『03』/17
「――アビー、『どうなってる?』」
「そうねえ――【『ナマナリ』だな】」
「……本当、何人だお前。どこのセーメーだこら」
色んな方面から怒られてしまえ――あの映画の晴明、ほんとハマり役だよな。
「冗談冗談。でも、まあ、起こってる事は近いと思うよ。
魂の変質と、それに伴う肉体の変質って言って良いと思うから」
「……もうちょい分かりやすく」
「あー、そうねー――『人狼憑き』――とかかな?」
「……いや、そこはお前……『狗神憑き』とか言えよ」
「ああ、そういやそうだね」
「適当か」
こいつの思考、未だに掴めない――あれ?
俺の周囲の異性って、掴めない奴ばっかいねえ?
「まあ、そこは良いが――どうやって止めるんだ、あれ――」
別に髪が長くなってる訳ではないし、爪が鋭くなってる訳でもないが――
心を込めて髪を梳かすとか言われると、流石に冒険が過ぎるぞ。色んな方面に。
「んなげんなりした顔してると、何考えてるのか丸分かりだけど、多分違う」
「――殴れば治るか?」
「お勧めはしないかな、アレの状態で気絶するだけだと思うし」
――っていかん、来た!! さっきより速いぞ、おい!?
――ガガッ!!
「倶倶倶倶倶宇宇宇宇宇宇!!」
<やれやれ――世話の焼ける>
「ちょ、『グゥエイン』!! 無理すんな!! まだ留まれる方法――」
<無用だ!! 後の好き放題は――
「おっちゃん!!」
――アレに任せる!!>
ちょっ!! え!? 何で!?
「なんで皆して降りてきてんだおい!? ユートお前、監督し――」
「いや、その子、めっちゃ、強い――」
……ごめん、フルボッコにされてると思わなかった。何て顔に……
「おい!! おっちゃんと戦う前に俺と――」
<手出しするな!!>
近寄ろうとする『子竜』を、『グゥエイン』が一喝する。
<――我を誰だと思っている。
静海地方はルーブに座し、天を飛ぶ魔物どもの長とも恐れられし者。
『巨龍ドーラ』を生母に、『聖王』を育母とする者。
伝承の内に生まれ、幾星霜の時の変遷を見て、ここに在る『竜の中の竜』。
我は『グゥエイン』!! 異つ空の下とて、それは変わらぬ!!
『強き者』との戦いに、介在する事許さぬ!!>
そう吠えると、イゾウごと再び飛ぶ『グゥエイン』。
「……おこられた……おこられたぁ、シオねえちゃん、おこられたぁぁああああ」
「お、おう、な、泣かないの、ねー」
きゃ、キャラブレが凄いなこいつ。というか、シオが扱いかねてるな。
姿形は褐色黒髪竜系俺っ娘なのに――え? 俺っ娘?
「――ああ、うん。
そういや、あの世界の連れて歩かれてる『竜』って、基本メスだっけ――」
「おーい、現実に戻って来ーい」
「……お前も、何故あのタイミングで教えなかったし、アウル」
「いや、その方が楽し
ギリギリギリギリ――
久々!! 出会った時以来のアイアンクロー!!」
「じゃれ合ってるところ悪いけど、あれじゃ無理だと思うけど」
アビー……お前が言うな。ほんと、おまゆう。
「なんか手は無いのかよ、こっちでの付き合いは、むしろお前が長いんだろ」
「『説得』で何とか成るレベルじゃないからなあ。憑いてるアレ、旧過ぎて『神』に近いし」
「霊体って、経年劣化しないんですか?」
「いやあ、するのもしないのも居るよ、そりゃ。
霊体なんて、それこそ思い込みが結実した様な、適当で出鱈目な――」
アウルに応えてそこまで言うと、ふと何かに思い当たったのか、言葉を切った。
「――ジン、今何時だい?」
「『時蕎麦』おっ始めてる場合か!?」
「いや、違くて。正確で正式な時間と日付」
「あーと……『メニュー』!!」
あー、これ呼ぶの、何か超久々な気が。
「現在の時間は――」
「お前が言い出すなよ」
「あ、つい、幾星霜にも渡る職業病が――」
### ロシュ暦1395年・セペトの月・30日
### 時間は22時10分――
「――って言ってるが!?」
ドガァ!!
