01/【Ⅴ】
<おいまて二人とも、ちょっと、冷静になろうか>
言い訳めいた口調になったのは、勘弁して欲しい。
だってなあ――
訳分かんないまま頭上で最終決戦されて。
消えてた『世界樹(仮)』を発見して。
厳密には違うかもしれないが――機械の体を手に入れて。
次は過去へ向けて飛べって。
一日でそんな展開起きたら引くわ。
何周目トリガーだっつう話だよ。振り子が飛んでくわ。
マ○ー2だってそこまで端折らねえよ、戦闘だけだよ、あれ。
<悪いが、たかが草木に何を期待してんだお前ら>
「「たかが」」
おい、ハモんな。
「『たかが』草木は地殻を抜かん。この『厄草』が」
「『たかが』草木は『勇者』と『魔王』をぶっ飛ばさん。この『疫草』が」
「どう考えてもお前は『邪神』手ずから育ててる一鉢だろ、この『パンドラゴラ』が」
<『賢者』てめぇ、色々混ぜて迄けなすってどういう事よ!?>
キモエルフ略してキモフに集中してくださいよ『賢者』さん――って、ひぃっ!? いきなり顔上げた!?
「――うん、うん、そうだね、根絶やそう。やっぱりそうした方が良いよね、うん」
あー……焦点が、合ってないんですけど……なんだよ、どんだけ恨み心頭だったんだ。
「人の事をさっきからキモいだのなんだのと――
ボソボソボソボソ言っている様な『勇者』も『魔王』も、この世にはやっぱり不要ですよね――そうしよう!!」
えっ? おい、何言って――
って、なんか、後ろからぞろぞろと『鎧騎士』出て来てんですけど!?
「目的への障碍である、絶やせ」
――あ、あの――無言で抜刀してるんですけど、こいつらって――
「――『賢者』も居られますが?」
「目溢しされてきた事を理解できない者は最早『愚者』だ!! さっさと――」
ちょ、殺到するなこの狭い場所に!!
――とん。
「――誰が、誰に向けて『愚者』と抜かしているのだ、ガキが」
――ドンっ!!
「――っが!?」
――あの。賢者がめっちゃ速い動きで相手に一人コンボ決め出してるんですけど――
こっちはこっちで何を腹に溜めてたんだ……って、ちょっと、こっちに飛ばすな!?
ばしぃっ!!
「ぐはぁっ!?」
「『司政長』殿!!」
――つい殴り落してしまった。ま、まあ、事故だよ、じ――
「きさま……ひとを……羽虫かなにかを、払うように……っ」
――いや、その――歪めながら飛んできた顔が余りにキモくて――
「さっきからブツブツ抜かしてたのは、貴様かぁぁぁぁ!!」
<なんで聞こえてるんだよ気色割いなこのカッパは!!>
――あ、いや、そんな。おかっぱって言いたかっただけだよ? ぷるぷるしないで?
「――こ、こ――こいつを先ずは殺せぇぇぇぇぇぇ!!」
誤解だって、落ち着いてよ、鼻水流さなくていいから!!
・ ・ ・
「ふう。少しは腹が癒えた」
そう言いながら、側に立つ『賢者』を見上げる『魔王』。
「――何なんだと思う? あの怪草は?」
「――表示があるから、『異天』ではあるんだろうが――私にもわからん」
その答えに、『勇者』が今度は振り向く。
「『師匠』も、覚えてないんですか?」
「そもそも、『異天』が私たちで全部、とは聞いていないし――
――来た経緯の細部を思い出そうとすると、抜け落ちている部分が有る。
その中に関係している気もするのだが――『豪力』や『神速』の様にははっきり把握出来ない。
――もっとも――」
そう言いながら賢者は頭を掻く。
「コレすら、この身体に成った時に思い出した記憶だ。
それ以前は、連中の様に美化された『記憶』しか無かった――そうなると――」
「……ひょっとしたら、アレは、『不都合』な存在かも、って事か」
『魔王』の問いに、『賢者』は頷く。
「――アレを送る理由の大手はそれだ。尤も……花一輪過去に突き刺して、何が変わるかは知らないが」
鎧騎士に追いかけられるジンを見ながら、苦笑する三人だった。
・ ・ ・
っでぇい、うざってぇ、けど走るの止めたら袋叩きにされるな、これ。
面っ倒臭ぇな、この――
「『発破』!!」
――ズムッ!!
