表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/388

【01】『空見る人々』Ls1393-03


 ――例えば、ある日、偉大な君主が身罷ったとしよう。

 それも、老いとか病に臥してとか、或いは戦場に赴いてとか、そう言った『起こり得る』状況ででなく。

 唐突に、突然に、予想外に起きてしまったのなら。

 如何に慕わしい君主であったとしても、『喪』に服している場合ではなくなる。

 その能力と、声望が高ければ高い程――突然に地面に落下した時の『音』や『衝撃』は巨大になるのだから。


「――でも、まあ……準備も何も無しで、被害も段違いな割りに――巧く治まったのも、その声望故、かな?」


 街角の掲示板に貼られた、『四位代行』名義の布告を見て、アウルはやれやれと溜息を吐く。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・


 エスターミアのとある街――その停車場で、私はこれを記している。

 状況の錯綜著しく、整理をしなければ――そう思ったのだが、どうにも整理がつかない。

 私は別に頭は悪くない筈なのだが、『考察』というのは本来の役割でない為か、上手く纏まらないのだ。


 件の一件から、凡そ二週間――その混乱も少しずつ落ち着き始めた。

 落ち着かざるを得ない、とも言えるだろうが――

 あの一件――『大断裂事件』と通称され始めている一件について、真実を知っているものは殆どいない。

 同じタイミングで大陸各地で事件が起きていた為、調査の手が回っていないと言うのもあるだろう。


 バーフェルブールでは領主館への『災害』――『廷臣派』はそう強弁している――により、大公の消息が不明。

 ――まあ、恐らくは死んでいるだろうが――

 三大公家の内、二つで同時に『仔細不明の死』を出す訳に行かないという、『帝国』自体の思惑だろう。

 ロアザーリオの街道周辺では『爆発』――これは恐らく、花栄さんがやってきた件の洞窟だろう――が起きた。

 むしろ、こっちの方が『災害』に近いだろうが――

 衆目から見ればどちらも、『魔術結社』による『同時多発テロ』に見える様に、世論が動いている。


 そういう風に情報統制を行っている、とも考えられるのだが――

 実際の所、社会の上の連中、『貴族』とか『聖樹教』も、完全な詳細を掴んでは居ない様に思う。

 詳細なデータを収集しているだろう、『神の枝アールヴァン』は或いは、か――

 ――それでも恐らく、データからの推測がやっとだろう。


 この事態の根幹が、高々一人だと確信出来ている者など、居ないだろう。


 『ジン=ストラテラ』。

 本名――いや、前名、『ミナキ』、あるいは『シオ』。

 今回の一件の、『目』は確実に彼だ。


 彼は――これまでの中で何度か触れているが、その構造その物が奇怪極まる構成をしている。

 『そもそも混ざってるって何だ』とか言わないで欲しい、私が一番突っ込みたい。

 『邪神』の転生者によって崩壊を留められ、何の因果か、この世界へやってきた存在。

 路傍の草に転生し、そこから粛々と繁茂し――そして今や、事象の中心。


 端的に言えば、『邪神』の申し子の彼だが――あの人に、そんな意図があったかは不明だ。

 その行動し始めるトリガーと成ったのは、どちらかと言えば偶然――『魔王』と『勇者』の衝突だ。

 あの二人が、あの場所で事を構えたのが、どの程度の介入によって成されたのかは不明だが――

 ジンそのものは、生存本能を刺激されてはじめてモソモソと動き始めた、といっていい。


 行動開始以降の事も、どちらかと言えば『流され型』の主人公でしかない。

 『賢者』が居なければ、外に出て、ではさようなら、だったろう。

 『情報集積帯アーカイブ』でも、『邪神の残骸』が出てこなければ、自分に再び転生して繁茂。

 彼が、明確な自分の意志で行動を開始したと言えるのは――

 遥かな昔の死に行く邪神の体へと転生し、そこから『自ら』を放った、あの行動からだ。


 ――そこまで考え、ふと思う。

 一つ、一つ、また一つ。

 積み重なる様に、『通常』とは異なる事が重なっていく。

 そして思う――彼は、歴史の中に時折現れるような、『特異点』の類なのか、と。


 『特異点シンギュラリティ』と呼ばれるに相応な影響は、確かに与えている。

 彼の軌道が、起こっていなかった事を起こしているのは事実だ。


 それと同時に――いやまて。それを言うならば――とも。

 この世界は現時点、『特異点』たる連中に満ち満ちているのではないのか?


