表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/388

01/【Ⅷ】

 ・ ・ ・ ・ ・ ・


 順を追って、考えよう。


 まずは――『世界』。

 俺や『邪神』――正確には『従姉』の生まれ育った『世界』の隣に、この世界がある。

 厳密に『隣』かは知らないが、『転生』の行ったり来たりがある以上、遠くは無いだろう。

 『賢者』とかの『ログ』からいっても、恐らくはそうだ――ログ? あのウサギさんとかのデータな。 


 んで、この世界は、『何』を『最終目的』としているのか今一不明だが、『誰か』の――

 恐らくは、『俺たち』とはまた異なる外世界からの――『開拓』を受けていて、その為のシステムがある。


 此処からはアウルの『解説』と、『賢者』達の『ログ』のざっと見からの考察。

 基本的な『お膳立て』だけを済ませて、後は各自に『開墾』も『侵略』も任せている。

 これは、アウルの様なシステムが居ながら、『戦争』とかがそのままだからだ。

 純粋に『開拓』するためだけなら、『競争』や『意見の相違』は兎も角、荒廃に繋がる様なのは悪手の筈。

 だとすると――『陣取りゲーム』か何かの舞台にされていたのかもしれない。

 ……まあ、『世界』一つ舞台にして、ってどういうノリだよ、と思わなくは無いが――

 俺らの一般的な物好きも、『蟻』を飼って巣を観察したりもするし……あれも一つの『世界観察』よな。


 じゃあ、誰が『プレイヤー』だったか――

 そこは想像をするしかないが、想像しても蜜も毒も無いので、一旦保留。

 多分、想像を絶する『能力』を有する、異世界の誰か――だろ。

 『プレイヤー』が何として関わったか、それは恐らくは、古い時代に居たという『神々』なんだろう――


 『神々』、これは『賢者』たちのログからだ。

 それこそ、記録と呼べる記録の殆ど無いレベルの昔らしいので、本当に大雑把な断片だが。

 んで、所謂、『エルフ』連中が信奉している『神』は、相当後になって『光臨』したらしい。

 ……『光臨』て――と思ったが、そう表記されてるんだから仕方が無い。

 ――どっちも『神』だとややこしいので、前者は『開拓者』とでも呼ぶか。


 んで、何らかの理由により、その『開拓者』達は『撤退』――若しくは、『衰退』。

 この辺りは『賢者』側のログも、『邪神』の記憶も、アウルの小噺も当てにならない。

 ……『後追いでアップデートされた影響なのか、分りません』とか、ホントもう……


 ――まあ、そうやって、『主不在』に成った世界――

 其処に、そのまま残されていた『座』を埋める様に、今の『神』と『使徒』――

 恐らくは、『世界樹』の絡みの『誰か』と、その『部下』がやってきた。

 まあ、ここは、歴史の時間軸からの推測が成り立つ。

 ――まあ、『神』が『開拓者』駆逐して征服した、とも思えるけどな。


 で、ちょっと後(何百年、何千年単位だろうけど)に、『飢餓』やら『疫病』やらが起き――

 『邪神』と呼ばれているこいつが原住の人類に『果実』を与えて、『魔術師』が生まれた――

 ――ん? あれ? ちょっとまて?


「……『軸の木』とか呼ばれてる樹木を――

 植える植えないで戦争してたんだよな、あの時の『勇者』と『魔王』――

 つか、『普遍人オーディナ』と『魔詠人マナス』は――」


 ……何か……何かが変だ。

 ……何だ? 何かが引っ掛かる。


「……あ――」


 ――『精髄エセル』は、万物に偏在している――ただし、『果実』程は無い。

 ……『勇者』と『魔王』の戦いで流れる血は、分散しているものが収束して行っている様なもの……

 ――うわー……ヤな事に思い至ってしまった……


「――どうした?」

「――お前が『邪神』で居た頃って――『魔術』使えた?」

「使えたが?」

「地上でも?」

「――地上? ――ああ、そんな呼ばれ方してるんだったか、『尖塔』の外は。使えたぞ?」


 おい、また聞いた事も記憶にも無い用語出てきたぞ?


