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マトマタから、悪夢?のガベス再び

★ガベス~マトマタ

バス停のカフェには、いつものおじさん。

何故か必ず耳に赤い花を挿している。

とってもキュート♪本職はタンゴダンサーなのか?(笑)

実は数日前にも道を歩いているのをみかけたが、その時も挿していた。不思議だ。

マトマタ行きのバスはお昼過ぎに出発した。

到着しても、空き地のようなバス停の周りを見回してもがらんとしていて、どっちに進めばいいのか呆然としてしまった。

途方にくれていると、若い男が声をかけてくれて、私がオテル・シディ・ドリスと言うと連れて行ってくれた。

よかったぁ~。

ドリスは、歩いてすぐだった。

映画スターウォーズでバーのシーンのロケが行われたと書いてあったのでここに泊まると決めていた。

実際のホテルの入り口は、想像よりはるかに地味なたたずまい(笑)

それにこのホテルだけでなく町全体に人影が少なく、お店も無く、なんだか淋しい雰囲気。

とにかくチェックイン。

通路を入って丸い空洞の広場に出ると、ぐるっとドアが並んでいる。

シャワーなしの一人用部屋に荷物を置く。

なんだかこの広場の部屋に泊まってるツーリストは自分しかいない雰囲気。

さぞやバックパッカーなんかがウロウロゾロゾロしてると思っていたのに。


ホテルの外には大型ツアーバスが止まっていたが、白人団体客がレストランで昼食をとっていた。

そしてホテルの中の写真を撮ってまたバスに乗り込んでいく。


ここには泊まらないのか!ここって素通りするだけの町なの!?

要するに、何も無い町ってことだ・・・なんだか、とても淋しい気分になってしまった。

なんだか石ころでもスコーンと蹴りたい気分。


外に出てみることにした。風が強い。とりあえず、町を散歩しようと坂を上ると、さっき案内してくれた若者、モクタールがひなたぼっこしていた。

彼はドリスでシェフをしているらしい。

シェフと言ってもメインではないようで、仕事のある日と無い日があるそうだ。

おしゃべりしていると、モクタールの友達のガイドのおじさんがきて話に加わった。

サハラツアーを勧められた。やっぱり南での目玉は砂漠だよね。

しばらくお話した後、おじさんの車でビューポイントに連れて行ってもらった。

高台で眺めがいい。風が強いのには参ったけど。

ハリウッドみたいに、丘にMATMATAと書いてあるのが見える。

そばに唐突に四角い子供プールのような水貯めがあった。これは何?と聞くと

「昔は歩く途中に家畜なんかに水を飲ませる為にあったんだ。今は使ってないけどね。」

他に何もないし、風も強いので戻ることにした。おじさんの名はアハメッド。

連れて来てくれてありがとう。


「ドリスは今夜は(も?)宿泊客がいなくてレストランはやってないからホテルマトマタで食べるといい。」と教えてくれた。

えぇ~。そういえば、商店や飲食店が立ち並ぶ風景を見かけていない。食堂も1軒だけしか見てないや。

アハメッドが夜8時に迎えに来てくれるというので、いったん別れて、町を散歩することにした。


町は、土色の丘が連なり、木々が所々に生えている。それだけ。

うわ~。ここは相当な田舎だな。

お店も見当たらないし、ツーリスト向けの看板なんかも皆無。

ビルというものがないし、家ってものすらほぼ無い。

どこに住んでいるのかというと、地面の中!

歩いているとあちこちに大きな穴があって、その中にチーズのように横穴がいくつもあって、部屋が作られてるようだ。

街灯なんて当然ないから、夜中に歩いたらうっかり穴に落ちて大怪我しそう。

こんな居住スタイルは初めて見る。なんだか楽しそう。

キャンプ地にぴったりじゃん♪

穴は使われているものもあるけど、廃墟の数も相当あるみたい。

なんなら一つ欲しいなぁ。

それにしても人に出会わない。ハローと油を売りに入っていくお店も無い。

帰り道にホテルの近くで、らくだを引いたおじいさんを見つけて、遠く姿が見えなくなるまで見送ってしまった。


ホテルに戻ると、新たなツアーバスが停まっている。

ホテルの中に入るとまさかの日本語が聞こえる!

