表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/388

『03』/REm/08


「――どういう事だ? 村が複数在る様には思えなかったが」


 俺たちは、兎も角一旦船に乗った。

 甲板上で呟くアパムに、ゲンも考え込んでいる。


<――生体反応に引っかかってるのは居なかったですけどね>

「索敵範囲どの位だっけか?」

<50mそこそこですけど、歩き回りながら見たから、見落としは無いと思います>

「――となると、地下が怪しいが――」

「把握している範囲だと、島から地下に『降りられる』となると、あそこ位ですし――

 なにより、生活範囲が狭いと言ったって、そんな人たちが居たら流石に気が付きますよ。

 集落の後だけに引っ込んで生きてた訳じゃないですから」


 アパムに水を向けられ、答える『族長』。


「生活用品とかはどうしてたの?」

「それこそ、たまーに行商人の人来てましたから、貯蓄を切り崩してどうにか。

 まあ、作れる物は基本作って生活してましたけどね。この服とか、手製ですし」


 島だし、独立で回せてるとは思ってたけど、そのレベルかよ。侮れねえな。


「――おっちゃん、噂ってのは?」

「ああ、これがまあ――実に妙な話なんだがよ」


 シャチョーに聞かれたおっちゃんが、頭を掻きながら答える。


「夜の漁なんかで、何度か来てる奴なんだがよ――

 『岩礁の位置が違う事があった』『陸の形が微妙に違う事があった』って話でな」

「何だそれ、海底火山かなんかかよ、コワ」

「この辺りじゃ、そんなのは聞かねえんだがなあ――たまーに、矢鱈に海流激しい時はあるが――」

「自然環境ってのは何処でも厳しいもんだなあ、ねえ、ゲンちゃん――」

<――ええ、まあ、そうですね――……ハハ――……>


 あ、うわー。ピンと来てしまった様だぞ、ゲンちゃん。

 ロボット(仮)が膝から崩れ落ちるとか、中々見ない光景だな。


「――どうした、ゲンちゃん?」

<――ふざけてる。多分まだ生きてるんだ、この『砦』>

「――そこに居るのか?」

<――恒常的に居るんじゃないと思いますがね――

 何れ、ソレが事実ならもう、前提からして全部覆されちゃう話ですね――>


 そう言いながら、海底を見つめる。


「おーい、ゲンちゃん、俺にも分かる様に頼む」

<……噛み砕くと、別のダンジョンが、更に奥に在る、です>


 ……クラマ、少しは考えろよ――まあ、今のは、ゲンちゃんへの『空気を変える一撃』だろうけど……


「……おじさん。船を――ぐるっとこの島の周りを回せます?」

「おう? そうだな――潮はそんなに荒れてないし、行けるぞ」


 お、シオが何か思いついたようだ。


「ゲンちゃん――海底に不自然な所が無いか、監視出来る?」

<――まさか、『空虚の野ベル・リガ』と同じ様に?>

「うん、多分――あくまでも勘だけど――開口部の配置は――」


 そう言って地図に、あの時上空から見えた入り口の位置を、丸で示し始める。


「他は、攻撃が来ないか警戒。三人は生身の戦闘とか経験無――ああ、アパムっさん、あれだっけ?」

「……一応サバゲやってたけど、手持ちの武装が無いぞ?」

「――じゃあ、ミツキ・クラマは、アパムと一組で警戒。

 ホントに警戒だけで良いや、そこのメイド姉さんも戦えるだろうし」

「あーと、まあ、仕方ないですね」

「イゾウはアパム達と――ええと――」


 ――信用してない訳じゃないが、タコのオッちゃんの前で、『猫エルフ』も『族長』も拙いか?

