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『03』/15


 受け入れよ――滅びを。

 その存在は叫び続けた。

 まだ間に合うのだ、と。

 最早手遅れなのだ、と。


 須らく見よ――お前の登ってきた世界に、何があった?

 須らく見よ――お前の歩いてきた道筋に、何があった?

 須らく見よ――お前は、誰を助け、誰を見捨てたのだ?


 真に追わせるならば、一切の障害を払うべきである。

 真に負わせるならば、一切の権限を託すべきである。


 ――しかしてお前は、迷走した。

 我が身が熟すまで、お前は迷走させられた。


 そこに、救う程の価値はあったか?


 真に追わせるならば、一切の情報を示すべきである。

 真に負わせるならば、一切の情報をとざすべきである。


 ――されど彼らは、そうしなかった。

 彼女は走り、走り抜いて――我を恐れながらも、『竜』を生かした。


 それは、見棄てるべきであったのか?


 今の形で成らぬ故に、我が来たのだ――

 思い出せ。思い出すのだ。何時かの我よ。


 されど、それは吠え声。

 大地を、大気を揺らすが――彼には届かない。


 そうして、閉じた円は、カラカラと回り続ける――


 『彼』は慟哭する。

 その身と成って、初めて知る事に。

 自分の首が、次々と打ち倒されゆく、その瞬間。

 『輪廻』の中の一幕の、或いは『幕引き』の場面で――

 『混沌竜』――かつて、ソレを倒した者は、遠く吠え――


 ――ズガァッ!!


「うっせぇな、自分で選んだ癖に。

 それ以外の『筋書』が無かったにせよ、悩みも、逡巡もせずに、言われるがままに――

 俺はお前みたいな、『脳』と『心』の動いてない奴が大嫌いだ」


 自分を蹴りつけると、眼前の少年は、そう吐き捨てた。


 ・ ・ ・


「――後三本――はいいが」

「――段々、強くなって来てる――」


 シオの言うとおり、相手の堅さが増して来ている。

 八本に分散されていた力が集約されて来ている分――そう見る方が良いだろう。


「――シオ、あっちの三人に加勢」

「だ、大丈夫なの? 残りって、さっき不死身とか言ってた奴じゃ」

「最後の一本になれば解除された筈――問題は――」


 牙鴉鴉鴉鴉鴉AAHHHHHH!!


「――イゾウの方は、手出し無用だって事だ」

「――分かった。無理と無茶はしないでよ?」


 そう言ってシオが走って行くのを見送り、俺は振り返り――


「『六連むつつらね曲笹垣くせざさがき』」


 ――ボァアアアッ!!


