『03』/13
RRRRRooooOOOOOHHHHH!!!!
「――元気一杯、って感じだが――」
動きそのものは、酷く鈍い――いや――
――肉体と、精神の反応が、一定じゃない。
「アウル、今の『中身』は?」
「――『混沌竜』の素子が分離して、あれに集約し始めたみたいだね」
「オーケー、返事は無いが、意識は残ってるな、三人――」
「……というか、話しかけたりだけでも『意識』って意外と保持出来るもんなんですね……
というか、確信持ってましたよね? こんな――精神の根性論みたいな遣り方に」
「根性論というか、連中の底力に賭けただけだけどな――まあ、逆に言うと、これが前提だし」
無数の物語を蔵した『記録』の縁者ですもの――
まして、あの連中の『基型』は相応に知っていて――
「――前提――まあ、前提は前提、か。
『寄生者』に過ぎないとはいえ、『宿主』が『抵抗力』示せたら係数変化とか――
何処を如何考えても『精神論・根性論』を出ないけど、『フラグ』なんて、そんなもんちゃそんなもんか」
デバッグモードな視界をもってる奴が隣に居るならな、何ぼでもやってみるわな。色々と。
「よし――ここで切り離したら?」
「――無理だね。さっきも言ったけど、それぞれに独立させるのが困難だと思う。なんとも残念だけど――」
「――手遅れだった、か」
「逆だよ。多分だけど、有無を言わさず倒して居ただけなら、そもそも『混沌竜』があの形で出て来てない。
『グゥエイン』でも『ミイナ』や『子竜』でもだけど――
どれか一つでも完全にパルスが途絶えたら、その段階でソレを吸収して全部乗っ取ってたはず。
……具体的に言えば、『混沌竜』の姿を取らずに、『潜伏』に走った可能性が高いかな」
「――クソ便利だな、その能力」
「『顕現現象演算』は、一般の人間だと脳負荷きついから止めたほうがいいよ?」
「くれとは言ってねえよ――」
こんな会話を交わしている間も、相手――『混沌竜』はギクシャクとした動きだ。
――絶対、中でなんかやってるだろ、あの『魔女っ子』……
・ ・ ・ ・ ・ ・
「――空っぽだな、また」
生命体の体内と呼ぶには、あまりにもガランとした空間に、アビーは居た。
あの『竜』が、生命なのか、それともそう言う風に構築されただけの『何か』なのか――
それらは分からないが――実際の所、なんでもいい。問題は、出口が無い事だ。
「困ったなぁ……まーた多方面に厭味言われるな、こりゃ――」
そんな事を言いながら、歩いていく。状況が分からないのに、大魔術ぶっ放すほど考え無しな訳ではない――
魔術に反応するトラップや、乱反射してこちらに反撃するような仕組みが無いとも言えない――
そんな事を考え、想定して行動出来る辺り、アビー自身、老獪というか、根性曲がりな自覚はある。
「――とは言え、随分と趣味の悪い事してくれるじゃないの」
ちら、と目を他所にやった、次の瞬間――
眼前に、彼女がまだ『普通』の幸せを夢見ていた頃の景色が広がっている。
――17世紀、アメリカ――正確には、また違う呼び名ではあるが――それもまたどうでもいい。
「――あらあら、まあまあ」
――追われている自分が、駆け抜けて行った――後を追う様に、何人かの人間たちが続く。
「――さっすっがっにっね――この『幕』をってのは――」
ふっ、と中空に手をかざすと、その手には――歪に歪んだ一本の鉄の棒が。
「――突付いて良い事と悪い事の区別ぐらい、付けなさいよね」
そう静かに口にすると、唐突に周囲に火が灯り始める。
「『我は森を拓く、この焔をもて、潜める場所を焼き拓く。
我は歌を歌う、その歌を持て、汝らを追い立て狩り立てる。
我は万事を裏切り、汝を裏切るであろう。