 話がややこしくなってもあれだしな……


「――『シャイフ』さんを守ってくれ」

「ちょっと、ジンさん、『シャイフ』ってなんです?」

「あー、うん、その――後で説明するから」


 ……ああ、我ながら安直つか――いや、シャチョー、何故吹いてる。


「――ジンちゃんや、アラブ圏の『族長』じゃん、それ」

「同じじゃん!?」

「……なんで分かったし」


 シャチョーこのひとも何のかんの油断なら無いんだよな、実際……妙にニッチな知識背負ってるし。


「つか、他にも在るでしょうがよ――あーとー……

 ……『シャリーフ』、は宗教的にヤベぇか。シャ、シャ、シャ――」

「いや、別にシャで押さなくても……」

「シャ――『シャルンホルスト』……」

「……ジンの事言えない程度だな」

「ぜったいあれだな、『甲板+女子』で『シャなんとか』で脳内検索した結果だよな」


 あーもー、『シャル』でいいだろ『シャル』で。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・


 結果として言うと、周囲を回る間には、攻撃の類は無かった。

 島は不気味な程の沈黙を保っている。


「――『穴』は無かったけど、不自然な地点はほぼ一致。どう思う?」

「構造は同じ、って事なんだろ。『何故』なのかまでは分からんけど」


 地図に示された丸と、ゲンちゃんが反応した位置はほぼ同じ――

 ――構造的に同類だとは思っていたが、ここまで似ると逆に、『意図』じゃなく『自然現象』にも思えるな。


<――条件が悪すぎるので、潜るのは保留ですね。注水でもされたら、それだけで全滅しますし>

「コントロールが『敵』側に渡ってるなら、そうなるよな」

「本体持ってきて、砲撃しちゃえば良いんじゃね?」

<残ってる部分とかが暴走する恐れが大き過ぎますので、それは止めましょう>


 向こうは向こうで、なんか恐い話をしてるし。

 というか、砦と見たらブッパしないといけない病かなんかか、クラーマーさんよ。

 そう、あれだ――ヒャアガマンデキネー。


「――それよりも、『シャル』、大丈夫かな?」

「いきなり呼び名に馴れたな、お前」

「難しく変更されたなら兎も角、そんなにイメージからも乖離してないし」

「……『シャイフ』はそんなに変だったか? 偽名程度にゃ丁度だと思ったんだが……」

「いや、まあ、肌褐色気味とか顔立ちとか、そっから呼び覚ましたんだろうけど……って其処じゃないよ」


 ああ、まあ――疲労やらでぶっ倒れた、つか、崩れたからな。かくん、て。


「――『島から離れられない』、も、嘘っぱちだったからな。

 ――まあ、気が抜けた、って所もあるんだろうさ――張り詰めてたものやら、唐突に失くせばよ……」


 ――何のかんの、面倒見良いよな、イゾウおまえって。


「まあ、何とか成るだろ――ミツキさん付いてるし」


 ・ ・ ・ ・ ・ ・


「――なんなん、私の人生は……」

「へこんでるねえ」


 仮眠室のベッドに転がっている『シャル』に、ミツキが笑う。


「……『母親』に言われてた事の、大半以上嘘っぱちだった気分が分かります?」

「いやー、流石にわかんないけど、腹立てられてるなら、まだいける」


 そう言う問題でないのは、ミツキも百も承知だが――本当にヤバイと、感情すら動かなくなるし、と。


「――『世界樹』との繋がりの関係で、ダメだって言われてたんですけどねえ――」

「あの緊張の顔と、ほっとした後の顔よwww」

「……珍妙だったのは分かりますけど、言わないで下さい」


 そう言いながら――ふと言葉の内容を思う。


「――どっちにとって、ダメな事だったのかな?」

「――というと?」

「君にとってダメだったのか、それとも――」


 ・ ・ ・ ・ ・ ・


 イゾウは、甲板の後方で島を眺めていた。


 思いつきで来ただけ、それだけの筈が、妙なものに出会ってしまった。

 おまけに――『力』は取り戻せたが――アレが現れて、敵わないと来た。


「――参ったな。あのおっさん、こんな世界でまで俺に絡まなくてもいいってのに」


 ――何をボーっとしている。お前自身が気が抜けたか?

「うっせぇな、何言って――」


 不意に聞こえた『首白かべしろ』の声に答え――


「――やべえ、なんだこれ――」


 ――ドンっ


 不意に、船体が大きく揺れた。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・


「お、おおおお!?」


 波間を切って、それは不意に浮かんできた。


「――何、あれ」

「何って、取り返しに来たんじゃない? 嫁さんを」

「勘弁してくださいよ――というか、あれ、あの影なんです!?」


 ――何って、俺、見たことある代物なんだけど。


 ――ザパァッ!!


「――また『竜』かよ。しかも二つ首か」


 ……幻覚じゃないんですね。


「――ジンさん、その顔だと、知ってます?」

「……『寝取られ男の竜の一匹』」


 ごめん、そんな風にしか言えない。というか、単体で出てきてる理由が分からん。


<――――>


 ……あれ? どしたのゲンちゃん?


<――考え事の邪魔をしないで貰って良いですか>


 ――スチャっ――


 え、ちょ、何、その右腕。でろーんって長いけど。


<テスト頼まれてたの忘れてたので、動作チェック兼ねて展開したのは良いんですがね。

 ――こんな『大砲』、人間大でまで積まれる謂れが在りませんよ、ええ>


 ……チグサのバカ、何を組み込んでるんだ……しかも、無断だったっぽいし……


<――ふふ、しますよ、しますとも、テストですからね、ええ――>


 ――ガッ、キョン――


 あー、どっかで見たわ、このフォルム――『クジラナミ=サン』じゃないですか!?


「シオ、対ショックに船の前方に風張れ!!」

「わかった!!」

「全員何かにつかまれ!! シャチョー!! シャルを死ぬ気で掴め!!」

「立場違くないか――


 ――ドンっ!!


 ――ぬおぉっひゃぁ!?」


 うわ、やっぱ『アームストロング砲』!?

 どわわ、衝撃でめっちゃ揺れる――!!


 ――ドゴォ!!


 『双頭竜』は、腹を貫かれて、そのまま海面へと落ちた。

 ――フォルム的に最弱の状態とは言え、一撃で屠るんか、ゲンちゃん……


<――やっぱダメだ、戻せない――だろうとは思ったんだけど……>

「――いや、あの、大丈夫か?」

<……何か、色々苛付いてぶっ放しちゃいましたけど――戻せないです>


 ……展開後の強度計算とかもしろよ、あいつ。しばらくこのままかよ。

 ――でなくて。それもだけど――


「……何に苛付いてんだ?」

<――兵器なんですよ、基本的に。考えて考えて、脳汁迸らせて考えるのは、人間の仕事です>

「……脳汁て……」

<でも、考える事を覚えてしまった――それに付随する事は、兵器としてはマイナスに成る筈なのに――

 ですが、困った事に、棄てたくも無い――別に羨ましい訳では無いですが――

 ――たった一騎で、『世界樹』に向かった『機神』の『心情』が、何となく分かる――

 そしてそれは、残念な事に、平押しで防衛していた頃には、分からなかった筈なので――>


 そういうと、ゲンちゃんはこちらを向く。


<――多分、私の『同胞』が利用されているだろう、このダンジョンも――

 ――いつか攻略手伝ってもらいますよ? 『戦友カメラード』>


 なんだか、不敵に笑うのだった。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