「ぬおっ!? 『魔族』か!! 怯むな!!」
おお、ダメ元でやったら、燃える粘液出たけど、相手もやる気出しちゃったぞ!?
ああと――後、なんか無いか、っくっそ――
###ぴこん
###使用可能なスキルを一覧化します
って、何か見た事無いのも混じってきたぞ――ええとこれは!?
――ビシっ
「うぉっ!? こ、小癪な!! 気を付けろ、足絡みの罠を使うぞ!!」
あかん、あんまり効かない!! 逃げるしかねえじゃん!!
もうちょっと好戦的な事もしときゃ良かっ――
###『不運惨果』を――
使用しねえよ、こんな空間で使ったらこっちも死ぬるわ!!
助けて、そこの『賢者』さーん!!
「さて――あまり時間を掛けている場合でもないな」
そう言いながら、割り込んで来た『賢者』は、術を放った。
突然巻き起こった突風に、鎧騎士達は足を掬われて転倒した。
<――も、もうちょい早く助けてくれんか――>
「『死なないだけ』で、物の数に入らん『雑兵』相手に、その『鎧』で倒される訳が無いだろう」
「ぞ――『雑兵』だと!?」
だから、煽るなって。
「『死なないだけ』のお前らが、なんの脅威になる。
『超命』――『堅の異天』の様に、常に命を捨てた鍛錬を繰り返し続けたならともかく――」
「――う……」
「何なら、お前らが本当に『不死』か否か、そこの『深淵』に叩き込んで――」
「――そこまで」
不意に振り向くと、キモエルフさんが魔法陣に包まれていた。
「『対魔術』か」
「その通り。貴女の足取りが消えて以降、こうなる可能性まで踏まえて研究を進めていたのですよ――
ああ――こんな形での敵対は、全く不本意なのに」
髪を掻き上げる――いや、あの、なんでそう一々面倒臭い人オーラ放つんだこいつは――
んで、賢者、こっちみて『なんだあれ』って顔するなよ、俺は知らねぇよ。
「どうして貴方たちは、こう――純然と使命に邁進出来なかったのですかねぇ?」
「そう都合良く、『英雄譚』の主人公染みた行動だけを出来る奴が居ると思うか?」
「貴方たちは『神』が直々に御選びになって遣わした――出来ない訳が――」
「ならば『神』の不明でも恨め」
『賢者』の言葉に、相手方が固まる。
「お前達の都合の為だけに、好き放題に振り回されたこちらに――
『神』の都合の為に、この世界に呼ばれ。
『それまで』を失ったこちらに、何を言っているんだ、お前らは」
……ええと、なんすか、『神』がラスボスですか?
――というか、だね――ああ、まあいいや。固まってるなら好都合だ。
けしかけて来たんだから――何されても文句ないよね(ビキビキ)?
「――平行線ですな。ああ、まあ、分かっては居ました――やれ」
「『恩寵なり』」
「『神の意は恩寵なり』」
「『その思は死より深く』」
「『我等はただ頭を垂れ受け入れるなり』」
ぶふっ――ち、中二というか、13課というか――
もっと詠唱なんとか成らんかったのか、これ――ああ、だからって、指差して爆笑するなよ、『魔王』。
「笑ってる場合か、ジン。これの原型は多分、魔術師用の牢に使う様な代物だ」
「ああ、そうだな。あの展開されてる陣は見覚えがある――ぶふっ」
「……お前も笑うな、幾ら師匠でも――」
<――まあ、大丈夫――>
そう言って、俺はゆっくりしている。
茶でもあるならのんびり観戦したい位だが――
### ぴこん
### 茶葉生成を
あ、要らないです。今は要らないです。
それより、さっさと終わらんかな。一応の礼儀として待ってるけど。
「『それは堅牢にして』・・・」
「『それは深淵であり』・・・」
「『それは』・・・」
「『そ』・・・」
――ひゃあああああ!!