<く――ぐ――>
「おっちゃん!?」
<来るなと言っている!! この最後の戦いに水を差すな!!>
「お、おい――時間気にして『良い子は寝る時間』とか言うんじゃねえだろうな!?」
「落ち着きなさいって、『グゥエイン』気に入ってても、もうどうにも成んないんだから――
せめて、稼いでくれてる時間で、やれる手を打つから――
アウル、『此処』と『私たちの世界』との、暦の上での時間差異は?」
「――一月ほどですね。正確には――」
って、おいおい、二人してどうした、地面に数式書き出してんじゃねえよ、アルキメデスかなんかかお前ら!?
「――ほら、ぼっと突っ立ってないで、時間稼いで来なさい。
『よいまほうつかい』は、大団円が無理でも、最善に持ってくのよ――任せて」
お前の何処が、『よいまほうつかい』――ええい、ままよ!!
「シオ!! 来い!! 『グゥエイン』にゃ悪いが、邪魔をする!!」
「うん!!」
「そっちの――」
ええと、名前――名前!? 知らねえぞ『アムリタの竜』の名前なんて!!
…………
「ああと――『カーラ』!! お前も手伝え!!
グゥエ――おっちゃん助けるぞ!!」
「――わがっだ!!」
「後、鼻拭け!!」
――なんか今、聞こえた気がしたんだけど、気のせいにしとこう。
――いや、もしも居るなら。
――『アムリタ』。あんたの思いで、こいつを護ってくれ。
<来るなと――!!>
「うっせぇバーカ!! 戦友の最後の戦い手助けして何が悪いんだバーカ!! バーカ!! バーカ!!」
<き、貴様――>
「『独り』だったから最後も『独り』なんて許さねえぞ!!
時計の針が戻せないなら、最期くらい良い事があっても良いだろ!!」
「屡亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞!!!!」
「手前も何時まで寝てやがる!! とっとと起きろやイゾウ!!」
ゴギィィィィィッ!!!!
「か、カーラ、手加減!! 殺しちゃダメだ!!」
「わかった!!」
ヤバイ、一瞬イゾウの首から上が無くなったかと思ったわ――
――ええい、効くのか? こんなのに?
って、やべえ、もう体勢起こして――
「シオ!!」
「『荒天を目指し飛ぶ鳥』!!」
シオの放った『鳥』が、その体勢を更に崩す。
ああ、凄い楽――楽と言うか、以心伝心って、すばらしい。
「じゃねえ。とりあえず、大人しくしてくれや――
『昏く掻き乱す茨の森』!!」
はやくしろよ、『よいまほうつかい』さんよ。
・ ・ ・ ・ ・ ・
「――おっけえ。すばらしい。こんな偶然が在るか」
数式から導いた『答え』に、アビーは笑う。
「――これが分かったから、どう――」
「察しがつくでしょ、あんたなら」
「……そうですね、そう言えば。貴女は『そういう者』なんでしたね」
「――正直、『時間帯』に若干のズレがあるし、やった事なんてないから、巧く行くか解んないけど――
まあ、自分より年下連中が気張って戦ってるのに、いも引くのもね」
そう言うと――片手に長い杖を。
もう片手に、古めかしいローブを引き出し、それを纏う。
「――おとうさん、おかあさん。私に、やり遂げる力を」
そう言って、戦いの場へと駆けて行く。
「――この世界は、なんなのだろうか」
アウルは、我知らず、そんな言葉を紡いでいた。
「――今や、忘れ去られている様な事が、どんどんこの世界に起きている。
彼らの世界では、最早省みる事も無くなった様な物事が、ここにある――
果たして――誰の意志で?」
その問いは、答えなどあるか分からず。
その意味など無いかもしれない答えは、未だ虚空に彷徨っている。
・ ・ ・ ・ ・ ・
「――速い過ぎるって」
正直、ちょっとテンション下がった。
『混沌竜』でも十分位は捕らえられたのに、お前、数分でメキメキいって片手突き出すなよ……
「いや――十分だよ」
不意に横から声がした。
「時間稼ぎありがとう」
「毎度どうも――」
「ところでさ、ジン。『サマインの祭祀』って知ってる?」
ふん、お前、祭祀、なんてつく物なら――
ねえちゃんが知らなかった訳無いだるぉ!?(他力本願)
「ケルトだな。正式には違うかもしれないけど――今の『ハロウィン』」
「おっほう。知って居るのかライ――」
「いや、そう言うのはいい。んで?」
「素晴らしい事にね、『今日はハロウィン』だ」
「……あん?」
――ちょっと待て、お前、さっきガリガリやってたの、向こうの時間調べてたのか?