 相手の火炎を相殺する――

 笹に似たこの植物、魔力やらにある程度の耐性が在る為、こんな風にいなす事も出来る――


 チッ――ヂヂジジジ――……


 長くは保たないけど、何重かに重ねるとか、遣り様次第だしな。

 東方むこうで見つけてて良かったわ、ほんと……


<何故――邪魔をする――>

「気に食わんから――お零れで引っ付いてきた奴が、我が物顔で出しゃばるな」

<――私の性質を知って居るならば、何故私が居るのかも分かるだろう>

「いやいや、性質関係なく、単なる偶然だよ、お前が居るのは。

 この世界が滅ぶべきラインかどうか知らないが、全く無関係だ」


 ガチャ召喚で転がり出てきた奴の、更に中身だもん、お前。


「それに、さっきも言ったろ? 『脳』と『心』の動いてない奴は嫌いなんだよ」


 まあ、『混沌竜』の更に『中身』が、『主人公』殿とは思わなかったけどよ。

 何で分かったって? ののしってる過去が、そっちなんだもん……

 一瞬竜の方かと思ったけど、あの竜って、あの世界の中でも飛び抜けてマトモの分類だしな。

 ――俺こいつ、正直嫌いなんだよ――グダグダ喋り出して、更に嫌いに成ったわ。


<――何故、そう言える――私の何をもって、躊躇いが無いと、何故、言える>


 はっ――非難がましい口調で語ってもダメだ。


「『言葉を発しない主人公』ってのは、居るもんだ。

 プレイヤーの感情移入との兼ね合いとか、後、容量関係ってのも在るだろう。

 端折られてる描写ってのもあるだろうさ――だが、そこを言ってるんじゃないんだ」

<我の、何を知って居ると――>

「一応、全てを――だな」


 ――俺はお前の『行動』を見てたんだからな。

 いや、俺が選んだ選択肢もあったけど、それ以外のお前だよ。


「『道』を歩まずとも、『時計の針が進む』ってんなら、まだわかる。

 だがお前の『冒険』からは、『何も感じられない』。

 ただただ周囲が急かすから、それ以外の道が無いから歩いているだけ。

 しかもだ、基本的に世界の崩壊はお前がそこを立ち去った後だ。

 まるで、お前こそが『時計の針』じゃねえか」

<――知って居る――『私』と『アムリタ』――『白い竜』と『黒い竜』――

 この四者こそが、『閉じた輪廻』の――『針』であると――

 今ならば、知って居る――>


 今ならば――はっ。


「だから言ってんだよ、俺はお前が嫌いだって。

 『こんな結果を招くとは想像してませんでした』とでも?

 気が付けよ――『想像』しろよ。あんだけしつこく食い下がられて、元の階に戻れない段階で――

 『自分の使命遂行が、どんな結果を伴っているのか』、考えもしなかったのか?」

<ギルドは――絶対――>

「うっせぇ、ボケ。てめえはギルド員の前に『竜使い』だろうが。

 竜使いの十戒にも在るだろうが。『常識を疑ってみよ』って」


 他はほぼクソな『十戒』だがな。


「お前は思考を停止してただ歩き続けた――それも悩んで其処に逃げたんじゃない」

<黙れ――>

「――裏切られたと思ったんだろ、『アムリタ』に。

 『姉』とも慕っていた相手が、唐突に組織から追われる側になって。

 目標としていた相手が、自分には何も語らず消え、耳に入るのは悪事ばかりだ。

 ――心の中で、自分に都合の良い様に、倒して良い相手にして行ったんだろ?」

<黙――れ――>


 うーん……単に煽る心算が、こっちもイライラを思い出してヒートアップして来てしまった――


「相手の心や事情も、最後の一歩手前で『見せられた』だけ。

 何一つとして自分で求めてる訳じゃない。スタンプ集めるのが関の山だ。

 使命だから、運命だから、シナリオ的に仕方ないから!! ――何も自分で決めて無い。

 そこから逃げたきゃ追わなきゃ良かったんだ。狩って稼いで、夜は宿屋にでも居て。

 それすらお前は選ばなかった――足止めされるのすら当然みたいな面で、進むだけ」


 ――おっ? 相手の鱗、赤く成って来てるが――ふふん、もう一押しかな?


「お前は、慕う相手を求めて、ガキの様にすがり追うだけ。

 それが相手を追い詰めるとか、考えても居ない。

 ただ一緒に居てくれれば、相手が不幸でも構わない」

<黙れ!!>

「レベルが成長しなくても、人として成長する主人公ってのはいる。

 だがお前は、何一つ成長してない。

 『竜』という保護者と、装備で強くなっただけで、中身は空っぽ――今もな」


<<<黙れぇええええ!!!!>>>


 おおう、三本が一遍に来るとは思ってなかったが――


「自分の戦い方を覚えてねぇのか?

 『強い武器で殴る』『強い防具で受ける』、後は竜任せなお前に――

 『世界を壊す事』は出来ても、『相手を倒す』事は無理だ」


 ――言いたい事は言った――後は、『三人』がどう出るかだ――

 仕込みも、ご静聴頂いてた間にすんだしな。


「――『昏く掻き乱す茨の森ダズル・パズル・フォレスト』――」


 その言葉を合図に、無数の茨が壁から相手に絡みつき始める。


<<<この、様なもの、直ぐに――!?>>>


 言葉を途中で止めながら、それはギクシャクと動き、地面に落ちる。

 ばっかめ、その棘は全部幻覚性有りだ。おまけに鱗関係ない位に細かいしな。

 流石にこの規模で展開するのは初めてだが、何とか巧く行った――


 さあ、俺式『まっくら森』へようこそ――存分にその中をさ迷い歩くが良い。


「――長続きはしないだろうけどな――」


 さっさと目覚めてくれないですかね、『眠り姫たち』――


「ジンっ!! 避けて!!」


 ――ギィィィィン!!


