【10】trafic--00
『六星連』の『歴史』は古い――
『帝国』建国と同じ、凡そ千年の時を閲して来たのだから、言う迄も無い事では有るが――
ここで言う『歴史』と言うのは、そちらとは少し異なる。
『大破壊』とか『大冬期』とか、『フィンブルウェトルの冬』とか――
そう言ったかつての『文明の断絶』から、しぶとく残った『遺物』や『文化』の断片。
そう言ったものが、其処彼処に見受けられる。
ある種、幾度もの文化の更新によって消え去って来た大陸側よりも多く残っているとも言える。
これは『六星連』が、島嶼の連合国家だった事も関係しているだろう。
『帝国』が敷いた網の目の如き『石敷きの街道』は無く。
『文化』を無理矢理に均質化しなくては成らない程の摩擦も無い。
――『流通』の緩さが、『摩擦』を発生させる程で無かった、とも言えるし――
それは同時に、『旧跡』を『開拓』してまで発展出来なかった――
――或いは、『させなかった』、とも言えるのかもしれない。
――ともあれ。
大陸側から初めてやって来た者は、『市街』と『それ以外』の景色の差に、目を剥く事となる。
――有体に言えば。
『六星連』は、開発されている所意外は、基本的に――『ド田舎』だ。
・ ・ ・ ・ ・ ・
――その田舎道を、一つの人影が歩いている。
背丈は然程高くなく、まだ少年といっていい。
髪の色は、紅葉した楓の様に赤く、背負う雑嚢はパンパンに膨れ上がっている。
……だけではなく、両方の手にも、そこそこの荷物を抱えて歩いている。
「――あんのバカ、荷運び用の物造る為に俺に荷物運ばせるとか、どういう流れだよ。
――つうか、改造に着手する前に、要るだろう物買って来てからにしろよホント……」
ぶつくさ言いながらも、その歩みは決して迷いが無く進む。
……まあ、迷い様も無いと言えば無い。
何せ、ド田舎な光景の『六星連』と言えども、比較的開発の進んだ島――その平原部だ。
遠景に、幾つかの廃砦と森――そんな緩やかな丘陵帯。
その中の砦の一つを目指して歩いて――
――ビッ
――目指す場所の方に、『光』が走るのを見かけ、足を止め、深々と溜め息。
「……何造ってんの、あいつ……つか、目立つな、つってんのに……」
あからさまに『光銃』の発射残光なそれを見ながら、足を進める。
少年の名は――
・ ・ ・ ・ ・ ・
「――と言う訳で、だな――」
――場所は少し変わる。
港町『イキトス』の、食堂と言うには少し高級そうな店で、三人の人物が対話している。
「すまんが『ジン』は捕まらんかったよ。そんなに僻地に居るとは思わんが――」
「――まあ、急な話であったし、仕方が無いな」
「うむ、そう言って貰えると助かる。引き続き探しては見るが――今日の今日では、無理だろうな」
「……繰り返すが、急ぎでは無い。気長にやってくれ。急かして更に禿げられても困るしな」
「ちょ、ベル様!?」
幾らなんでも、と慌てる少年を見て、相手の男性は笑う。
――ベルは、さして気にもせずに、供された物を飲んでいる。
「んん? 気にするな、エルス君。どちらかと言うと――」
「この人の鉄板ネタという奴だ。弄られんと逆に寂しそうにする位でな」
ヒキ気味に成ったエルスの顔と、疲れが見えるベルの顔を交互に見――大仰にペチリと額を叩く。
「――大変だった様だな、ベル『代行』。
以前会った時よりも、随分と大人びた顔――というか、疲労の抜けん顔に成ってしまっている」
「……そちらこそ大変だっただろう、フェルゾ殿。
エルスからの急報で、中央から慌てて引返して来たのだが、それでも少し時間が掛かった。
……面会を断られる程に具合が悪いとは思わなかったが――そんなにも、加減が悪いのか? 『総領』殿は?」
ベルから返ってきた言葉に、うむむと唸る。
――『総領』とは、この場においては『六星連』の長――ルオーラン家の家長だ。
縁故の関係とはいえ、『他国』に一国の長の健康の状態を洩らすのは――
そう思いつつも、まあ良いか、ベルトーリエ嬢だしな――と、フェルゾと呼ばれた人物は結論した。
先代エスターミアの頃から、この娘はこの娘はその辺り、分かり易く『味方』なのだし、と。
