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『03』/12


 決定したルート分岐はない。

 大丈夫だよ、な攻略本も無い。

 攻略サイトも無けりゃ、セーブが無いから可能性総当りも難しい。

 『過去転生』しても、そもそもこのピンポイントに着くか不明。


 ――それが、なんだ。

 ――その程度で――お前を『肯定』して貰えるとでも思ってるのか?

 ――たとえ、妥協の上であっても。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・


 その物語の最後の敵は、世界を滅ぼすとされる『最強』で『最悪』の『竜』だった。

 標的が複数有り、しかもそいつらが全員ちゃんと攻撃してくる――

 おまけに演出上の都合上なのか、ヒドラの伝承でも取り入れたのか、一体は不死身だ。

 まさしく、ただしい意味において、『最強』であり、『最悪』だ。

 物語を見て来た観客プレーヤーの心を折りに来ているとしか思えない――


 ――だが、『邪悪』かと問われれば――

 その『世界』を構成する『人間たち』の性根の方が、遥かに腐っていると感じられる。


 物語を進めるに当たって必要な連中との会話は、何とも言えない苛立ちが募る。

 RPGなんてのは、無数の無理難題の解決の積み重ねだが、『依頼者の態度』ってものがあるだろう。

 とある村の村長は、自分の立場をと権威を護る為か、どう考えても嫌がらせのたらい回しを行う――

 その上、策が尽きると「ああ、わが事おわれり」なんて嘆いて道を開けるだけだ。


 主人公が属する『組織』の連中も大概である。基本的に、指令は下すが、ヒントも指針もない。

 ――というか、寧ろ、官僚的な融通の利かなさが、足を引っ張ってくる。

 仮にも『世界の終わり』を危惧して追わせている人間に対する態度では無い。


 それは確かに、ゲームの容量ってモノもあるから、端折っている描写もあるだろうが――

 むしろ、人間の『心理』が腐っているというか――

 ――いずれにしたって、こいつ――『混沌竜』自体のせいとは思えない。


 ――やった事のある人にしか分からない表現になってしまうが。

 『DQ』や『FF』の『敵』達の様な、ムンムンとした悪のオーラも無く。

 『BoF』の様な、気が付けば世界を静かに傾けている感じも無く。

 『マザー2』の『ギーグ』の様な、得体の知れない気持ち悪さも無い。

 さりとて、同作のポーキーの様なゲスい感じも無い。

 近いものといえば、『クロノトリガー』の例のアレだが、アレほど直接的でもない。


 最後の最後に、唐突に姿が露わになり、戦う事になる。


 そう言われているから、邪悪。

 そう描写されているから、邪悪

 そうとしか捉えられないから、邪悪。


 だが――こいつは――

 『邪悪』だから『世界』を終わらせるのか。

 『世界』を終わらせるから『邪悪』なのか。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・


「どっちにしても、今この世界を終わらせる訳にはいかねえな」


 まあ、そんな性能は流石に無いだろうけど、と思いながら、呟く。

 そもそもあれ倒しても、崩壊止まってなかったし。


「――って、ジン!? なんでそんな落ち着いてるの!?

 今、アビー、食べられ――!?」

「あれで死ぬ程、軟な性根じゃねえよ、あのど根性魔女っ子は」


 『目的』があるのに、ただ黙って食われる程楽な性分なら、どれ位いいか。

 その目的の為だけに、死にたく成る様な日々を、粛々と歩き続けてきただろう事は、想像に難くない――

 それも、語る所が事実なら、何百年と――そんなのが、この程度で諦めるとは到底思えない。


「アレを倒せば、ぴんぴんして出てくるさ。

 いや、むしろ、『表』からだと倒し辛いと踏んだのかも――な――」

「…………」


 ――いや、何で不服そうなんです、シオさん。


「――うらやましい」


 ……何がよ?


「――いいな、アビー……」

「……なにが? あれの実力はお前も分かってるだろ。

 あんなんでも、一緒にダンジョン入ると、超一流だしな」


 注意力は限りなく散漫な生き物だけどな。


 GGGGGGRRRRRRRRRR――……


 ――ああ、忘れてないから安心しろ、ちゃんと相――ちょいまて、なんで先に出る。


「おい、待て待て、何一歩踏み出してるシオ、こいつ止めろ、アウル」

「なんで余計な一言を言ってしまうんだ、この人は――」

「俺!?」


 待て、なんだよ、どういう――


「――ジン、ちょっと見てて――僕の二年間、見せるから」


 そう言って、シオは相手に突っかかって行った。

 って、アビーの短距離ワープ習得してるんですけど、なんなんあいつ。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・


「――『雷隼』」


 術を展開する。そこから、雷が鳥の姿を形作って放たれる。

 何本も伸びた相手の首を的確に貫き、爆散するその形。

 ――いける。何時もよりずっと、イメージ通りの動きが出来ている。


 ――だって言うのに、何も嬉しくないのは、何故か――


 そんなもん、理由は分かっている。

 分かっているが――言ってもどうにも成らないんだ。


 自分がどの程度出来る様に成ったのか、それははっきりとは分からない。

 アビーの使った様な大火力の術は、使えないだろう。

 使ったら、その回復まで、ジンの足を引っ張ることに成る――そんなのは――でも、それでも――


 巡る思考の中、シオは相手の攻撃を回避しながら、次々と攻撃を放った。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・