「んで、こっちでも通用するかは知らないけどさ。
『サマインの祭祀』は、本来は――」
「――『豊穣への感謝』と『冬の死への鎮魂』」
「仮装して練り歩いて、ついでに痴漢する日ではない、って事――ってまあ、メタは兎も角――」
そういうと、アビーは、杖を大きく一振りした。
「『冬枯れが来たれる――鹿と女神の眠る冬が』」
そう、一拍、歌った――詠唱の類の筈なのに、それは歌に聞こえた。
「『黄金野の秋は今や終わる――『夏』の季は帳の彼方へと去り』
『恐ろしき『冬』が来たれる――その前に火を灯そう』
『その火を囲み――我等は貴方達を迎えよう――祝祭の輪に』」
まるで、キャンプファイアの様な――大きな篝火の幻影が、幾つも灯っていく。
「『『冬』の季が来たりて――全ては眠りへと誘われる』
『我等も息を潜めよう――貴方達と同じ様に』
『されど今宵だけは――共に宴を囲み居よう――『夏』と『冬』の狭間に』」
歌は――この縦穴の空間に広がっていき――
その中を、アビーは――ゆっくりと飛んでいる。
横に立った時は目深に被っていた筈のローブは剥がれ――
赤の筈の髪は、金色。
「『巡る巡る――全て須らく』
『生も死も――『夏』と『冬』の如く』
『野辺の木々は枯れ凍て――やがて緑に萌える』」
――立ち上がろうとしていた筈のイゾウは、灯る円の中心辺りで倒れている。
他の皆も、ただただアビーの歌に入り込んでいる――
――俺が、それに気が付いたのは何故だろう?
この祝祭の輪の中から、俺だけが何らかの理由で外れていたのだろうか――
イゾウが切り落とした、『混沌竜』の首が、蛇の様にシュルシュルとのたうち――
自身も祝祭の陶酔の中にいる、その祭主へと伸びようとした――
――ガスッ
「お祭りに水差してんじゃねえよ、部外者」
俺とそいつは、開いた穴から落下した。
・ ・ ・ ・ ・ ・
・ ・ ・ ・ ・ ・
落ち行く途中――そいつの本体が見えた。
角度が付いてしまっていたからか、穴の途中に突き刺さっていた。
――無論、『散華の槍』の影響で、肉体の殆どが砕けていたが――
ぞぶっ
「――っはっあ!!」
首の戻ったそいつは、息を吹き返した。
「――生き汚いな」
壁の取っ掛かりに蔦を伸ばし、固定する。
「――貴様が、居なければ――」
「無理だな。俺程度が居なくても、お前は最終的に打ち滅ぼされてた」
実際の所、どの程度に成ったのかは分からないが――
『異天者』PTとこいつがやりあったら、こいつは負けていたと思う。
『グゥエイン』達を完全に吸収していたら? いや。それでもだ。
「何故だ――我には、滅ぼされる道筋しか――」
「違う、が、まあ、当たらずとも遠からず、だな」
こいつは――例え何を吸収しようが、何処へ出ようが――
そこに在るものを理解しようとしない――受け容れようとしない。
天地の間に、自分の価値観と真逆の正しさも存在すると言う事を、
俺にだって、受け入れられない正しさ、と言うのもある。
でも、こいつはそうじゃない。
例えば、飼い犬が吠えるのは、相手が悪いのだと本気で思っている人間が居る。
実際は、自分の犬がどれ程の駄犬なのかを考えず。
自分にとっての都合の良い様にしか物を見ない。
その無駄吠えで、誰が被害を被ろうが、構わない。
『自分』の『犬』は可愛い。
だから、他の人にとっても可愛いはずだ。