遥かなる彼方の時、汝らが許される悠久の彼方にて、我が焼かれ罰される為に』」
その炎は――まるで燃える森。
地から天を穿つ程に燃え上がる炎柱は、彼女の過去の幻影も、それを追う幻影も等しく燃やし、灰にし――
その灰すらも更に焼き締めて、結晶の平原と化していく。
「――やってくれるわね」
その向こうに、一人の人影を認め、そう呟く。
「――でも、相変わらず、夢見がちというか、なんというか――」
その人影も幻影に過ぎない事は、アビーも分かっている――だが、募る苛立ちは、更に言葉を紡ぐ。
「何でもかんでも、思い描いたようになると思ったらね――大間違いよ、ベティ」
その幻影は、微かに微笑んだように見えたが――次の刹那には姿を消す。
「――相変わらずの様で、安心したわ――『夢見る・ベティ』」
語る言葉とは裏腹に、アビーの顔には、凄惨な微笑が浮かび――
「……反応が来た方は、あっちだったわね」
くる、と踵を返し、歩き出す。
・ ・ ・ ・ ・ ・
ビグン、と、『首』が痙攣する。
「――不味い、かな――」
その度、反応が良くなっていく。
まるで――何かに揺り起こされるかの様に。
「当然と言えば当然なんだけど――素子の反応が、集束してる以上――」
「純粋に『それ』だけになって、反応が良くなる、は当然だろ」
「――だけじゃなく、なんかこう――」
「……お前も感じてるなら、単なる俺だけの考え過ぎでは無いな」
そう――まさに、揺り起こされる様に――
『寝返り』や『胎動』的な事でなく――明確な『意志』で、攻撃し始めている。
「さて、んじゃ、それがそうだとすれば――流石に全部は骨だから、適当に誰か連れて来い、アウル!!」
そう言って、俺は跳び――
ドガァ――バスゥッ!!
「――痛っ――って、ジン――」
「ってぇ――おう、大丈夫か?」
相手の予期せぬ動きで吹っ飛ばされた、シオを受け止める。
――カッコよく抱き止められりゃ良かったんだが――
音で分かるとおり、二人して壁と仲良くなっております、俺がクッションになったけど。
「――ごめん――僕、やっぱり、足手まと――ふぃっ!?」
「おー、やわらけー」
いいねいいね、顔は俺とよく似てるが、構造はやっぱり女の子だよね――
――ゴッ
「頬を、つまむな!!」
「――さ、さーせん」
な、なんで俺の周囲の女連中は、俺の目を狙うの?
「ふざけてる場合じゃないでしょ、全く!!」
「――思いつめてる場合でも無いと思うんだけどな」
「――どういう――」
「決まったルートがある訳じゃなし、好きに生きて何が悪い、つってんだよ」
深刻でシリアスなベクトルの中の、大河的ロマンス?
自分が王になるか、姉を王にして自分は観光へ?
冗談キツイ――情勢も事態も、こいつの性根が似てたとしても、そんなルートにはいかねえぞ。
ダダ甘いラブコメルートになってでも、こいつは自由にしてやる、俺も自由にする。
ああ、そうさ、折角の異世界だ。
『ぼっち女王』連れてゼノビア周遊ぐらいしてやんよ!!
RRRRRRAAAAAA――
――ガガスッ――!! ボンッ!!
――AAGGHHH!?
二人の放った『鳥』が、同時にその目に刺さり、爆発する。
「うるせえよ、蛇野郎が。すこし待てって言ってんだろ」
「――息が合わない訳じゃない、か……」
――いや、こんな物騒なので心のシンクロ率測らなくても……まあいいや。
さて――アウルは――
「お待たせ、連れてきた――っても、本当に周囲に居た人拉致ッただけだけど」
おう、誰が来た――
「……勘弁してくれよ、何でお前と関わるとこうなんだ……」
「――グロい――」
「はいはい、御嬢様、しっかりして下さいね」
「――アウルお前――なんてタイミングで……」
ユートとイゾウと――あと、誰だあの二人?
