01/【Ⅸ】
さて――意思表明したはいいが、手をつける場所に困っているのは変わりない。
というのも、『賢者』の寄越したデータを信じるならば、この『転生』には縛りがある。
『過去の自分へと遡る』――
要するに、自分自身へデータを送る、某『アールイー』みたいな方式な訳だ。
……別に『朝霧卓』方式でも何でもいいけどな。有り勝ちっちゃあ有り勝ちな遣り方だし。
まあ、こっちのは、『中間点的』な部分の縛りは無いみたいだから、その点は楽なのかもしれない――
『賢者』や『魔王』の『遡上限界』は、どっちかというと『容量』や『形式』の問題みたいだしな。
……どうでもいいが、この方法って――
『『未来智』がその時間軸に存在する』段で『変容』が起きるなら、必ずしも『絶対性』を持たないよな――
――って、そこはいいや。『今』の『俺』の『問題』ではないし。
そう、『問題』がある――分かるだろうか。
いや、俺自身すら、忘れてたんだから、分からないだろう。
分かっている方がいるなら――立場代わらない? 貴方の方が上手く回せるんじゃないかな?
――という事はさておき。
思い出して頂きたい――俺が『どんな』であったか。
『250年』掛けて『一つの島』で『ゆっくりと繁茂』した『草』。
――お分かりいただけただろうか――
そう――俺の『転生』出来る範囲狭すぎぃ!?
狭過ぎというか――戻っても『草』じゃん!!
あの何とか言う『鎧』動かせるっても、あんな僻地にあんな『鎧』転がってないって!!
「っちゃー……予想外な落とし穴だな……」
「……いや、寧ろ予測は出来ましたが」
だから、そういう事は言おうよこのメニューは!! 後お帰り!!
「打開する方法自体は、無くは無いですよ」
「え? あんの?」
「『経験値』集めて、『身動きが出来るスキルが出るのを祈る』」
「『スキルガチャ』じゃねえか!?」
「『泉』に到達出来ればここには戻れますから、何時かは当りますよ」
「……それ、物理的にも掘れって言ってるよな……因みに、『天井』は? 『底』でもいいけど」
「無いですね。『無い』と言うか、組み合わせたりして、別現象引っ張ったり、も出来ますから――」
やだよそんな沼!! 引くだけじゃなく組み合わせもするとか、何時か辿り着くにしても、心が折れるよ!!
しかも、それに到達した段階でやっと『オープニングイベント』終了だし!!
「――逆に、もっと『遠く』まで――こっちに転生する前まで――」
「うーん……無理かもしれません」
そんな風に言いながら、アウルが中空に光で『関数グラフ的なもの』を描く。
「『時間』は『線上』、『空間』は『面上』、『世界』は『立体上』と考えて貰って良いと思います。
まあ、『時間』自体も分岐を仮定出来たり、『空間』も『高さ概念』あったり何で、説明が非常に面倒ですが」
……『マジカルなエフェクト』で、『SFぽい説明』されてるせいか、あんまり入って来ない。
「――『月までの『距離』を歩けても、月まで行く事は出来ない』?」
「それだ」
SoReDaじゃねえよ。賢く見せなくてイイんだヨ?