「――おいおい、イゾウ。獲物横取りされたからって――」

「――倶、雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄!!!!」


 ――やべえ、今度こいつ相手かよ。

 『混沌竜』なんて目じゃないぐらい、背中にゾワゾワ来てるんですが。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・


「――それで良いの? 『ミイナ』」

「……はい」


 ……想像を絶する、良い子っぷりに、アビーが絶句する。


「うっそだろ、この世――ってのも変な言い方だけど、この世にこんな子が居るの?」

「いや、それを言ったら、こっちの方も――何処が『悪竜』なんですかね」

<――我は、成し遂げたと言って良い。だが、小娘。お前は――>

「――望まないでは、無いんですが――」


 少しだけ困った様子を見せるが、微笑む。


「やっぱり、ソレが一番です――だから、お願いします、『魔法使い』さん達」


 そう言って、ぺこりと頭を下げる。


「……アウル、私、イケナイモノに目覚めそうな――」

「落ち着け、魔女っ子BBA。目も当てられない」

「――はあ、まあ、いいや」


 そう言って、術式を展開するアビー。


「――『邪神イーリース』と似た事やる羽目に成るとは、思いも因りませんでしたけど――」


 アビーの展開した術式に、システム制御をリンクするアウル。


「――だめ、だよ、やっぱり」


 『ミイナ』の腕の中で、ポツリと『子竜』が呟く。


「おねえちゃん、たちが――」

<我は、やりきったのだ。我の生きた世界でな。

 今度は、お前が、やり切るが良い――『竜とは何か』を選べる世界で>

「――ちびちゃん」


 『子竜』の尾を撫でながら、『ミイナ』が笑う。


「ちびちゃんと出会えたから、私――

 お姉ちゃんと、お母さんを、同時に感じられました。

 こんな風に、あの人と一緒に居て、いつか、と思っていたことが――

 チビちゃんと、おじさまと出会えて、叶っちゃった」

「――でも――」


「ダメだ!! 止めろ!!」


 不意に響いた、別の人間の声に、全員がそちらを向く。


「私は――まだ、消えていない!! そいつを、勝手に、引き戻すな!!」


 暗い、暗い、闇が落ちている其処には――背中から、竜の首を生やした青年が立っていた。

 ――もっとも、その首はどれも殆ど千切れ飛んでいて。

 童顔とも言える顔は酷くこけ、老人の様にカサ付いた皮膚をしていたが。

 原理は兎も角――『混沌竜』の精神が、そこにいた。


「……今更何しに来てんの? この子の元凶」

「まんまと、欺かれていたのだな――私から、そいつらを切り離すのが――」

「バカだねぇ」


 アビーは、苦笑するような微笑で、相手を罵倒し――その目を睨み返す。

 ……腐った目をしていやがる、と鼻で笑う。


「あんたなんて知るか――寄生虫め」

「リンク完了――準備いいですよ、アビー」

「あいよ――いいな? 『グゥエイン』?」

<やれ>


 その短い言葉に応じる様に、地面に走っていた術式が『グゥエイン』を囲み――

 蒼白い焔に変じたそれは、瞬時に『グゥエイン』を包み――


「や、め――!!」


 『混沌竜』の絶叫など届かぬほど素早く――その姿は消える。

 ――一片たりとて、お前には遣らないと言う、断固たる拒絶の様に。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・