「……良くは無いな。元々、『弟殿』と違い、蒲柳の性質ではあるし、激務に心労も重なってな。
今日明日にどうこうと言う事は無いし、代理も息子殿が立派に勤めては居るが、当人の健康は余り戻っていない」
「――矢張りそうか――余り、長くは無い――そう考えて置くべきでは在る、か」
矢張りラハルド卿の直弟子――容赦の無い観察と同時に、本気で悲しんでいる。
政治家としては感傷的に過ぎると言えばそうだが――師弟共々、自分には好ましいと感じる。
――同時に、相手が困ると分かっていても、聞かねばならない――と、口を開く。
「……さりとて、直ぐに直ぐ、『四位』殿が会いに来る事も無理だろう?」
我ながら嫌な事を聞いている、と思うフェルゾに、ベルは深々と溜息を吐く。
「……すまんが――下手に動かせん。色々と勘付かれ始めた様でな」
「『居所』をかね?」
「ああ――もっとも、直接面会に行った所で、親兄弟でもなければ会えんから、そちらは大丈夫なんだ。
問題は寧ろ『療養している筈の場所』を、中央で漏らしたバカたれが居たようでな。
『療養』を名目に『隠棲』、と強弁してきたから、『ブン屋』が張り付くのを当て込んでなのかもしれないが――」
「……『誰』、とは当てないのが華だな」
矢張り、そうよな――と考えるフェルゾ。
先代――ラハルド=エスターミアが居なくなってしまえば、それは蠢動するだろう。
ラハルドという頭一つ抜きん出た男の、風下にも立てなかった様な連中が。
「あれこれと手は打っているんだが、『海を渡る』迄は、少し目に付き過ぎるし――
もう一つ厄介なのが――『学園』に言うべき『理由』が無い――『身内』がほぼ居ない『設定』なのでな。
……入る段で『家名』を借りたから、その縁戚、と言う事で動けなくは無いが、あそこもどうも――」
「……まあ、きな臭い事は、少し聞いた。詳細まではこっちには流石に届かないがね。
職員、教員の類に、何処か寄りの立場の者が居ないとは限らない、だろうな――」
流石だな、と目を向けるベル。
「これで、もう少し威厳のある人なら、素直に尊敬出来るんだがな……
――『イキトス太守官』――トーレントス=フェルゾ殿」
「尊敬なんぞ要らんよ。一々畏まられたら、話が進まんから。
儂自身は、精々が『人の良い若禿』位の気安さでいいのさ――『儂』とか使う位で精々よ。
まあ兎に角――……『フェルシオン』様が『伯父上』に面会は、無理筋――だな」
「すまんが――」
心底申し訳なさそうな顔のベルに、いやいや、と笑いながら返すフェルゾ。
「儂が勝手に言っただけだ――と言うより、そこらは『総領』殿も分かって御出でだよ。
――しかし、なんと言うか――ラハルド殿は兎も角、その縁戚とは矢張り感覚が合わんな。
『伯父』の病床に個人で見舞いに来る位、なんて事も無いと思うのだがなあ……」
「……まあ――無理押し出来なくは無い。ただ、後が続かんな。
『身内にすら姿を隠していながら、外の縁戚には会いに行くのか』、等となり兼ねん。
『保護者の監督不行き届き』とか私が言われる程度は別に構わんが、余り煩いと当人が居なくなりかねん……」
「――居なく――」
「言葉通りだよ――『シオ』自身、頭の良い故の責任感で耐えている。『立場』を弁えてな。
だが同時に、頭が良い故にやいのやいの言っている連中の『程度』も分かってしまっている――
……だから、本当の所を言えば、『ジン』にはそう言った――『心の安定』に成って貰いたいのだが――」
「……君にとっての、イゾウの様な、か?」
その言葉に少し顔を赤らめるベル――その目が、すっと細くなり――
「……同時に、それが一番厄介、とも分かっている――だから、直ぐに直ぐで無くてもいい、なんだ」
「――分かった、分かったから、その刺す様な目は止めてくれ」
しまった、踏み込みすぎた、と目を逸らすフェルゾ。
「――しかし、話を聞くに――『ジン』の事は随分と信用しているのだな?」
「――うん?」
「いや、『フェルシオン』様が『信託』した、とか言ってもだな。
言うて、会ってから一日にも満たんのだろう?