我慢できねえ!!
<――えいや>
俺は――すまん、一旦醒めると、気合一杯で使うには照れ臭くてね――張ってあったスキルを解き放った。
・
・
・
――ぼっ
「――む?」
『司政長』とか呼ばれていた奴の背後で、葉を発火させる。
「――ふん、そこの鎧の奴か――何かしていたが、こんな小火で何を――」
そう言って指を鳴らして消し止め――歩み寄って踏みつける――
その足に――ビシャっ。
「ぬっ――け、汚らわしい粘液を――」
はい、発火。
「ぬ、お、おお!?」
ハイそちらの壁には花粉嚢。
「ぶはっ!?」
はい、逃げた先には発火液満載の蔦ですねぇ!!
はいそっちは粘液!! はいそっちは棘付きの蔦だ!!
はい、濃密な花粉!! んで発火!! どーーーーん!!
「し、司政長殿!?」
「――『突風』」
「う、うおぉぉぉぉ!?」
はい、相手に出た隙に、賢者が魔術ブッ込んで、ボウリングのピン状態。
撤去完了――っと?
「かはっ――ごふっ――お、おのれ――」
お、おお――アフロになって出てきた。
抵抗したのか何なのか知らんけど、しぶといな。四つん這いだけど。なんで尻上がってんだ、お前。
### ぴこん
### スキルポイントが割り振れます
――ああ、うん。ありがとう。ぴったりなスキルだ。
相手の前に生やしてっと。
「こ、こんな――
ぶちっ
――なんだ?」
はい、叫ぶよー。
「あがっ!?」
### 特定種族用トラップ
### 『絶叫根災』を覚えました。
### 周波数を可変させて、特定種族だけを無力化出来ます。
「――やはり『厄草』だな、うん」
はは、いや、あんな隙だらけなら、罠位張り巡らすよね常しk――
### ♪ぴぴっぴぴっぴぴっぴ♪
### 特殊称号ゲット!!
### 『煉鎖厄菜』!!
### ♪ぴぴっぴぴっぴぴっぴ♪
おい、ジャスなんとかさんが出てきそうな真似は止せ、メニュー。
・ ・ ・ ・ ・ ・
――さて。倒してしまった訳だが。
「――さて。さっさと取り掛かろう」
……いや、あの、それでも送る気ですか貴女。
「『Wave1』だ、こんなもんは」
<……まだ来るんか……>
「こんなバカに全部を任せておく程、脳天気でもないだろうさ」
そんな風に言いながら、『泉』の周囲に――『神道』かよ、『御幣』立てんなよ。
「形式は気にするな。術式の方法論としてこの形なだけで、別に信仰の種別に関係するモンじゃない」
<というか、あの、せめて世界観の説明だけでも>
「――『魔王』。説明」
「ちょ、私に投げるのかよ――というか、ソレ開けよ」
そう言って豆本を指差す魔王――えと、あれか? さっきのみたいに――
てか、鎧だと開きづらいんですけど……くっ、くの――
###ピコン
###フラグメント『賢者の知見』を手に入れました!!
###『用語集』に新たな項目が――
……用語集、て、何?
###
###
###
その下りはもう良いよ。なんなんだこのうっかりメニューは……
「――何故、頭を抱えてる?」
「――御師匠ちゃんの独特な世界観に、げんなりしてるんじゃないか?」
<いや、それ以前の段階――おい、まて、なんだよ、賢者の知識ってそんな危ういの?>
「――危ういというか、慣れないと、なんというか、その――」
待って、なんでそんな言い淀んでんの、『勇者』。んでなんで乾いた笑い浮かべてんだ『魔王』。
――『用語集』。
――いや、待って、トップ項目が『おすすめ!! 世界食べ歩き!!』とか一体何事?