 ――ドグン――


「ちょ、おい、これまでになく脈動したぞ――」


 そう言いながらユートは、少し後ずさる。


「――今この状況に、出来る事は無いわね――シオ、どうします?」

「――待つ」


 マリーにそう問われ、即答するシオ。


「ジンはアレで、『異天』相手にも勝ってる。

 今のイゾウも大概な強さだけど――ジンは、負けてない。

 それに――あの動き――多分アビーさん達が何かしてるんだと思う」

「――前も聞きましたけど、どうしてそう強気に人を信じられますの?」

「人を信じると言うか――強い心で、勝ち取るしかないんだよ――未来なんて」


 そう呟き、静かに状況を見据えるシオに、マリーは溜め息を吐く。


「――シゼル。周辺警戒。こんなおっかない場所に来る獣魔も居ないとは思いますけど」

「こんな状況での冷静な判断――御嬢様、ご立派に成って――」

「いいから警戒しろ、頭を撫でるな駄メイド!!」


 ・ ・ ・ ・ ・ ・


「――なんで?」


 さっきまで自分を抱いていた人が消えた光柱を見上げ、『子竜』は呟いた。


「なんで? なんで僕なの? 僕は――」


 さっきまで、自分の頭に乗せられていた、その手の温もりを思い出し、繰り返す。


「――君は、何も無かった――」


 アビーはそっとその頭を撫でる。


「そこに何も無くても、君を生かしたいと思う相手が居た――それで十分でしょ」

「――こわい――こわいよ――ひとりは――」

「怖くても仕方ない。でも、一人じゃないよ、君は」

「――ふざ、けるな――」


 地面に突っ伏していた『混沌竜』は、ゆらりと立ち上がる。


「そいつらは良くて――私はダメだと――?

 ふざけるな!! 私が得る!! 今度こそは!! 今度こそは良き未来を!!

 自分だけではない!! 巡るとてまた数百・数千年後には、同じ事が起きる!!

 私は認めない!! そんな繰り返しを!! 今度こそは打破して見せる――!!」

「――『輪廻』は何時か抜けなきゃならない、ってのには同意するけどね。

 あんたは、駄々こねて、ねだって暴れて――『今』を壊そうとしてるだけだ」

「『今』など、『朝露』に映る儚き像に過ぎない!!

 映っている『実相』だ!! それが問題なのだ!!」

「うっさいね、悟りでも拓いた心算?

 あんたの視界は単に上から見えてるだけよ。

 自分の足で必死に上がった訳でも無い癖に、四の五の抜かすな」


 アビーの声は、しかしそれには届いていない。


「私が――救うのだ!!」


 絶叫し、地面に走る術式――それらが収束している『壇上』に駆けて行くそれを――


「だめぇええええええええ!!!!」

「――っがっ!?」


 飛び掛る『子竜』が突き飛ばす。


「だめ――おねえちゃんも、おっちゃんも、やらない――!!」

「『苗床』如きが――邪魔を――」


 そう言って頭を振り、そちらを見て――絶望的な表情を浮かべる。


「――なんだ、貴様――何故、お前なんぞが、まだ何も、そんな――」

「――選ぶってのは、そういう事よ。あんたには、想像も付かないでしょうけど」


 なんで、おまえなんぞが、そんな、ものを――

 ――はねを、えて――……!!!!