『フェルシオン』様は惚れたのやもしれんし、イゾウはあの通りの男だから別として――
ベルトーリエ嬢、君は別段、其処まで『ジン』を信じる理由が見えんのだが」
「……逆に聞きたいが――フェルゾ殿。貴方こそ何故に『ジン』を買っている?」
「――まあ、一番は――」
――ふぅ、と溜息を吐く。
「……当人が何者であれ……あの暴れ馬の手綱を、離さずに置いてくれるだけで、な……」
「――いや、まあ、その――噂は色々聞いているよ、色々とな……」
政治経済の話題より遠い眼をする『六星連』の重役に、流石のベルも同情した。
・ ・ ・ ・ ・ ・
「どうぉでぇい」
……手近の物から改造しただろう物を構え、ご満悦の少女と――
「おお~!! すっげ、すっげぇ!!
見たかザミー、これが『ニッポンの職人技って奴だぜ!?」
「いや、絶対違う、『魔改造』の分類でしょこれ、何今の貫通力!?」
――一緒にはしゃいでる、この二人は何方だ?
「『収束』載っけると、点の範囲が縮まる分で密度も上がって、単純に『鋭く』は成るんだけどね。
貫通力は高まるけど、一緒に一発頭の照射時間も延ばさないと、『殺傷力』が低くなっちゃうんだよなぁ――
というか、『へんたい』て――褒めてるの、それは? 『外来語』は今一わからないんだけど」
……扉を開けて入ると、壁の一部が赤熱して穴が開いたそれと――はしゃいでいる三人。
――チグサが読めないのは『血』だから諦めも付くが、状況がいまいち分からん。
……つか、この二人誰よ、一人は人なのか怪しいデータしてるし……
「おう、こら、チグサ。何しとるんだお前――あとそちらは?」
「おう、おけーり。リストの物は有った?」
「『魔精結石』だけ無かった。掘りに行かないとダメだな。で、どちらさん?」
「やっぱりかー。大陸に大量密輸されてる疑いあるとか、やっぱ事実かなー」
だから、誰よ、その二人――おお、不明な方が頭を下げて――名刺?
「こんにちは。私、こういうものです」
「――『第7代ザミエル』さんですね、どうもご丁寧に。カスパールでも掘りに帰ってどうぞ」
「えっ?」
「……帰りたいけど帰る術が無いんですよねぇ……」
「――ご愁傷様、こっち置いておくからな、チグサ」
「おい」
「雑に扱うなよー」
「注文が多いわ」
「書類上とはいえ義理の妹のお願い位ききたまえよー」
「うっざ」
「……この子も大変な子か――」
「――じゃねえだろ!!?」
なんだよ、乳のデカイおっかなそうなお姉さん。荷物下ろさせろよ。重いんだから。
「お、おま――コレ知ってるのか!?」ガシッ
「コレ!? 一応大悪魔をコレって!? あと痛い、無駄に痛い!!」
「うるせぇなあもう、どうせあんたも『転生』だか『転移』だか知らないけど『渡界者』だろ?