「――『尖塔』って?」

「ああ、簡単に言えば神の居住地だよ。私と『戦神』の戦いでぶっ飛んだが」

「……もしかして、地上に刺さった?」

「ああ」


 あ・れ・だ。

 あの『埋まってた奴』だ。

 ええー……情報の伝達ギャップが酷すぎるぞ……

 だとして――まあ、今の『神』辺りが情報統制でもしたのか。

 でも、そうなると――


「おい、メニュー――」

「~♪~♪~」


 ……暢気にパンケーキ焼いてやがる。


「……そういや、あんたの唯一作れるもんだったな」

「失礼な、ラーメンも茹でてやっただろう」

「『袋麺』茹でるのを料理って言い張る根性は認める――じゃねえ。おい、アウル」

「あいはい」

「お前が所管してるシステムに『魔術』ってあるか?」

「モッド入ってるんで、あったと思いますよ?」


 モ・ッ・ド。MODだよな、多分。機能拡張モジュールだよな、多分。


「お前って――いや、いいや。

 て事は――『原生の人類』って、元々は『魔術』使えたんじゃないのか?」

「多分使えましたよ、システム的には。全員が全員では無いと思いますけど」


 おい、そんなあっさりと――

 そうなると、なんで途中からは使えなくなってって話になるが――


「……多分、そうだよなぁ……」


 第二陣の介入者である、『神・使徒』が『何か』をした――

 ……『力』の独占の為、か? いやでも、『開拓者』連の衰退原因とも考えられなくは無いか……

 ……ああ、いいや……『理由』に関して考察しても、毒にも蜜にもならん。

 問題、としては――『不自然に独占してる連中』がいることだし……

 となると――やっぱりそいつ等を排除しなきゃならんのかなぁ……

 ……また、厄介な問題を投げてくれたもんだよ、『賢者』らも……

 ……まあ、偶発的ながら、首突っ込んだの、俺ではあるんだけど。


「――あれ、そういえば、お前はなんで俺を呼んだんだ?」


 ふ、と顔を上げると、相手の一つだけの目がこちらを見つめる。


「――聞いてみたくてな。なんでお前は、『世界』を救おうとしてるんだ?」


 顔面に扉アタックされたり、考え事したりで、初めてまじまじと見た気がする。

 ――なんでこいつ、『眼帯』してんだっけ?

 ……ああ、そっか。『事故』にあったんだっけ――『事故』の内容、思い出せないけど。

 ゆっくりと見る。ああ、片足もそのせいで、『義足』なんだっけか。

 ――だめだ。『記録』としてはつらつら出てくるが、『記憶』っぽくない。

 ……つか――何だろう。

 何か――『清書された書き物』を見てる様な……


「『記憶』が無い以上、人間に寄った『魂』の構成してても、性格は植物に近しい筈だろうに。

 ――なんで『世界を救う』気に成っているんだ? 250年草が」

「……俺、『草』だったって、言ったけ?」

「まあ、其処らは後から説明する。で? 何故なんだ?

 『前のお前』を鑑みるに、そういう『御綺麗な正義』に目覚めた、とも思えんのだが?」


 ……改めて聞かれると――うーん……

 と悩んで、俺はふっと思い当たった。


「――石畳を、ああでもないこうでもない言い合いながら歩いていく行商のコンビとかさ」

「――ふむ」

「辻に簡略な酒場があった頃の吟遊詩人の語りとか――空のずっと向こうを飛んでく物とかさ――」

「――ふんふん」

「……憧れたり、夢見たりしたものが、多過ぎるんだよ」


 = = = = = =


 石畳に咲いていた頃。

 ずっと思っていた。

 この道の見えなくなっている、あの丘の向こうには何があるのか。

 動くもままならない体が動くなら、何が見えるのか。

 自由に冒険が叶うのなら、何処までいけるのか――


 ――君は、何処に、いる?


