『04』/02
「雪山だぁぁぁぁぁ!!」
「ちょ、大きい声出さないで、雪崩起きるよ!?」
「うっひょー!! すっげ、初めて見た雪が雪山かよ!! うっひょー!!」
「はしゃぎ方が何時にもましておかし――ぶっ!?」
「雪合戦やろーぜー!! ザミー的なー!!」
「ふざけろこの銃バカ!! お前の血で赤くそめたるぁ!!」
一方の俺、ジンは――
「ひゃー、すげー、これ、全部、『雪』か!?」
「そうだよ、カーラ」
「食って良いのか!?」
「止めとけ、カキ氷と雪をイコールにすんな」
どう考えても、人選がおかしい連中と、マハブラン領に居ります。
……どうして、こうなった……orz
……俺たちが色々すっ飛ばして、マハブランの雪山まで来ている理由は、実に簡単だ。
『冒険者』としての依頼である――俺、まだ『正規』じゃないんですけどねえ、審査滞ってて……
= = = = = =
ちょっと前――俺は諸般の事情により、大陸をうろうろしていた。
いや、別に逃げ出したんじゃないよ? 色々、買い付けするブツを探してたんだよ。
ほら、色々便宜を図って貰ったら、要望に応えるのもまたお約束でしょう?(死んだ目)
――そんな中、俺はとある町で、その人に出会った。
まあ、出会ったというか、追い着かれた、になるか……
= = = = = =
「逆に都合が良い」
「……あのですね、ギルドの中枢幹部が、率先して規律無視するのはどうなんですか?」
「――正直、言っている場合でも無くなって来てるんでな」
俺の隣に座るこの方、名をレーン=リーアム。
――覚えてます? ちょいちょい出てた、ギルドの苦労人の方ですよ?
「そんなにゴタゴタしてるんですか?」
「面倒事が起きるのはいつもの事なんだが、問題は頻度よりも内容だ。
ギルドは基本的に、どの勢力に対しても公平、言うなれば付かず離れずでやっているのが基本――
――なんだが、だ。最近、冒険者の囲い込みを行っている連中が居る」
「ええと、有能な冒険者を私的に契約して――でしたっけ?」
「ああ。別段、規律違反って訳では無いんだが、やっている人間がな」
「……迂遠な言い方をしなけりゃいけない相手、ですか」
「直接では無いだろうが、関わっているだろう事は予測出来る。
やっている場所も問題がある――挙句に、上っ面は問題が無い、というな。
監査だので動く程の証も無い――だが、少し――保留にするには、きな臭過ぎる」
――それ、なんで俺に持ってくるかな……
「あのですね、リーアムさん?」
「君が現時点、正規のギルド所属で無い事は百も承知だ。
本来なら、イゾウに頼んでいる――だが、イゾウが君を推挙した」
……何でよ? あのモジャ公、なぜ俺に。
「『自分では辿れるのが関の山だが、お前なら俯瞰して見下ろせる』と言っていた」
「……雪山の下は火薬庫なんすか、ここ……」
「分からんよ――『火薬庫』なのか『毒薬の精錬所』なのか――
ここもバーフェルブールだが、『遮りの山々』に阻まれて、人の往来はあまり無い――
勿論、『岩塩』を筆頭とした『鉱山仕事』回りで、人数自体は相応に入っては居る。
だが『塩坑』の中と外では少し文化が異なる――必然、情報の往来も少なくてな」
――マジで勘弁してくれよ、あの人……俺は俺で色々やることあるのに……
具体的には、新武器の素材探しとかさぁ……
「なに。やって貰いたい事自体は、単純なんだ。
『六星連』からこちらに流れていた、『素材』の所在を知りたい」
「――例のアレですか?」
「ああ――探りを入れていたんだが、どうも奇妙でな」
「奇妙、っていうと?」
「『工作用のゴーレム』に使われている、と明確に判明している」
――何ノ問題モ無イジャナイデスカー(すっとぼけ)。
「マハブランの当主が新規の開拓をしているのも事実。
最終で入った場所が、大坑道の集積基地なのも確実。
――だが、逆を言えば、それならあんな風に『密輸』する必要がない」
「……地下に大規模な要塞でも作って、反乱ですか?」
「そんな度胸のある人物ではない。極論すると、良くも悪くも、人の良い婿殿だ」
だが、とリーアムは言葉を続ける。
「人の良さに付け込んで、何かを裏でやっている連中が居る可能性は高い。
――都合のいい言い様に成っているのは承知だが、『適宜叩いてくれれば』――」
・ ・ ・ ・ ・ ・
――密偵仕事とか、それこそ『エルフ探偵』に任せたい。
任せたいところなんだが……
「御嬢様が御父上と一緒に結婚式に出ますので、私はそちらへ行きますね。
――ああ、大丈夫ですよ、中から探りますから」
――んな事を言いつつ、あのメイドは去って行ったのだ。
……絶対マリーのドレス姿見たいだけだろ、アレは……
「――しかし、何処にあるとも分からん『拠点』を探すなんて、事だぞ?」
……挙句に、一緒に居たこの人とカーラたちも付いてくるしな……
……無事ではすまないな、これは――どっちが、とは言わないけど。
「カティの言う事も一理有りますね。
この雪に覆われた山々から、ピンポイントで探すとか――ぞっとしないですよ」
「うん、この貧乳悪魔の言うとおりだ」
「殺すぞ」
「やってみ?」
……バカ二匹(泣)。
「――でも、本当にどうするの、ジン?