シャチョーも何か釣ってたし、お腹一杯だよ俺はもう――つか、ザミエルって無駄に渋いんだよ、分からんだろ」
「――えぇ――? 『しゃちょー』て、ええ……?」
「――Awesome!! うっそだろ、いきなりかよ!?」
……何ですか。あの半分『|最低野郎共(ボTムズ)』パーティの知り合いですか。
……まあ、荒れ狂ってるの、あの人だけだけど……あのキャラ振れの無さ、歪みねえな(呆れ)。
「おいザミー、だから言ったじゃん、さっさと島渡るべぇって!!
あんなもぐら叩きみたいな転戦、する必要なかったじゃんかよ!?」
「依頼の報酬を夜毎のお酒に変えてたのあんたでしょうが!?
そもそもその転戦、あんたがいきなり派手にやらかすからだし!!」
……苦労してそうだな、そっちの悪魔、だが、帰ってくれ(懇願)。
もうこれ以上お守り対象増やさないでくれよ……
「ところでジン。例のアレ、出たんだけど」
「――怪我は?」
「無いよ。まあ、『案山子君』が数体ダメになったけど。
推測通りというか、一応の誤魔化しは効くね――耳に来るから、あんまり使いたくないけど」
……発案したの俺だけど、アレで欺瞞効くなら安いもんか――嫌、材料費はそこそこだけど……
「あと、そのお姉さんたちに助けられた訳なんだけど。
――あれの見た目にそんなに驚いてなかったから、知ってる人だと思うよ、後、ご飯」
「…………」
……そこの『手四つ』してる姉さん方にも、ご飯作んなきゃダメな流れかよ、これ……
・ ・ ・ ・ ・ ・
「類は友を――と言うからな。同時代に、アレとアレが居合わせた以上は、友人と成るまでは分かりきっていたさ」
「――ああ」
「そんでもって、男と女だ。色々な部分で隔たりはあったが、そもそも気にする性根で無い。
あそこまで全てが噛み合っていたなら、こっちの口出しは野暮――と言うか、言い負かされたしな」
「……はぁ」
「そんな技術と論理のバケモノ同士、その子が『普通』な訳ゃ無いだろうが……なあ……」
「……御苦労されてるんですね……」
心底から同情する様な振り回されっ振りを聞かされ、乾いた笑いのエルス。
……自分もまあ、状況を引っ繰り返してしまう無茶な人には当った。
イゾウだったり、目の前のベルさんだったりする。
……だが、正直、この人の身内の暴走振りは、まだ顔を合わせていない『ジン=ストラテラ』を思わせる。
『六星連』に来る船の中で、色々と聞いた。
『六星連』が技術立国なのも、ここ数年の業務手伝いで学んだ。
だがそれでも……門外漢の自分にも分かる――その技術革新は、『それいじょういけない』、と……
どこの通りすがりの技術屋が、エルフ連中すら放棄していた『旧い灯台』の再起動と改修をやれるものか……
……それも、ほぼ同時期に、示し合わせもせず、別々の場所を――『イキトスの統治圏の中で』。
正直、統治者としてどうこうと言うより、その事態をどうやって取り繕ったかが不思議なレベルだ。
そんな、一人で状況を化けさせてしまう嵐の様な人物を、身内に一人どころか、二人も抱え、それが夫婦。
更に悪い事に、どうやらその娘、即ちは『姪っ子』は、才能も掛け算だが『ネジ外れ』振りも掛け算。
……この人が、胃に穴が開いて死んでないのは――馴れだろうか……
「――よくまあ、『神の枝』が動かなかったな」
「やれる限りで秘匿してたのさ――当人達も表舞台からは引いていたし。
それが逆に、『危急』が外へ漏れ辛い状況を造ったんだから、皮肉は皮肉だが。
――その状況に、『ジン』が偶然とはいえ噛んだが故に、姪だけは救われた。
――奇縁と言えば奇縁。同時に、信頼するには十分だろう?」
……ある種、こっちと同じ、か――ベルもそう思ったのだろう。特に何も言わない。
「実際の所エルフだとかが、どの程度までアレの『種子』や、サクの知識そのものを狙って動いたのかも分からん。