 = = = = = =


 その全てを希求する心が、今叫んでいる。


「俺が、まだ見てないのに、それを勝手に一色に塗り込められるのは、不愉快なんだ」


 ……そうだ――

 『神』『使徒』、そして『醒神』。

 悪いが、お前らの『目的』なんて、知らん。

 その果てで何千何万何億と『救え』ようと。

 俺は――お前らの『正しさ』は、御免被る。


「世界は、騒々しくても賑やかな方が俺好みなんだよ、あんな『静寂』より」


 あんな景色の向こう側で――何を求め様と言うのか。


「――ろくでもない目にあってもか?」

「――ろくでもない死に方しててもさ」


 ……『経緯』は知らないが、頭パチーンってされた程度で、俺を曲げられると思うなよ――『神』。


「――我儘なんですね、結局は」

「そうだな。従弟だったこいつにどのぐらい振り回された事か」


 ちょ、なんでよ。『記憶』曖昧だから否定は出来ないけど、ひどくねぇかwww


「――というか、そっちはそっちで何で『神』と戦ったんだよ?」

「うん?」

「『邪神』て呼ばれる様になる以前は、一応でも『神々』の一端だったんだろ?」

「ああ、まあ……『アールヴァン』連中の協力者ではあったが……」

「……『アールヴァン』?」

「『深き森に棲まう者』『樹上の方々』『神の枝』――呼び様は様々だが――『エルフ』の事だ」

「……あのカッパが?」


 あんな『切れる中間管理職』みたいなのが、そんな尊称で呼ばれてるの?


「――カッパって……」

「……いや、あの。

 内部に色々ランク在りますし、アレを見て一元で考えたら流石に……」

「おいまて、そういう事はちゃんと言えよ『駄メニュー』」

「失敬な!! 貴方が聞かないのが悪いんでしょうが!!」

「初見の奴出たら教えろよ!?」

「そんな『デ○モン図鑑』的な存在じゃないよ私は!! 『アナライズ』もしないでぶっ飛ばしたくせに!!」

「そもそもそんな機能を聞いてないからな!?」


 いや、おい、『邪神』!! イイ顔してんなよ!!

 俺の延長とか言ってるけど、お前の影響の方が絶対大きいよこれ!!


「……まあ、要するに、な――お前とそいつの様に、馬が合う場合も在れば、合わん場合もあるだろう?」

「え? 馬合って見えるんですか!? これの何処が!?」


 いや、黙ってなさい、アウル。話し進まん。


「『話しててイラ付いたから、席を立とうとしたら、着席を命じられた』。

 『勝手に呼んで勝手に上と思ってんな!!』と切れたら『戦争』に成った。

 ――そんなとこだ――挙げれば限無くあげつらえるが――

 まあ、『徹底的に反りが合わなかった』という事さ――理解頂けたかな?」

「雑っ!! もっと細々と重要な部分――」

「……凄く雑なのに、凄く納得出来てる自分がいる……」

「えええぇえ!?」


 ――つまり、あんな奴も一杯居たんだろうな……不憫な……


「――まあ、言っても、さっき言った通り、『途中参加の途中退場』だ。

 連中の『目的』も『遠大な計画』も知らん訳でな――

 奴らが何を望み、何を目的として、何をしているのか――知っているのは三つ目の、極一部だけだ」

「――と言うと?」

「――『躾』さ」


 ――ずきん


「……そら、また……『躾』、とはね……」

「言葉を変えて『啓蒙』でも『教育』良いが――」


 ――ずきん――ずきん――


「連中からすれば、余程に曲がって見えるのだろう――

 果たして、どちらが曲がっているのか等、私には知る由も無いがね」


 ――ズキン――ズクン――


「――ちょっと、『イーリース』!!

 『魂魄』に自分が混じってるからって、やって良い事と悪い事が!!」

「――すまん、少し抉り過ぎたか――」


 ……やべえ、なんだ? この『痛み』……


「だ、大丈夫ですか?」

「……何が?」

「いや、何がって――」

「……あれ? 俺、何時の間に――」


 ……何時の間に……地面に……?