 例えば、以前――やって来た方の『歴史』を振り返るならば、『異天』連中。

 彼らは、今回の戦闘でこそ振るわなかったが、私達がやってきた『未来』では一つの国を裂き――

 その上で再度一つの旗の下に、権力と人心を集めている程の影響力だ。

 今回は、時期が早かった故、と考えれば、その存在は軽んじられない。


 そして――『フェル=カハル』。

 ジンにはぼかして伝えたが、自分には、彼女が後の『魔王』であろう確信がある。

 容貌の酷似もそうではあるのだが――もう一つの理由がある。


 それは、順序が逆転し――しかし、その逆転も打破されている事。


 あの『歴史』の『魔王』と『勇者』が、『代替』と呼ばれていたのは、その『前』に当たるそれぞれが消滅した為。

 ジンはまだ詳しく読み込んでいない、あるいは状況を知らないから気が付かなかったのだろう。

 『正史』、と呼ぶべきかは分からないが――そちらの『私達がやってきた未来』では、こうなのだ。


 『フェル=カハル』は、五歳の時に、『樹の巫女』に捧げられる。

 それが数年の後、内在魔力の増大で、維持が不可能となった為、次が選ばれる――

 そう、その『次』こそが、ベル姉さんこと、『ベルトリーエ=ナハル』。

 この時何が起きたのか、詳細は不明だが、『第三柱サードピラーの大崩壊』と呼ばれる事件が起きている。

 悔やまれるのは、自分にはその辺りの魔力変遷のデータが無い事だ――

 だが、兎にも角にも、周辺数キロに渡る大崩壊が起き――

 その残骸に、『遺物01』『遺物02』と呼称される、『勇者・代替』と『魔王・代替』が残っていた――


 これが、『正史』で起きた、というか、起きる事だ――個人名称こそ異なるが、恐らく大局に変わりは無い筈だ。

 その後に、『賢者』と呼ばれる事になる『知恵の異天』に二人の教育が任される事になるが――

 これは恐らくは本筋の意図とは関係の無い事だろう。

 エルフ連中では御し切れなかった、それが恐らく真実だ。


 兎に角重要なのは、『本来の魔王』であろう人間が、そこに現存している事――


「――困ったな――そうなると、イゾウさんが助ける以前から、既におかしいぞ?」


 考えながら、その違和感に気が付く。


 イゾウの出現した時間軸を追って気が付いたのだが――

 最初にベル姉さんが囚われていた段階に出現。

 それによって『第三柱サードピラーの大崩壊』が発生。

 その際の時間異常の為か、五年前に出現し、フェルを救っている。

 だが、『第三柱サードピラーの大崩壊』は、この軸では七年前に起きている。

 つまり――フェル以前から、彼女は囚われていた事になる。


「……ああ、まあ、追う意味無いか――『帝国』の建国段階からしくじってるし」


 そう――『正史』なら磐石の筈の『帝国』は、建国段階から既に水入りなのだ。

 本来なら、弟を下した初代皇帝は、その勢いで東方島嶼に攻め入り、下すのだから。

 宮廷内の権力闘争のログなんてものは流石に無いので、なんとも言いがたい部分も有るが――

 まあ、磐石に運営して見えるだけで、常に危うい舵取りだったろうとは想像が付く。

 そして、その中で権力を欲した者が居たとすれば――手段は問わないだろう。

 例えば、自分の娘を『樹の巫女』に捧げる、位の事は。


「てなると、やっぱりあの人のせいじゃんか~、何やってくれてんのさ~……」


 どこかへすっ飛んでいった、旧・草の存在を思い浮かべる。

 タンポポかなんかか、あの人は。風が吹くたび、あっちへこっちへとまぁ……

 そもそも、『虹星イーリース』なんて存在で呼ばれてる事すら分かってるのか分かってないのか――

 『ちょっと通りますよ』で何億人に影響出してんだ、あの草!!