……まあ、正直、サクの方に関しては過去を殆ど語らなかったから、『エルフ』側からの抜け者とも思えるが」
「――サク、というのは――ややこしいな。『先代』の『韓志和』の本名か?」
「まあな。そう呼んでくれと言うから便宜的に使ってただけで、本当の『本名』かまでは知らん。
当人曰く、『こちらに来るまでだけでも数え切れん名を名乗った』とか言ってたからな――」
まあ、ともあれ――と、仕切り直すように咳払いをするフェルゾ。
「今の所、そちらを余り食い込ませる訳にもいかん裏事情だから、簡易にだけ言うが。
要するに、こっちはこっちで、『力』を巡るいざこざが水面下で在ったのさ――力とは『技術力』だがな。
『ジン』という少年はそれに巻き込まれて――見事に姪っ子を救ってくれた。
流石に、サクの方は無理だった様だが、そもそもで病を得ていたとも言うしな。
だから、目を掛けても居るし、頼みにもしている――あんな年若に、背負わすモンで無いと分かっているがな」
「――だが、所在不明、と――」
ベルの冷えた視線に気が付いて、ぽりぽりと頬を掻くフェルゾ。
「……保護者失格と言われればそれまでなのだが、チグサ自身、そういう育ち方をして来とるからな……
言った通り、サク達は『手持ち』をどこぞから狙われた関係で、隠遁放浪が日常だったし――」
「……いや、その……すまん……」
「大人しく『保護』されていてくれたのは高々三日、何時の間にやら工具だけ持って消えていた。
『連れ去られた』だろう『ジン』には、本当にすまんとは思うんだが――あれ一人でよりは、マシかな、と……」
「…………」
「――『悲しそうな瞳』で見んでくれい――」
……軽い皮肉の筈が、予想の数倍エグイのを感じてしまったベル。
「……正直、儂が一番不本意っちゃ不本意よ。
国内の足並みが乱れている所に、のこのこ表舞台に戻ったらば、取り合いが始まる――それは必然。
だから当人が姿を隠す、何ていう行動を取らせた、自分の不甲斐無さもだが――」
「…………」
「――街から街というならまだ話も分かるが、廃砦だのを転々とって――仮にも、フェルゾの家の子なのに……
――まあ、放浪・家出癖は、マリー譲り故に諦めるしかない。サクも捕まらん奴だったし。
だがな、上宛に理路整然とした『報告書』まで提出されて、自分で解決すると言われたら、儂は何をすればいいよ。
実際問題、やれる事何ぞ、知らん振りでの後始末ぐらいのもんだ――
下手に手出しして火傷するバカが出なくなるまで、彼方此方からの皮肉に耐える……
――ああ、サクとマリーの頃から同じか、ははは……」
「…………」
……そら、禿げるよな、と、変な納得をしてしまったエルス。
当人自身は、そういう破茶滅茶を面白がれる性格では在るのだろうけど――
どう考えたって、色んな方面から厭味言われて突き上げられてる可哀想な人だ……と……
「……と言う訳で……済まんが、本当に居場所は知らんのよ……
まあ、逆を言うと――そうやってこっちにまで悟られん以上は、ある意味で安心出来るとも言えるのだが。
下手に当たりがつくと、『数が少なかったのが原因』とかで動くバカが出ないとも限らんし……
今度下手にどっかから手出しされたら、『山火事』で済むかどうか……」
「――それでも、信じれるか」
ふっと漏れたベルの言葉に――
「――お前さんが、イゾウを信じるのと、理由は同じ所さ。
――どんな被害が出たか、というのと、どんな因果があったのか、それは別の物だ。
イゾウが一部で言われる様に、『三番の崩壊』に噛んでるとして――
『ベルトーリエ=ナハルを救った事実』も消える訳ではないだろう」
「……そうだな」
一つ息を吐いて、ベルは続ける。
「――こちらは、こちらの事を、潰す」