それを認めないのはそいつが悪い。
極論――こいつには、『自己愛』しかないんだろう。
だから――『アムリタ』が、自分の全てを犠牲にしてでも、『竜』を守った事が、こいつには――
そして、あの世界の主流たる連中には、理解出来ない。
それでいて、自分の主張は相手に通ると思っている。
そして、相手が話し合っても無駄と避けても、それを追う。
――認める事が出来ないのだ。自分以外の価値観を。だから、無理矢理押し付ける形に成る。
そうして、更に相手は離れていく。
自分の物差し以外に価値を認めないのに、『自分には何も無い』と嘆いているだけ。
完全な理解はしあえなくても、歩み寄れると言う事を考えない。
そんなんだから、別の筋道を考えられないんだ。
こいつは――『主人公』ですらない――物語の中を、ただ駆け抜けた、『時計の針』だ。
――だから、俺はこいつが嫌いだ。
「――分からぬ――分からぬが――貴様だけは――」
メリメリと身体を再構築しながら、こちらへと手を伸ばす。
「……悪いが、真っ当に戦う気力がもうねえ。アビーのアレで、毒気抜かれた」
「ならば――そのまま其処で――」
「だからお前はそのまま終われ」
相互に壁を蹴って、相手に肉薄する――しようとした。
――ビンッ
「――な、に――!?」
――案の定、というか。
『命令』を聞かせる事は出来ても、『一部』では無かった様だ。
壁を這って行った蔦が、その首に絡み付いて、奴を縫いとめている。
「『騒ぎ喰む壁』」
ずるずると、蔦は更に相手に絡み、その身体をどんどん引き込んでいく。
――中は、『絶叫根災』の群生だ。
「貴様――せめて、最後ぐらい――!!」
「うるせえバーカ。真っ当に『冒険』しなかった奴が、『真っ当な最後』を望むな」
その叫びを残し、それは壁の中へと消えた――
「……きっつ……」
流石に連戦に継ぐ連戦で、俺の意識は遠のいていく。
「――あー、こりゃ、死んだかも――」
蔦が枯れて脆くなって切れる音を聞き、俺はそのまま意識を手放した。
・ ・ ・ ・ ・ ・
『彼女』は、静かに飛んでいた。
手放され行く意識の中で、静かに。
地平は遥かに遠く。
暮れ行く空を見ながら。
「……すまんが、『ミイナ』」
その背から、声が聞こえる。
「我はもう動かぬ故、お前がアレを拾ってくれ」
その声は、何度も聞いた声。
しかし、自分にも、何も残っている訳ではない――
「――何。後少しだ」
その背中で、何度も聞いたその言葉に、自分の中の残り香が燃える。
「さあ――飛べ」
――はい。少しだけ、待っていてください――おじさま。
・ ・ ・ ・ ・ ・
「――お?」
――どうやら、死んでいない。
「――って、なんだ、この――モフモフ――」
――『大鳥』だよ、これ――
<――ほんの少しだけですが、お助けします>
「――いや、助かっ――だだだ!?」
いてえ!! なん、誰だ頬をつね――あっ、シオ(察し)。
「――無茶を、するなと――」
「わ、悪かった、やめて!! 頬が無くなる!?」
<あはは――いいなあ――楽しそうだなあ>
というか、ここ何処だ――空の下なんですが。
「――『グゥエイン』が、貴方を拾って、縦穴の天井に穴を開けたんですよ」
「――なんで?」
「<どうせ往くなら、空の下がいい>とか言ってましたけど――」
最後の最後で、どんな我儘を――