この広大な範囲は流石に『マップ』でも何とも成らないと思うよ?」
「ああ――冬眠期の獣魔とかも引っ掛かるから、分からんな」
一応、さっき試しては見た。
赤点だらけ。獣魔かどうか判別付かないけど、こええよ、この場所。
――というか、お前、その格好、雪ん子みたいで可愛いな。
色々店に有った中で、何故それをチョイスしたか謎だけど(遠い目)
「――でも、『当たり』は付けてるんでしょ?」
「……分かるか?」
「あの『二人』をそのまま連れてきた理由、『嗅覚』でしょ?」
うん、そうなんだけど、自分でバラしたかったかな。
「――スン――ん、鉄臭い。
多分こっちと、おれの鼻が言っている、それゆけー」
「――アビーを保母に連れて来れば良かったかな」
「『寒いのは御免被る!!』って切れられてましたよね……」
「ああ、そうだったね。折角作った『念話増幅器』、それで壊れたんだった……」
まあ、多分別の理由も有っての事だろうから、強くは言わなかったけど。
『夢』がどうの言ったら、そのままシャル拉致られてたしな――
――敵に回らないといいなあ、あいつ――
・ ・ ・ ・ ・ ・
「――洞窟だな」
「あからさまに」
「うは、熊居そう」
止めてくれ、冬眠期の熊とか恐すぎるわ。
「心配すんな、獣臭くねえから、なんも居ないと思うぞ。
――むしろ、鉄臭さとかもしないけど」
「――むー。おかしい。絶対この穴だと思うぞ」
――鉄臭さがビタっと止まる理由、ね。
「――『マップ』」
――お? やっぱりそうじゃん。
「外れ、ではないな」
「――だね。反応は微弱だけど、何かは居る」
――このマップもなあ……
もう少し、詳細に出るなら、周囲把握完璧になるんだが……
### 『マップ』機能のアップデートには条件が足りません
うお、懐かし!? 久々にナビ声が聞こえたよ。
いや、音声オフにしたりしてただけだけど。
……めっちゃ未読メッセージ入ってるんだよな、オフだと……
「――んで、どうすんだ? 攻め入るか?」
チャキっ――じゃねえよ、しまえ、カティ。
「入り口分からないのに?」
「ザミーが正解。穴開けて入るには、リスクが大きいだろ。
あんたの火力でぶち抜けるならいいけど、抜けなかったら最悪、痕跡全部消されて逃げられるかもしれん。
――この構造にしてるんなら、どう考えても『転移装置』あるだろうし」
「んじゃ、どうすんだ?」
どうするって、お前……
「――キャンプでもするか?」
「雪山でこの装備で!?」
「雪洞って暖かいんだろ?」
「前提として、ちゃんとした装備でならな」
八甲田山は勘弁してください。精神コマンドを使える人ばかりじゃありませんよ……
「――匂いはあった以上、通気はしてるんだよね?」
「……通気孔か」
周囲探索してみ――
「――ん? また匂った――こっちだ」
「――雪に隠れてて、分からんかったか」
よく見ると、洞窟の入り口の脇に穴が開いていた。
……巧妙なのか大雑把なのか、分からんな。
岩の隙間っぽくしてるから、一応の努力は認める。
「――一応、覗いてみるか」
そう言って俺は、『蔦』を伸ばす。
「――――」
「――――」
「――――」
「――――」
「――どう?」
「――だめだ、深すぎる」
予想はついたけど、めっちゃ深いとこにあるな、これ。
「――というか、あたしら、メッチャ怪しいよな」
「――まあ、敵地(仮)のまん前でうろうろしてたら――」
……あ、やべえ。相手に『映像』でも見えてたら、詰んでないか、これ?
そんな『科学力』有るか分からないけど、『魔術力』的にはやれなくは無いし……
「――逆利用するか、警戒心を」
……何言い出してんだ、この婦警。
・ ・ ・ ・ ・ ・
「いやはや、たすかりました」
「全く――雪山にピクニックだと? 死にたいのか、中央の人間は!!」
……えーと、うん。
――ドナドナ。
火を熾してキャンプ風に過ごしてたら、何故か都合よく『森林監視員』がやってきました。
「すいませーん、この子達がどうしても『雪壁兎』見たいって聞かなくて」
「「「ごめんなさーい」」」
――なんか、ちょっとした若返り探偵気分。屈辱。
「もう殆どが冬眠に入ってる、今は見かけないぞ、全く」
「ほんとすいませんでしたー」
「あ、ああ、まあ、反省してくれれば――」
カティ、お前、魔乳で責めるなよ。
「ところで、この辺りって、どなたかの領地なんですか?」
「うん? それを聞いてどうするんだ?」
「いえいえ、ご迷惑をお掛けした挨拶をしないと、後からが困りモノですので」
「ああ――領地って訳では無いが、冒険者ギルドのラモン=ラウール殿が管理している。
この辺りは特殊な獣魔が多いから、直接監視しているらしい。
まあ、私は単なる監視員で、それ以上は知らないがな」
……ふっ、ちょろいん。
お前、顔から言いたい事丸分かりだぞ……
……男のサガって、悲しいよね、森林監視員のおっちゃん。
――多分違うんだろうけどさ。
「『力の異天』殿とマハブランの姫君の『婚礼の儀』も、後数日で有る。
あまり大きな騒ぎを起こすと、今度は逮捕と言う事に成り兼ねないから、気をつけてくれよ?」
「はーい、ありがとうございまーす」
……しっかし、正しく真っ黒か、この地方のギルドの親方さんは。
「――どうする? ジン?」
「……騒動は起こしたくないけど……な」
……居たら居るだけで騒動になる気しかしないけど――
ちょっと、そういうのに慣れて来てる自分が居る……