「……まあ、そうも成るのは、当然か。『魂』に刻み込まれてる部分だからな」


 言いながら、俺を抱き起こす『邪神』。


「……この『痛み』は――」

「――済まん――」

「…………」


 ……おいおい、止めろよ。何て目をしてるんだよ――


「……『ショック療法』も、分るけど、ちょっと、きつ過ぎるぜ」

「――大丈夫か?」

「――『思い出す』には至ってないけど、まあ――死にゃしねえだろ……」


 全身のあちこち痛い感じするけどな――まあ、『感じ』だけだし。


「……だから、アウル、んな噛み付きそうな目をすんな」

「……平気、なんですか?」

「『慣れてる』」


 ……『慣れてる』、ね。こんなのに『慣れてる』って、俺って一体……


 ・ ・ ・ ・ ・ ・


「――私がお前の事を、時系列無視であれこれ知っているのはな」


 転がっているコンクリの柱に俺を座らせ、自分も横に座る『邪神』。

 アウルは、『余計な事をしない事』と言い含めて、何処かに行った。


「――私が『邪神』の『残骸』だからさ」

「……『残骸』?」

「『残骸』と言うべきか、巨大な影響からの『残響』と言うべきかは分らないが――

 ……本来のお前なら、『魂』と『魄』の違い位、『覚えている』筈なんだが――それはまあいい」


 ひた、と、相手の手が額に触れる。


「疾うの昔に『転生』した存在の、『空蝉』の様な物。それが今の私だ。

 しかし、幸か不幸か『神位』と『神威』は細々と残っていてな――

 『自分自身』の部分から、情報を見出す位は容易い事さ」

「……ずりいな、そりゃ……」

「ふふん――思っても無い事を」

「思っても無い?」

「必要なのは『算段』であって、『力』そのものではない癖に」


 ……まあ、その代償は何よ、とかは思っちゃうしな、俺……


「……にしても、『イーリース』って?」

「ん? ああ――耳聡い奴だな」

「些細な情報取り落として命取り、なんて御免だし」

「そんな重要な事じゃないぞ?

 連中のつけたコールサインだが、『本名』はうろ覚えでな。仕方無しに使っている」


 イーリースねえ……


「……何だ?」

「いや――確信が無い」


 大体、アウルも現代寄りの発言してやがるしなあ……

 となれば、『神の枝アールヴァン』だって、拾ってないとは思えないし。

 ……って、何で笑ってんだ、お前。


「すまん、耳聡いどころか『相変わらずだな』、と思ったら、自分の記憶でもないのに、何か笑えて来てな」

「……相変わらずの『フロム脳』で悪かったな」


 逆にこんな思考回路でなきゃ、『草』の初期の暇さを乗り越えられなかったよ。


「プロフィール部はうろ覚えで曖昧なのに、なんでこう、知識部は劣化してないんだか……」

「――思い出せないでも、性質は然程変わらないらしいしな――だが、お前はそれでいいんだろうさ」


 言ってくれやがる。


「……そういうそっちも、然程変わってないんじゃねえの?」

「――そうか? というか、思い出したのか?」

「――いや、何だろうな――『従姉』って言われて、あんまり違和感無く受け容れらてるからな。

 ある程度――パーソナリティが、こういう人だったんだろうな、という感じが」


 ……何かこう、シルエットは思い出してきてるんだが……髪型は違ったかな、たしか……


「やはり、似た奴が揺さぶっただけでは無理か」

「まあ……そっちの思惑は兎も角、完全に断絶してる訳でない、って分っただけ、いいんじゃねえの?」

「……考えてみると、通常の『転生』なら『忘却』が発生するのが当然と思われてる訳だしな。

 その発生した経緯は兎も角、『それでも尚『残留』している』のが、特殊と言えば特殊なんだろうな――」

「『神性』に転生して更に『ヒト』に転生した奴が、こっちに向かって特殊って……」


 『草』に転生してた奴の混ぜっ返す事でもないが。


「『人柱』だ『人身御供』だで『神』に『奉られる』位はそこらに転がってるんだ。

 『神に成っただけ』は何も偉くないさ――

 『神』だろうが『ヒト』だろうが、『何を為したか』が重要だ」


 おう、『神』っぽい事を。『邪神』だけども。


「……んじゃらば俺は、何をするべきなのかね……」

「さあな――だが、根底を間違うな。

 誰が送り込もうと、何が引っ張り込もうと、何をするのかは自分で決めていいんだ。

 どれ程思い道理に行かなくても――『軌道』の儘成らない『星』程不自由な訳じゃない。

 向かう自由も、向かわない自由もある――それが本来の、『意志在る者』の姿だしな」


 …………


「……流れを遡るのも、抗うのも、自由だよなあ……」

「その通りだが――やはり変わらんのだな、お前は」


 苦笑しないで下さいよ……前の俺も多分、そんな『因果な奴』だったんだろうけど……


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