「止めなかった私も私だが――『邪神イーリース』が聞いたら、腹抱えて笑うだろうなぁ……」


 頭痛くなってきた……と思い、帳面を一旦閉じる。

 『邪神』に起こされて以降、めちゃくちゃだよ、全く、と。


「……もっと頭痛い人も、一杯居るだろうけど」


 ――例えば、この一件の、『攻め手側』。

 企画立案した者ですらも、ここまでの大事は想像し得なかっただろう。

 ――ましてや、其処に巻き込まれた者の苦労たるや――


 ・ ・ ・ ・ ・ ・


「此度の一件の後処理、諸侯に有っては、まことに良く働いてくれた」


 一段高い壇上から、居並ぶ諸侯に向けて言葉を発する男。


「追調査は必要だが、それは各家で行うものとする。必要と判断したら、刑部も動かすがな。

 現時点、様々な憶測が飛んでいるのは我が耳にも届いているが――

 それらこそが、我が帝国を混乱に陥れんとする策謀である恐れも有る。

 諸侯に有っては、軽挙妄動に走らず、日々の公務を粛々と行う事を願う」


 その言葉が切れ、その座から立ち上がるのを見、諸侯は頭を垂れて見送る。


 その末席で、レジナールもまた、頭を垂れた。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・


 ぎりぎりのラインだった――帝都『エイバロニア』の行政府の一つ、その一室から出ながら、溜息を吐く。

 『一位の皇継エノ・カハル』から、事態処理は一任するとの言質は取っていたが――


「レジィ――と、すまん――カウランドール卿」


 声を掛けられ、振り替える先には――


「――『デュラ=カハル』殿」

「おう。ちと話がある。内々の話だ」


 まだ騎士見習いにしか見えない、しかし、武人然とした少年が話しかけてきた。


「話ですか」

「ああ。ちと面を貸してくれ」


 そう言いながら自分の部屋へと向かう少年に、レジナールも従い――

 そこまで長い距離を歩かず、目的の部屋へと。


「適当に掛けてくれ。ベルッケンの茶で良かったか?」

「――ええ」


 言いながら、手ずから茶を準備し出す。

 ……立場の上では止めるべきなのだろうが、止めて聞かないのも、良く知っているので、そのままにする。


「――率直に聞く。今回の事、どの程度まで知っている?」


 カップを前に置きながら、本当に率直に聞いてくる――


「――エスターミアの代替わりを企図して、バーフェルブールの前大公が動いていた所までは。

 計画の青写真は知っているが、細部は不明、といった所です――何処にどういった依頼、命令、などは、皆目」


 レジナールもまた、率直に応えた。

 事実、彼の知っているのはその程度であり、自分は『召喚器』の調整に注力していたのだし――それに――


「そうだろうな。『叔父上』はそういった事は自分の手の内だけでやる御方だった」


 くくっ、と皮肉気に笑うこの少年に、その手の偽りは無用の事だろう。

 それだけの日々を、歩いてきたのだから。


「となると――俺がエスターミアの緊急統治に入ったのは、悪手だったか?」

「いえ。口さがない噂など、一時の事です――というより、『廷臣』から回すと、後々がややこしくなります。

 それだったら、テーブル叩きつけて脅してでも、『武人』勢力で動いてもらった方が、後腐れがありません」

「ふ――軍閥どもまで欲を掻いたかと噂しているのに、お前は相変わらずだな」

「――『宮廷連』と、私の考えはあまり近くありませんので」


 それもまた偽らざる事実だった。

 自分にとって、『彼』がなろうが、『目の前の少年』がなろうが、さしたる違いは無い。


「その答えは?」

「興味があるのは『権力』ではない、とでも。

