え構え」
「な?!そんなこと言っても武師匠!いきなり連撃技っぽかった一の■■からやるんですか?!せめて四の■■からの方がいいと思うんですが………」
「む?一応言っておくがの沙弥、四の■■は一番高難易度な刀技じゃぞ」
「え?あんなに簡単そうな四の■■がですか?‥‥‥嘘でしょ‥‥」
だって四の■■なんか地味な僕にぴったりそうな技だったんだもん?!悪い?
「沙弥よ。それともう一つ、この眼が発現したら教えてくれるかの?」
そう言いながら武師匠の眼が金色に変色した。ん?何それ?
「これはな五眼の一つである仏眼じゃよ」
へぇ〜、どんな事ができるんだろー‥‥‥って
「考えが読まれている?」
「いや、違うぞ」
違うんかい。
「うむ。汝は顔に出やすいからの。‥‥‥まぁできる事と言えば『真偽確認』『未来視認』『五感絶強化』それと『法則切断』かのぉ?」
「は?何その頭オカシイコンボ能力は?」
完ッ全に発現したらヤバイ目の色っすよね?武師匠?!
「まぁ安心せい。五眼はそれぞれ肉眼、天眼、慧眼、法眼、仏眼と5段階あってのぉ、肉眼は人間全員にあるがそれ以外は努力しないと発現しないのじゃよ。‥‥例外はいるがのぉ」
そう言って武師匠は自らの右目を指差した。
「さての沙弥。改めて一の■■を修行するぞ」
「いや、だから武師匠!?僕の話聞いていましたかぁ?!!!!」
この日から來那沙弥は〈亜空間〉時間で5000年の特訓をしたのであった。
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