幽霊男と怠惰な魔女
××××注意××××
読む人のことを考慮されていない、(多分)読みにくい文章になっております。
この筆者は、『()』を多用します。
たまに某イラストコミュニケーションサイトや某占いサイトに出没します。(関係無いよな?)
多分短編集です。
(分類が良くわかりませんでした。)
気まぐれにしか更新しないと思われます。
何処かで見た事があるような内容や設定があるかもしれませんが、オリジナルです。
これを元にしたような作品を作って良いのは、共に同じ世界を共有したあの子のみです。
キャラクターの勝手な使用は禁止です。
2次作品は世界観しか貸し出せません。
世界設定を捻じ曲げる、過去を想像して捏造する、
未来を妄想して作り上げる事は絶対に禁止です。
あるところに、幽霊のように存在感が薄く、しかしながらとても背の高い男がおりました。青ざめた肌を持った幽霊のような男は、錫色の髪を左右非対称に、斜めに真っ直ぐ切り揃えており、前髪は後ろ髪とは逆の方向の斜めに真っ直ぐ切られていました。 そのせいで、男は片方の目が髪の毛で隠されていて、他者は片目しか見る事が出来ませんでした。
青と黄の2色の奇抜な色をした目は、髪と同じ色の、男にしては長めの睫毛に縁取られていましたが、光を映さず、どんよりと生気無く淀んでいました。
服装は喪服のように真っ黒で、手も同じく真っ黒な手袋で覆っていました。
すぅ、と静かに動き、まるで影のような男でした。
幽霊男はある日、自分と同じように真っ黒なモノに出会いました。
それは背の低い少女でした。
雪のように白い肌でしたが、それ以外は真っ黒で、ローブのような、ドレスのようなものを纏っておりました。
女性にしては短めな黒い髪の毛は、ぴょんぴょんと(寝癖なのか何なのかは分かりませんでしたが)そこらじゅう跳ねていて艶も無く、あまり手入れがされていないように見えました。
髪と同じ色の少し長めの睫毛は軽くカールしていました(が、きっと自然とそうなる体質なのでしょう。メイクをするようには見えませんでしたから)。
ぼんやりと、然しながら興味深げに周囲を見回すたれ目の虹彩も黒く、まるで黒檀のような少女でした。
幽霊男は自分と似た少女に思わず声を掛けます。
「如何なさいましたか?」
怖がらせないように、にこり、と笑いかけてみましたが、ぽやっとした眠たげな表情が少し強張ったのが見えたので、きっと、張り付いたような不気味な笑みになってしまったのだろうと、幽霊男は思いました。
「困っていらっしゃるように見えましたので、思わず声を掛けてしまいました。」
若い少女が突然見知らぬ男に声を掛けられれば怖いだろう、と、考えた幽霊男は声を掛けた理由を(少し違いますが)話します。すると少し警戒心を解いたのか、少女は少し、お、と言いたげな顔をしてから、
「……道に迷ったんです」
そう、地図を幽霊男に見せました。
少女が見せてくれた地図は、確かに周辺の地図でした。しかし。
「この地図、……少しばかり、古いですねぇ。」
少しだけ、年代がずれていました。
ずれていたのはたったの5年でしたが、そうは言っても、5年も古ければそれは十分に古い地図でした(『少しばかり』ではないのです)。地形は変わっていなくとも、人工物である建物は月単位で、或いは数日で変形してしまうものだからです。
例え最新の地図だったとしても、多少のズレが生じることは、少なくないのです。
「……そうなのですか?」
はて、と首を傾げる少女を(何故だか)少しばかり微笑ましく思いまして、幽霊男は思わず顔が綻びました。
「えぇ。それと、地図の向きが微妙に違います。」
そう指摘するや否や、少女の持つ地図をくるり、と逆さまにし、再び少女に持たせました。
「……『微妙に』じゃあないじゃないですか」
少し不貞腐れた声で、少女が呟きます。
「それは兎も角、」
背の低い少女に合わせるように幽霊男は屈み、問います。
「何処へ行きたいのでしょうか。」
うーん、と少し目を逸らして考えた少女は、
「ここです」
と、幽霊男の枯れ枝のような指とは真逆の、若々しく柔らかそうな指で、とある一点を指しました。
「成る程、『学業機関』ですね。」
「学校です」
幽霊男の少し難し気な言い回しを少女は簡単に言い直しつつ、それであると、小さく頷き同意を示しました。
「結構近い場所なのですがねぇ……」
そう小さく幽霊男は呟きましたが、何故だか少しばかり、この不思議な少女と離れ難くなりましたので
「近くまで案内しましょう。」
そう、案内役を請け負いました。
「……如何なさいましたか。」
幽霊男は、少女と初めて会った時と同じ声掛けをしました。何故なら、少女は幽霊男を見つめて首を傾げていたからです。
「何でもないです」
少女はそう言いましたが、幽霊男は、この幽霊男自身の存在に違和感を持ったのだろう、そう思いました。
実は、幽霊男はその薄過ぎる存在感のせいか、よく周囲の人達から無視されたり、存在を忘れ去られていたりする事が多々ありました。
幽霊男自身はその事をとっくの昔から気付いており、いずれこの少女もそうなってしまうのだろうと知っていましたので、目的を確認するように
「『学校』へ、行くのでしたよね。」
そう言いました。
「……そうですね?」
何故だか語尾が疑問形でしたが、少しだけ安心しました。まだ、今のところは少女には幽霊男の存在を忘れられていない事が確認出来たからでした。
「着きましたよ。」
あぁ、もう目的地に到達してしまった、と幽霊男は少しばかり残念に思ってました。これで、この不思議な黒い少女ともお別れです。もう二度と会う事も、話す事も無いでしょう。
然し幽霊男はその事をおくびにも出さずに。『さぁ、もうここまで来ればどんな方向音痴も迷わないだろう』と言わんばかりに、目的地を掌で指し示しました。
「……そうですね」
黒檀のような少女は、まん丸な黒い目をぱちくりと瞬かせてその方向を見ました。そこは、人工物まみれだった先程の街や道中とは打って変わり、植物や天然の石が沢山ある場所でした。目的地の、学校の正門前でした。
目的地が目前にあれば、流石に余程のことが無ければ迷わないでしょう。
「では、私はこれにて。」
にこり、と笑みを貼り付けて会釈をする幽霊男に、
「わざわざここまでありがとうございます」
黒い少女はぺこっと頭を下げて感謝を述べます。きっと心の中では『胡散臭いやつだと思ってましたが良い人なんですね』と思っているのでしょうが。
「何かお礼がしたいのですが、あいにく今は手持ちがないです」
少しむぅ、とした顔で少女が拗ねたように言いました。
「お礼なんていいですよ。」
にこり、と笑顔のまま幽霊男は返答しましたが、そのあととても小さな声で、何かを呟いたような気がしました。
「また会えたら良いですね。お礼もその時に出来ればします」
と、少女は別れのセリフにしてはやや他人事な言葉を言い、男を見上げようと顔を向けた時には。
「……あれ?」
幽霊男の姿は、ぱったりと無くなっていて、本当にそこにいたのかすら分からなくなっていたのでした。