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白鳥の余裕

作者: 中折れハット

 寒くなってきてテレビをつけると7時のニュース、どこにでもありそうで最近は見つからないような田舎の、鬱蒼とした深緑の中、白鳥のいる泥池が映し出されている。リポーターの女性が芝居がかった様子で池の様子を伝えると画面が引きになり、池には白鳥が数羽と鴨が沢山いることがわかる。

 映像が東京のスタジオに戻り、キャスターがまた芝居がかった様子で、

「かわいいですねー。」

 と感想を述べる。それでいい。

 白鳥を見て、「かわいい」「きれい」「もうそんな季節か」退屈だが平和で葛藤のない感想だ。


 でも、私は白鳥を見た瞬間、

「おいしそうだな」

 って思ってしまった。


 池に鴨が沢山いるのもさらにその感覚を加速させた。実際鴨はかなり美味い。


 特段お腹がすいていたわけじゃない。白鳥が恐らくは食べてはいけない鳥だということは承知だ。

 レポーターが言っていたが、この池には誰でも見に来ていいが「ペット同伴だと白鳥がびっくりする」ため、池に近づくことを断られるそうだ。

 なんという特別感。白鳥はいつも「美しい鳥」の名をほしいままにしている。バレエの題材としても有名だし、名前だって白い鳥なんて沢山いるのに、白鳥だけが、白い鳥”白鳥”だ。


 そんな特別感が、白鳥は見て愛でる鳥だと子供の頃から植えつけられるのだろうか。

 「おいしそう」という私の感覚は、即座に私の脳の”イケナイ考え”フォルダに格納された。気になって「白鳥 味」で検索してみたが日本語でリアルなレポートは少なかった。あんなに肉付きのいい鳥、昔の飢饉の時や、中世ヨーロッパの貴族は食べてそうだが、そういった記録も検索してもそんなに沢山は見つからない。


 鳥も人間の価値観の範囲では見た目社会なのだろう。人間が視覚に依存しすぎているのか。

 ペットも近づかない白鳥の池には、今日も白鳥たちが余裕で泥水に首を突っ込んでいる。

 

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