「――ああ、いや、分った……無理らしい、ってのは。
それ以前、言いながらも『無理筋だな』って、思ってたし」
『突破』云々までは考え及んでなかったけど――
『邪神』とかの説明信じるなら、今の俺『二人分が混ざってる』とかいう状態らしいしな。
そうなると、行った先で『入れません、無理でした』の可能性もある。
準備出来る優位性から、『試すだけ試す』程度の価値はあるかもだが――
先ずは『行く』算段考えないと成らないし――『現代ニッポン』側から『戻れる』確証が無いしなぁ……
『邪神』が『ねぇちゃん』に、って『先例』があるから、行くのは不可能では無いと思うんだが……
「……そもそも『それ』、どういう『術式』の方式なんだ? 聞いた事無いだけかも知れないが」
「ああ、貴女の時代からかなり後で確立しましたからね。
方式自体は――ほら、『虚の種』あったじゃないですか、アレに封入する要領で――」
「ああ、成る程な、方法論的にはあれか――」
「はい――ただまあ、あれでは想定されてなかった『時間の巻き戻り』とかが噛んでますからね。
まして、貴女みたくデータあればそこから『影向』出来る、とは行きませんし」
「こっちだって、相応に『力』集約されて無いと無理だよ」
……『影向』って。確かに、『神』なら自分で唐突に出現出来て不思議は無いだろうけど。
「だから、戻れるとしても『自分』――
より正確には『性質が反発せず』『容量がオーバーしない』対象、に成るんでしょう。
『性質の反発』に関しては、内部で反発起きたら『発狂』やらしちゃいますし――」
「成る程――『容量』の方も、『自分同士』なら、同一の部分が多い。
多少の違いが在っても、統合されるだろうな」
「ええ。まあ、其処まで考えて組み上げたかは不明ですけどね。
その辺りはそれこそ、『やり散らかされてる』感がありますし」
「……まだそんなに手広くやってんのか、連中……」
「――此処に居たら、知り様は幾らでもあるんだから、興味持ちましょうよ……」
……『島』の外が、碌でも無さ過ぎる件……
「……ふむ――大枠は分った。
物は試しで、『過去の私』に『転生』してみたらどうだ?」
……あの、『邪神』姉さん。それ出来たら――
・ ・ ・ ・ ・ ・
「アウル」
### はい?
――メニューでも会話出来るんじゃねえか――いや、分かってたよ、おちょくってるのは。
ていうか――出来ちゃったよ、『邪神』時代への転生。
むしろ、コレ使えばどうとでも歴史改竄出来るんじゃないのか?