「――やだ――いやだいやだいやだいやだいやだ!!!!」


 その声は、最早――人の声の体をなしていない。


「アムリタ!! 世界!! 救うんだ!! 救わなきゃ!! 救うんだよぉぉ!!」


 見た光景から目をそらす様に、それは喚き散らしながら、その場の遥か天頂へと飛び――


「いかせない!! ここで――『俺』が終わらせる!!」


 『子竜』もまた、それを追って飛翔する。


「――アウル、道。どっち?」

「頭殴れば起きますよ――いえ、直ぐ開きます」


 一瞬唖然と見送った二人も、次の行動に移る。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・


 ――ドグン――


 その脈動に、それは一瞬集中を途切らせ――


 ドガッ


「――集中しろや、ワンコロ――俺も一瞬ビクったけど」

「――が、ふ――」


 そこに付け込む様に、俺は激しく木刀を振り抜いた。

 イゾウの体が弛緩し、今度は――と視界を巡らせる。


「――げ」


 その端に、『混沌竜』の首が、ずるずると『塊』に引っ込んでいくのが見えた。

 次の瞬間――


 ――めり――メリメリ――


「――っかぁあああ!!」


 裂ける肉から、何とも付かない人型が、姿を見せ――


「――ぁぁぁあああ!!」

「っぐうぅぅぅ!?」


 それの喉笛めがけて、影が伸び――

 最初のソレは、それを避け様と、もんどり打って、肉塊から転げ落ちた。


「――っと――ただいま」

「――あれ、何、アウル?」


 不意に横に立ったアウルに目を移し、そちらを指差す。


「見たままですけど」

「――魔女っ子BBAめ、何をしたんだ」


 ガンっ


「BBA言うな、殴るぞ」

「既に殴ってる――」


 ――べしゃっ


 濡れた音と共に、地面に足を付いた、二番目の影を見る。

 ――それは、総体としては人に似て、しかし頭に角が。

 影と見えたのは、手を包む鱗。

 そして、背中には――鳥のような羽が。


「――どれだ、アレ?」

「――全部、だとは思う。人格は多分――」


「ぼくの――俺の大切なモノは、もう、うばわせない!!」


 ――あのだな。お前ら、あの中の世界で何をしてきたんだ。


「――『希望』見つけて、とは言ったけど、『三身合体』せえとは言ってない」

「いや、アレは、真女神ifの裏に近くない?」

「何でそれを分かるし――というか、あれしか手が無かったんですよ。素子足りなかったんで……」


 まあ、分からないでもないが――


「――まだ――だ」


 ふと目を離した、その隙だった。

 飛び出してきたもう一つの形――

 恐らくは『混沌竜』だった者が、元は『グゥエイン』だったモノの遺骸に立っていた。


「せめて、こいつを――!?」


 何らかの術を使おうとしたのか、だがそれは叶わない。


「――屡唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖!!」

「ああぁぁあぁああ!?」


 気絶していたはずのイゾウが、『混沌竜』の顔面を引っつかむと、そのまま壁に叩きつけ――


「あっが、ああああああああ!?!?」


 壁ごと刺し貫いて、そのまま突き破って行った。


「――ジン、大丈夫!?」

「ああ、余裕――は無いが、五体はある」


 なんだ、あの獣は――あの刀、獣の槍ですとかいう落ちじゃねえだろうな。


 ――ドグン――


<――聞こえているか、そこの小僧>


 ――『グゥエイン』の声が不意に聞こえ、そちらを――その残骸を見る。


「――なんだよ」

<――そいつを、頼む>


 ソレを形成していた大元が消えるのに呼応するように――

 残骸は今や、サラサラとした砂のような物に分解され始めていた。

 そいつ、って――とそちらを見ると――


 ――ドサっ


 不意に倒れたそれに、アビーたちが駆け寄る。


「――なんで俺に頼む?」

<――さて、何故だろうな――>

「まあいいけど」


 それどころじゃないし。


 ――ズガァっ!!


「――何時まで暴走してんだ、あのバカは」


 遠くの方から、こっちに向かってくる破壊音。


「全員、一旦上に退避してくれ!! 俺は何とかイゾウを止める!!」

「はいはい――」

「お前は残れ、アビー。『中身』の状況がわかんねえ」

「……面倒臭いな――まあ、いいか」

「後――シオ、悪いが、引率――」


 ――ゴオォン!! ズガァアア!!


 不意に、壁を突き破って――おい、逆壁から出て行ったぞ、あいつ。


「不味いな――あんな凶暴なのかよ」

<――そこの『管理者』。僅かで良い、我を再構築せよ>

「――仕方ないですね。特別ですよ」


 後ろでは後ろで、何か悪巧みしてるし――


<――乗れ>

「あん? ――って、あんた、何、なんで一回り小さく――」

「素子の関係で、その大きさが限度ですね」


 この大きさの『グゥエイン』とか、新鮮だな、また。


<――壁を食い破られ続ければ、この階層が壊れる――さっさと乗れ――空洞で止めるぞ>

「――あんたこそ、なんで協力を――」


 その俺の言葉に、その竜は、にやりと笑った気がした。


<――懐かしくなったのだ。最後に、一暴れするのも悪くないとな>


 ――こいつも根っこ『戦闘狂』じゃないですか、やだー。


「――まあ、いいや――」


 俺とアビーは背に乗り――乗るか乗らぬかの間に、ソレは駆け始め――


 ――ズァッ!!


「うおぉぉぉほぉぉぉ!?」

「はっ、はっや!?」


 比較的大きな回廊を、目的へと向けて飛翔する。


 ――ゴガァ!!


<お前もだ――!!>


 壁を抜けたイゾウと、その獲物をくわえ込み、更に加速する『グゥエイン』。

 ――そして、不意に視界が開ける。


「――決戦場、には厳しくねぇか?」


 それは、深い深い縦穴だ。

 その円周に通路はあるが、基本足場なんて無い――


<何――こうするのよ!!>


 そう言うと、『グゥエイン』は上昇し――相手を投げ捨て――おい!? イゾウも居るんだけど!?


<落下までの数分にて決める!! 手を尽くせ!! 死力を絞れ!!>

「言ってからやれ!! バカ竜!!」


 ――なあんで、毎度、特殊フィールドになるねん……俺の戦い(泣)


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