 というより、下手に貴族を入れると、絶対に『根付いて』しまいますから」


 そう言うと、彼は愉快そうに笑う。

 たった14の少年には思えない、枯れた笑い方だ。


「やはり、お前は俺に近い――いや、教育係であったお前に、俺が近いのか」

「勿体無いお言葉」

「よせよせ、レジィ。兄と弟のようだ、とまで言われた、お前と俺の仲だぞ」

「……貴方の様な弟は、ちょっと、と思わないでもないですが……

 まあ――いい日々だったとは、思いますよ――あの頃は」

「――ならば、俺に付かぬか?」


 そういって、『二位の皇継デュラ・カハル』は顔を近づけてきた。


「――軍閥も宮廷連中も、所詮は同じ穴の狢――見るべき者も居るは居るがな。

 お前の様な者こそ、本来は俺の横に相応しい――手を組まんか?」

「――立場を分かった上で、仰っておいでで?」

「目的を理解した上で言っているのだ、『上のエルフの外れ者』よ」


 その言わんとする事も理解出来る――だが――


「――まあ、言えぬだろうと分かってはいる――

 『エノ』の後見に立たされた今となってはな――全く、ちと手が遅かったな」

「御理解頂き――」

「だが、思いつき、という訳でもないぞ。『正統な庭師の系譜』よ。

 知っての通り、ロアザーリオこちらでも、訳の分からない被害が出た。

 古式に通暁する者を求めるのは、当然だと思わないか?」


 その言葉に――この少年もまた、今回の一連の騒動の根幹を推察していると知る。


「――窮鳥を懐に入れたのは、その為で?」

「――ふ、鎌をかけるか。だが乗ってやろう。

 『アレの居るらしい場所を考えろ』――俺の、いや、如何なる諸侯の手も届かない場所ぞ」

「では――」

「さてな。もっとも、噂程度でしか聞いていない事だ。

 あれだけの事が起こった後に、世俗に危険を感じた者が、子弟を預けるに丁度良い『庭』があるのであれば――

 それは、あの場所ほど相応しい所も無い――まあ、内では色々あるらしいが」

「……まあ、ありますね」

「その中に入る迄の安全を確保するに、自分の旗下の者が手を貸そうと――

 俺はそれら一つ一つまで関知はせん事にしている――武人の平時の稼ぎは、そういう所で捻出するべき、だろう?」

「――成る程。これは――鎌をかけた心算が、失言でした」


 そう言って、レジナールは茶を啜る――言われた内容が、自分が嘗てあれこれと言った事だったからだ。


「――馳走になりました」

「ああ。何時でも来い――ああ、そうそう。

 煩いハエを幾分か叩いておいたが、良かったかな?」

「……ありがとうございます。

 さてさて――どちらの方角から来たものやら」

「何処にでも沸くさ。お前の立場なら」

「――弱りましたね。何時か言った事を、そのまま返されるとは」


 苦笑しながら、レジナールは部屋を出る――


 回廊から、空を見遣りながら、レジナールは考える。

 彼の言葉は全く以ってその通りだ。

 あの場所は――特定の権力下には無い。

 内部でのヒエラルキーには、確かに影響があるだろう。

 だが――自分の様な、上のエルフからは見向きもされなくなった者でも門を叩き。

 相応の知見を得て出てくる事が叶う程度には、門戸は誰にでも開かれている。


 ――だとすれば。幾年かの猶予が、この世界には出来た、とも言えるのか。

 デュラ=カハルには言わなかった事を、心の中で考える。


 あの時――計測していた魔力が、『泉』のそれとは異なる、異常な値を示した事。

 詳細は不明だが、あの場所で――

 昨今言われている『魔王』からも、頭一つ抜きん出た存在が、一瞬その片鱗を覗かせたと言う事実。

 推測するに――それは、『四位の皇継フェル・カハル』なのではないか。