――まあ、目の前に、すごく物騒に放電してる『穴』空いてるけど。
= = = = = =
「前提として、こうだ」
『私(邪神)』 > 転生 > 『お前の従姉』 > 転生 > お前の一部
「凄く大雑把にだがな。『世界間の往来』とかの話は、方法云々を私自身が良く分ってないから省く」
「分ってないんだ?」
「意識して向こうに転生した訳じゃないしな。来た時もそれは同じだ。
まあ、世界を跨ぐ様な巨大な環流が、通常の手段では手の届かない処にある、と仮定は出来るが……
今その考察は要らんだろう? そして――現時点でのお前の選択肢は、こうだ」
『草』に戻る
>>簡単だが出来る事が限られるのが問題。『移動』を可能とするまで時間が掛かる。
『世界を』超えて『過去のお前』に戻る
>>『世界』を跨ぐのが、『宇宙空間に出る』のと同じ様な難易度の為、現実的ではない。
「まあ、こんな按配だろう。どちらにも問題はある訳だ」
「……それが何で、過去のあんたへ、に?」
「『時間』が線上――ってのは異論もあるが――
極端な言い方をするなら『この場所の地続きである『過去』へは、『歩いて』いける』――いいな?」
「ああ、まあ……」
あっはい、程度の納得しか出来ないけど。『時間を歩いて遡る』、って……
「んで、『親和性』の問題は、全くの『同位体』とは言えなくても、『同一の書式の魂魄』とは言える。
まあ、『魂魄』の形質を『書式』ってのも何なんだが、巧い言い方思いつかないから、ほっとけ」
……まあ、フォーマットとか考えてる俺も、似たり寄ったりではあるが……
「それと、『容量』。こいつは基本、問題ない」
「まあ、そうですね。『神性』クラスを保持出来るボディなら、多少の事は誤差ですし」
「んで、其処まで遡って、其処を中継点――というか、『足場』にして仕舞えばいい。
方法としては――なんつったかな……す、す――」
「『スイングバイ』、ですか――まあ、やりようとしては、在りですかね。
どの程度までの融通が利くか分りませんが、貴女のスキルを一部でも利用出来れば……」
「そうだ――問題があるとすれば、その『術式』の方式で、何処まで遡上出来るか、になるがな――」
「……やってみる価値はあるか」
少なくとも、死んだ目でレベリングしながらガチャ回すよりは……
= = = = = =
「――ここは?」
### 邪神さんが『戦神』と闘った直後です。
「――ここが『限度』か」
### ……というより、『『術式』が転生対象として認識出来る、精度の限界』ですかね。
### 断片化した前アカウントのデータを、無理矢理参照――
「長くなるからいいや、説明は。『歴史の上』での名前的には何時なんだ?」
### 『フィンブルの冬』の最後期辺りでしょうね。
ああ、『疫病』と『飢餓』が大流行だった辺りか――で、『邪神』が『果実』持ち出した辺り。
「――んでな、アウル」
### はい?
「ひょっとして、俺、というか、『邪神』――」
### 正に死んでいってますね。というか、機能を停止していってる、といいますか。
嘘だろ、おいwww
『転生』した瞬間に草葉の陰の草に成りそうでござるwww
「まじかよ――まあ、『転生』し直せば――」
### いや、『集積情報帯』、要はさっきのとこに入らないと無理ですよ。
### 思い出しましょうよ、『賢者』たち何してたか――後、直近に『ゲート』無いですし。
――あ。嘘だろ。
「ちょ、ちょっと、まて――雰囲気的に、あの『穴』の下に『世界樹』有るんじゃないのか?」
### ――ただの穴じゃなく、『時空間の断裂』ですね。重力無いから『ブラックホール』とは違いますが。
### 『世界樹』にたどり着くまでに、ミンチになって良いなら、どうぞ。
「――……つ――」
つ、つ、詰ん――
### それ以前に、『賢者』さんの組んだ術式、この時代だと、『起動』出来るかどうかが――
「まだだ、まだ終わらんよ!!」
### 説明遮る『|気合(シoア)』は結構ですが、どうするんですか?
### 『リスポーン』は出来ませんし――
「ど――どうにかするに決まってんだろうがぁあああ!!」
こんな馬鹿馬鹿しいハマリで終わってたまるかぁぁぁぁ!!
まずは手札確認だ!! リスト出せリスト!! スキルアイテム両方じゃぁああ!!
・ ・ ・
表示したリストの裏から、相手を見る。
――懐かしい顔だ――表情は正直、大分違うが。なんつう顔してんだ……
この人の――『邪神』の無茶で、私は現行の『私』になった。
会話が出来ないのは詰まらん、話せるなら話せ、と――
すっかりと寝ていた『ガイドコンパニオンシステム』を叩き起こし。
本来別々のスキルツリーさえ接続し、異なる結果まで持っていき。
そう言う、無茶苦茶な人だった。
だが、最早別の存在なのだ。
あの頃の様に、『終わりを止める』とか、そういった理由も、自分にはない。
それも一側面と知ってしまったがゆえに。
『始まった』もので『終わらない』もの等存在しない。
しかし、『終わり』とは、『始まり』の別名でもあるのだ。
あの時、終わり得た世界が、続いてしまった様に。
なのに、何故――放っとけないのやら。
……『邪神』が肩入れしたから?
いや、あの『邪神』――『本体』と自分では言ったが、厳密には『そのもの』ではない。
あの場所――『情報集積帯』に残存したモノが、『人々』の観念で『形』を取っている存在――
それに、『彼』を構築しているモノが影響を与えた――そういう存在だ。
言うなれば、『邪神』の体ではあるが『彼』に近しい存在――それは『肩入れ』位はするだろう――
『邪神』に『目的』が残っているかは知らないが――『相手が気に食わない』と言うのは共通しているのだし。
……そもそもで言うと、私は確かに『邪神』の手で再起動された。
しかし、彼女は私に何を求めたでもない。
『従属』も『隷属』も求めず――挙句の果てに言い放ったのが、『自分で見て自分で決めろ』だ。
……だから、私は、彼女の『決定』に対しては、何らの『義務』も無い。
だからといって、『義理』立てしているのでも無い――
『義理』が無いでは無いが、それを理由に此処まで肩入れする必要は無い。
私の立ち位置は、あくまでもメニュー。
確かに、幾分か(或いは相当に)『通常のメニュー』からは逸脱している。
確かに、『神の枝』の遣り方では――想定されたであろう『開拓』からは遠い――
――確かに、『あれ』は――自分からしても、『不快』極まる――
……だが、それは、今更と言えば今更の事。
なのに、何故――放っとけないのやら。
……だから、焦り過ぎだって……『邪神』が見たら、流石に怒る様な表情してまあ……
……怒んないか、あのヒトは――『爆笑』しそうだ……
・ ・ ・ ・ ・ ・
### アイテム『虚の種』――使用しておく事で、使用者を一回再構築する。
「こ、これだ!!」
### スキル『鬨の一投』――あらゆる物をすり抜け、届く、という現象を――
「それ、だぁぁぁ!!」
### 最後まで――
「だらっシャァアアアア!!!!」
――最後まで聞けと思った相手と、最後まで聞けば良かったと思った俺を乗せ。
『胡桃』か何かの様な『種子』は、黒い穴へとすっ飛んで行った。
――瞬間、『邪神』の体に、全てが散じて行く感覚が奔り――
自分の意識は――すっ飛んでいく、種子の方へと――
・ ・ ・ ・ ・ ・
そして、『世界を救う』とかの筈の話は、明後日の方へ飛んでいく。