###『賢者』のお勧めする、世界各地の
それの解説はもとめてねえ。
ああ、成る程、雑多なんだな、こいつの知識……
「む――上手く合わせられんな。おい、二人共手伝え」
「えー、御師匠ちゃんで無理って、かなり歪んできてるんじゃないの?」
「いいから手を貸せ、というか、魔力貸せ、力技に成るが、ひん曲げて繋げるぞ」
ちょ、まて、不安が一気に高まる言動が――
<――というか、相手がこの程度なら、俺を過去送りにする必要ないと思うんだが>
「そのとおりだね。いやはや、全く――懲りないというか、諦めが悪いというか」
……あんだけぶちのめしたのに、まだ喋れるんか、このキモフ――
――じゃ、ないな。
<――どちらさんです?>
「――やだねぇ、全く――何でさっさと見破っちゃうかねぇ」
<ステータスに『異天:醒神』とか点滅してるんだよ、隠す気あんのか>
「おやおや。困ったな。そこまで見得てしまうほどとは――」
――おまけに、これ、『念話』か。三人が気が付いてない――手ぇ振るな、『魔王』。
<――で? 何用で?>
「――こっち付かない? って話なんだけど」
<――『神』にか>
「おっと、そんなのまで見えたかい?」
<別に見えては居ない。話の筋で、予想が付いただけだ――まあ、答えは――>
……こいつ、なんなんだろうな。『賢者』&『魔王』の知識から言えば――
<『亡霊』になってまで『暗躍』するような奴と組むのは、御免被る、だな>
――『超命』とやらによって、一緒に地殻まで引きずり込まれたらしいのに。
「……うーむ。どうにも――リクルートの才能は無いようだな、私には」
<苦笑してんじゃねぇよ。余裕こいてる――>
「うん、余裕だよ、実際」
即答か。厭味の通じない奴だな。
「『魔王』と『賢者』の知識を貰ったなら、あの三人が過去にジャンプしてるのは分かってるだろ?」
<そこまでまだ見てませんなぁ。邪魔しないで見せて貰っていいか?>
「――あのさあ。あの三人、曲がりなりにも『化け物』だよ? それで変えられないのに」
<だったら、たかだか花一輪に粉かける必要も無いだろ? 正直に言ったらどうだ?>
どうせこいつも本体じゃないんだろうし、煽っとこ。
<『訳分かんない存在が動き始めるのこわいでちゅー』ってな――>
――おっほ、こっわ、『念話』だと感情もダイレクトに来るわ。
「交渉決裂だな――やれやれ。来た時に『神』の力の程は思い知っただろうに」
<あー? 知らんよ。てか、覚えてないんですよ、俺は――>
「……何?」
<おおっと。知ってない事が見えてないなら――その程度らしいな、お前は>
ほれ、ほれほれ、どうよこのウゼェ顔――兜顔だけども。
なんか言ってみろ『亡霊』野郎。
「――まあ、精々繰り返すといいさ――何れ、理解が及んで――狂う日が来るさ」
<そいつは素敵だ、お前から見て狂気なら、そいつはなんとも素敵な事だろうな>
――あ、野郎。切りやがった。
<――ふん。道端で道々の人々の罵倒やらに晒され続けた草を舐めるなっつうの>
###ぴこん
###特殊称号『罵倒観音』を
BBBBBBB!!
お前も一体何なんだ、てか、会話できる状況なったら問い詰めるからなメニュー!!
###おお、こわい、こわい
会話できるんじゃねぇか、この――ああ、もう、今はいいよ、どうでも。
向こうで三人が額の汗丁度拭っちゃったから……
……ああ、行かなきゃダメなんだろうな、これ……




