始まり
「橘さん、この原稿明日の朝刊までに確認してて欲しいんだけど手、空いてる?」
「大丈夫ですよ、丁度ひと段落ついたところなので確認しておきますね!」
この会社に務めて3年目、現在26歳の私は特に目標もなくやりたいことも無く、たまたま求人で見つけたこの新聞社に入社し特に実績を残すことなくそこらに居る普通の会社員として務めていた。
本来なら新聞記者である私は外回りをし、記事になるネタを見つけてくるのだが何せこのご時世、そしてこのやる気のない私には社内の雑用係が1番居心地の良い場所となっていた。
もちろん、言われた事はちゃんとやるし先輩記者の調べ物や手伝いなどは確りやっている。
そんな何の変哲も無い繰り返された日常に1件のネタが舞い込んできた。
(小学5年生、7人の突然死)
事件現場は7人の内の1人の男の子の自宅で、当時親は買い物の為留守にしており部屋の中も荒らされた形跡もない、買い物から帰ってきた母親が第一目撃者で直ぐに子供達は救急車で搬送されたが即死だった。
死亡推定時刻は丁度母親が買い物に出かけている間で17時30分〜40分とのことで、死因は7人とも心臓麻痺。
その死体の悲惨なことに、まるで人間ではないような表情をしていたという。
現在20時を少し過ぎた頃、事情聴取を受けていた母親はショックの為か一言も話さず、また残り6人の家族は病院内で泣き崩れている。
さて、明日の見出しはこの記事だな。
社内で誰も言葉には出さなかったがきっと皆同じ事を考えていたに違いない。