「――あ、シオ!! 何ですのこれは!?」
「……なんでマリーとシゼルさんを……」
「いや、通り掛かったので」
「説明を!! 早く!!」
あ、シオの犠牲者かな、この雰囲気は。
AAAAAAAAAAAOoooooHHHHHH!!!!
「――とりあえず、イゾウは三本な。ユートとそっちのお二人は一本。
俺とシオが残り四本を受け持ちマース」
「マースじゃねえよ――てか、師匠知らん?」
「あー、と――あん中」
――説明雑で悪いが、頭抱えて地面殴る事無いだろ……
「ごめん、マリー、ホントすまんが、力貸して」
「――ちゃんと後で説明しなさいよ?
お師匠様に『修行だから行って来い』としか聞いてないんですからね?
こんな訳分からん状況――」
「わかっ――わかったから、顔近いから――」
「――百合萌ゆる――」
――ダメな人が此処にも居るなぁ――
てか、エルフっぽいけどメイドだし、隙があんまり無いし、どういう知り合いだありゃ……
まあいい、先に、呆然としてるイゾウだ。
「――三本て――」
「いけるだろ、どうせ」
「――お前ね、俺は――」
「昼行灯も大概にしろっつってんだよ。
それとも何処かの赤毛の人みたいに、幕末に戻るのは嫌だとでも?
違うだろお前の場合――」
――そんな不安そうな顔すんなよ。
暴走したら叩いて戻してやるよ――俺も暴走した場合までは責任持てないけど。
「――あんまり、性根の良い力じゃねえんだよ、アレ」
「というか、これ落ち着いたら、ある程度腹割って説明しあう方がいいだろ――」
「――分かった、分かったよ。ただ――出来るだけ近寄るなよ?」
「ああ、それと、アビーが中に居るから、当てるなよ?」
「――何やってんだ、アレはアレで……」
「さあ――ていうか、お前、タイミングが如何とか言ってなかったか?」
「……まあ、仕方が無い事だわな……俺が基本悪い訳だし……」
……アウル、お前、なんぼなんでもベルの前に横入りすんなよ……
……まあ、いい……必要なら、俺も怒られるだけだ。
Gggg……GGGRRRR……
――さて、お待たせ、『混沌竜』。
随分大人しくしてくれて助かったが、時は来たれり、だ。
「悪いが、舞台からハケて貰う時間だ」
<――何故――>
「――言葉通じんのかよ」
<――私は、円環よりの、脱却を――>
「そうかもな――お前は、『この世を滅ぼす』程度の竜だ。
お前はヒンドゥーでいう『カルキ』で――
『この世諸共、この世の一切悪を絶つ役割』なのかもしれない――
――だが、悪い。お前の舞台じゃねえんだ、ここ」
その役割を必要とする世界へと、旅立ってくれや――
ここは、別の舞台で、お前の出番じゃない。
「聞こえてるな!! 『三人』とも!! 後ついでに、魔女っ子BBA!!」
――ドグン――
その言葉に応えるように――
『波動』としか言い様の無いモノが、『混沌竜』の内側から放たれる――
よーしよし、まだ生きてるな。
「こっちはこっちで何とかしてやる!!
そっちはそっちで、『悲劇』の中の希望を捻出しろ!!
お前らを縛る『シナリオ』は無い――ここでは、『自由』だ!!」
そう言って、俺は『混沌竜』に殴り掛かった。
・ ・ ・ ・ ・ ・
さあて、チートなんて生温い事いわねえ。
ここからは――ROMハックのお時間です。
悲劇が好みのシナリオライター。
今から俺が、そのエンディング、
「アヘ顔ダブルピースの」ボソっ
『ハッピー・コンティニュー』にしてやる――って――
「誰だ今要らん事言った奴は!!」
「モノローグがダダ漏れなんですよ、原作レイパーめ」
「やっぱアウルかよ!! なんでそんなメタ擦れしてるんだお前!!」
ホントに唯のオペレーターかよお前!!
――あ、お前もROMハックされたようなもんだったな、そういや。