 そして――魔術結社等の方から漏れ聞こえてくるその死は、誤認なのではないか。

 だとすれば――そう推測を立て、かけた鎌だったのだが。

 もしも、それが目覚め、世界が『魔王』として受け入れたならば。

 世界は、再び大きな動乱期を迎えるだろう。


「――目的の為の情報を集め得る、権力ちから――たまたま得たとは言え――これは、偶然なのか」


 或いは――これすらも、予定表の一部なのか?


 まだ見えない暗雲に、レジナールは身震いをする。


「……安穏が叶わぬなら、備えなければな――」


 まだその姿を見れない、何かへと向かい――祈る様に呟いた。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・


「アウル――」

「はいはい。何ですかイゾウさん」


 あれこれと考えていると、イゾウが荷物を運んできた。

 自分でも持てるんだが、持ってくれる、を断る理由も無い。


「お前、これからどうするんだ?」


 どうするんだ、と言われても――


「特定の人に付いて回るには、やる事調べる事が多いので――放浪メイドですかね」

「おう。分かった――一応、俺の知り合いのギルドに一筆書いた。使え」

「ああ、ありがとうございま――す」


 ――いや、これ、果たし状にしか見えないですよ、イゾウさん……


「――それこそ、そっちはどうするんですか?」


 そう言うと、イゾウは頭をかく。


「決めては無ぇ。まあ、俺も放浪かね――ベルに後処理全部させるみたいで悪いが」

「……まあ、文官の才能ないですからね、貴方」

「ほっとけ」


 そう言った顔が、スッと鋭くなる。


「……今回の一件、探るのか?」

「……今回に限りませんし、これからも、きっと何かあります」

「――何が起きる?」

「――分かりませんよ。そこに織られる予定の糸があるだけの状態なんですから」


 実際、そうだ。

 貴方も私も、その糸の一本に過ぎない。

 だが、彼は納得したようだ――流石に、混沌の時代を生きた人は切り替えが早い。


「それも、そうか――織物の柄なんて、機織の機嫌次第か……」

「ええ――ああ、名残惜しいですが、そろそろ」


 今、駅馬車に乗れば、夜ぐらいには次の街だろう。

 この片田舎では限りのある情報も、もう少し詳しく手に入るだろう――

 そう思い、立ち上がると、イゾウがカバンを持った。


「――はあぁぁ……のんびり暮らす予定の世界で、なんつう事態に……」

「まあ――運が悪かったんですよ、貴方も私も」


 何が、と問うイゾウに、


「……『彼』に出会ってしまった」

「……それはあるな。で無けりゃ、旦那の横で殉死でもしてただろうし」

「ね? ――『フェル』だって、ああは成ってませんよ」

「ああ――そうだな――

 『生命』は救われたが、『運命』は曲げられた、とか、頓知が利いてる」


 それはまあ、貴方に遭った彼女達も――とは言うまい。


「――何処行ったかね、あいつ」

「――さて――行く先々で、迷惑掛けてなきゃ良いですけど――」


 そう言って、二人、空を見上げるのだった。


 ・ ・ ・


 走っていく馬車を見送り、イゾウは一つ伸びをした。


「……さて――どうするかね」


 そう言って、顎をさする――


「……とりあえず、髭剃って、髪切って、か」


 水溜りに映る自分の顔の、あまりの事に、苦笑を浮かべ――


「――このままで済ますと思うなよ、誰かさんよ」


 近くに居た鳥が飛び去っていくのを見送り、イゾウもまた、歩き出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