<――降りますね――私は、おじさまの身体を無理矢理使って、ここに居るので>
「――ああ、悪い――?」
「――ジンも気が付いた?」
「――ああ」
……『グゥエイン』の野郎、ひょっとして、これを見せる心算だったんじゃ――
降り往く眼下、そこには――
さっきのダンジョンの縦穴を中心として、同心円状にダンジョン入り口の痕跡が広がっている。
「――どうなってんだ、これ」
「――分からない。お爺様も、館地下の事は言ってたけど――」
そんな事を言ってる俺たちを他所に、地面へと着地する『ミイナ』。
<――ふう、久しぶりに飛べて、気持ちよかった>
言う傍から、その身体は段々光に散じていく。
「――今更、とやかく言わないが――幸せだったか?」
<充実はしてました。幸せは――これからなります>
そう言う『ミイナ』の横に、『グゥエイン』の形が現れる。
「次は何処へ?」
<さあな――この空から遠く離れた場所ではあるだろうさ>
「けっ、気障ッたらしい」
<たわけ。我の年を考えよ、言い回しが古風にも成る>
おう、笑ってる。笑ってる気配がする。
「おっちゃん!! おねえちゃん!!」
え、ちょ、皆が地上に戻ってるんですが――
「――すまん、シオ、俺、ひょっとして――」
「何時間も爆睡してましたよ」
――うん、その――モフモフで気持ちよかったからだ!! 多分そうだ!!
――って、何時間も?
「――ちょっと無理をしました」
「――良いのか?」
「無いものを在る事には出来ませんけど、散じるのを遅らせたり、戻したりは」
それでもお前、目の下のクマがすげぇよ、すまんかったアウル。
「――どうしても、いっちゃうのか?」
<――お前は、独りではないと、分かっただろう?>
「――うん」
<じゃあ、大丈夫だよね? 君は強い子だから>
「――う"ん"」
だから、鼻水拭けって――
<では、往く>
――もっと何かねえのか、この竜は。
<良い旅立ちに、湿っぽいのは不要だろう>
<――皆さん。その子の事、よろしくお願いします>
そういうと、二人は、『竜』と『鳥』は――
二重螺旋を描くように、光の柱を描いて、天高くへ消えていった。
その残光は、紫色の空に何時までも――
「――やべえ、もう朝かよ――」
「朝だよ、お前らが空中デートしてる間に」
おう、すまんかっ――ベルさん、あの――
「事情の類は後で聞く。今は、寝ろ」
「はい――ってイゾウ――は――」
あっ、簀巻き――
「こいつには先に聞く。いいから――」
「はい!! 寝ます!! 解散、みんな解散!!」
とばっちり受ける前に、逃げるぞみんな!!
・ ・ ・ ・ ・ ・
「――おい」
「――はい」
イゾウを引き摺りながら、ベルは言い、イゾウは返す。
「――命を捨てても、誰も喜ばない、そう言ったのはお前だ」
「――ああ」
「――無茶をするのは止められない、無理をするなとも言えない。
だが、お前には帰る場所が在る。帰りを待ってる奴が居る。
それを自覚しろ――お前の中の犬っころにも、よく言い聞かせろ」
「――正直すまんかったから、足を持って引っ張ら――」
「黙れ」
「へいっ!!」
振り返った顔の、赤い目に、何も言えなくなるイゾウ――
……どうにか、せにゃならんな……
このままって訳には行くまい――
そんな事を、引き摺られながら考えていた。