「二重三重のコンプレックス抱えてる状態に、なんで拍車を当てちゃうんだ、君は?」

「ちょっと待て、落ち着かせろ、なんでそうなる。

 というか、コンプレックスって――あいつ、十分強いじゃん」


 いや、ほんとに――ここまで強くなってるとは。

 というか、相手の使った技を、見ただけで真似て使うとか、何この青魔導師。


「判断力、火力、申し分ないじゃん。何に劣等感持つ必要があるんだよ?」

「――君もアビー=ウィルも自覚無いというか何というか――」


 何――なんてウゼェ顔でこっち見てんだお前。殴りたいその笑顔。


「君達は数百歳児だけど、シオは順当に12歳程の多感なお年頃なんだよ?

 まして、アビーには一回コテンパンにされたも同然――

 君には、迷惑掛けるだけ掛けて、そのままお礼も言えないまま数年離れ離れ。

 ……そんな二人が、何時の間にか仲良くしてたら、どうよ?」

「……何、あいつ、嫉妬してんの?」


 嫉妬される要素、皆無なんですけどね――ラッキースケベは何処ですか?


「数少ない自分の『友達』が、唐突に『転校』して行ってだね。

 行った先で自分の気持ちを他所に宜しくやってたら、『むーっ』って成るんじゃないの?」


 ……なんか、無駄に生々しい描写を……

 ……だが、まあ、言われて、改めて自覚した。


 聞く所によるとユートは顕著だし、ある意味、俺やアビーもそうなんだが――

 記憶を持って『転生』した奴って、やっぱり、『普通の感性』からは乖離しがちなんだよな。

 極論、一周分の『年数』のズレが感性にあるんだから――

 元の年数が然程でないユートですら親と折り合い悪いらしいし――まあ、むしろ『志向』の違いぽいけど。


 気を付けては居たし、冒険者と依頼者みたいな仕事上の関係性だと、不便も無かったが――

 ――『転生者』が腫れ物扱いなのも、まあ、分からんでもないな。

 ……まして、世界の『お約束』を『そう言う物』と捉えないで、深く考察するような『フロム脳』罹患者は。

 ……ほんとね。自分が割りと変なのは、元の所で骨身に染みてた筈なんだが――気が緩んでるな。


「――というか、あの子はあの子で問題があるような気もするけどね。

 一人で抱え込み過ぎな気がする――君も同じだけど、君はまあ、そういう奴でそういうものだから――

 ……というか、低気圧の中心に言っても仕方ない」


 さりげにディスられてるが――そこまで甚大な存在じゃねえよ、俺も。


「二年前はそれ聞くどころじゃなかったが――お前から見て、『シオ』の印象って、どんななんだ?」

「んむ――分かりやすく言うなら、『擦れてないカチュア』」

「……『Tオウガ』ぁ……」

「まあ、思いつめやすい、ってとこだけピックアップすると、だけどね」


 対応誤ると、刺されて死んだりすんの、俺?

 というか、何故あのシステムのシナリオでは、最終的に誰かが誰かを刺すんだ……


「――というか、『混沌竜』どうにかしなくていいの? 折角アビーとシオが躍起になって戦ってるのに」

「――あの頃のRPGのラスボスの倒し方――それに、グッドエンドの見方を知ってるか?」


 ……シオの事は、後で甘やかしてやろう……と思いつつ、俺は答える。


「1.条件が整わなければ、『本体』に攻撃が届かない。

 2.条件が満たされていなければ、そもそもその段階まで進めない。

 3.もっと手前の条件を満たしていなければ、グッドに行かない。

 ――さて、問題です。この状況のグッドは?」


 『要らん要素』が『乖離』しだす、までは行った。

 次は――あらゆる手段を試すターンだ。

 ――おまけに、暴走したお姫様の説得と、囚われた魔女っ子の救出イベ含み。

 ――くわえて、相手の段階が不明と来た。

 はっはっは、なんて有様だ――大惨事スパロボだ、ワロス。


「――ま――やるだけやりますかね」


 根性黒い奴の遣り様を見せてやる。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・


 ――それは、目覚め――

 本能的に挙動する中で、次第に、覚醒しつつあった。

 自分が『苗床』とした者の痛みや悲嘆が、意識を鮮明なものにしていく。

 自分の――否、まだ、完全に自分のものでは無い――肉体に走る痛みが、それを更に研ぎ澄まし――


 ――なんだ――こいつは――


 ――視界に捉えた相手に、何故かはわからない『感覚』を感じ――急速に、意識が明瞭に成り始める。


 ――gggGGGGRRrrrr――


 はやくはやくはやく――身悶えする様なじれったさが、喉を鳴らし――

 ――そんな挙動では――直線的過ぎる動きに、懊悩を感じ――


 それは一度――その眼を全て、それに向け――

 ――相手のえもいわれぬ笑顔に、さらに、その感覚を強くする――『不快』、そう、『不快』を。

 何故なのかは――全く分からないまま――


 ・ ・ ・ ・ ・ ・


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