ぞろぞろ入ってきた東洋系のおじさんおばさんの団体は、まぎれもなく日本語を話している。

おぉ、こんな辺鄙な場所で日本人に会うなんて。この国では日本人に会うなんてほぼない。

ここに着いていきなり人恋しくなってしまっていたので、ガイドさんの説明を後方でさりげなく盗み聞きしながらおばちゃんに話しかけた。

「日本からのツアーですか?」見ればわかるんだけどさ。

周辺のおばちゃんたちが「あら、あなた一人で旅行!?」

「そうなんです。今日はここに泊まるのです。」

一人でなんてすごいわねー。気をつけるのよーと社交辞令でも私にかまってくれた。

関西弁のおばちゃんが「気をつけてね。」といって日本ののど飴をくれた。

10粒位入ってるやつでまだ半分位残ってたのに、丸ごとくれた。なんだかぐっときた。


モクタールが、ホテルの中を案内してくれた。

部屋数はドミも含めて相当あるが、宿泊客はほぼゼロみたい。

夏には泊り客もあるのかな?

「ここがスターウォーズのバーだよ。泊り客がいないから閉まってるけど。」

とりあえず写真だけ撮る。彼は暇みたいで、ちょうどいいガイドになってくれている。

だけど全然ツーリスト擦れしていなくて、金品も何一つ求めない。

いい意味で田舎の青年って感じだ。

とにかくおっとりしているので、何事にものんびりしたい私とリズムが合う。

大抵こういった男子は、押しが強くてせっかちで疲れるものなのだけど。


8時にアハメッドが迎えに来てくれて、車でモクタールも一緒にホテルマトマタに向かった。

レストランに案内されると、「じゃね!いってらっしゃい」と二人。

「え!?何?私一人で食べるの???そんなのやだよ。一緒に食べようよ。」

「いやいや、ここでで待ってるから安心して食べてきて」

「いやそうじゃなくて!おごるから!お願いだから一緒に食べて~~。」

という必死のお願いも空しく、一人誰もいないこじゃれたレストランの席に座らされる。

こんな小汚い格好で恐縮です・・・。


ウェイターはそんな私にも礼儀正しくフレンドリーで、そんなホスピタリティに申し訳なく思ってしまう。

いつも安宿の一番安い部屋で、ぞんざいな扱いを受けることに慣れてるから(笑)

6Dでチュニジア料理コースってのが良いそうなので、それにする。

飲み物はお勧めのチュニジアワインをハーフボトルでお願いする。一人だしね。

それも6D位。12Dのお食事。豪華だわ~。ちょっとした罪悪感。

それも一人でなんて。分不相応なお食事をして神様ごめんなさい。

彼らの好意を無に出来ないので許してね。


コースは、ショルバ(スープ)、見たことない盛り付けのブリック、ピラフ、トマトチキン、ラム、ポテト、クスクス、ガトー(お菓子)、ざくろ。


そんな一人で食べれるかー!というボリューム。ピラフまでで十分なんだけど。

というか、1品で普段の一食分。

それに、これで6Dで元取れてるのかなぁ。

こんだけのものチュニスで食べたら一体いくらになるのか・・・。

誰かとシェアならちょうど良かったのになぁ。外では二人が待っているのに。

一緒におしゃべりしながら食べたかった。


食事が終わって会計を済ませて席を立つと、ウェイターさんが

「ワイン持ってく?」と半分しか飲めなかったボトルを指すので

「いいの!?」と聞くと

「いいよ。ここはチュニジアだし(笑)」と言うので有り難くもらった。

早く言ってくれれば思いっきり食べ残した後半メニューも持ち帰りお願いしたのに。


フロントで待っていた二人にボトルをあげると、コップを借りてきて、二人はそこのサロンでちびちび飲み始めた。

TVを見ながら3人でおしゃべり。

「スターウォーズのマント、欲しいんだけど買えるかな?高いの?」

「買えるよ。でも羊の毛で作られたのは高いよ~。」

なんて話していると、いいタイミングでちょうどそのマントを羽織ったおじいさんが通りかかった。

アハメッドがすかさずおじいさんを呼び止める。

アハメッドがおじいさんにお願いしてマントを借りてくれた。

でかしたアハメッド!


早速羽織らせてもらう。

「わーい!本物だぁ!!!」

走り回りたいけど、思いのほか重くて、よたよた歩く。

すごく重い。やはり羊毛は重いなぁ。でもめっちゃあったかい。

纏った途端、ストーブが焚かれたお部屋に入ったようにぽかぽかする!

マントというだけあって、広げたらかなりの面積になる。それを肩で纏うとびっくりするほどの重量だ。

「400Dで売ってくれるって。」というアハメッド。

結構年季が入って所々穴も開いている。新品なら1000D位するらしい。

まぁするだろうな・・・。ちょっと考えたけど、この重さでの旅はかなり厳しいので諦める事にした。

3人ではしゃぎつつ写真を撮ってもらう。モクタールとアハメッドの写真も撮る。

あったかいので手放し難いけど、仕方が無い、お礼を言ってお返し。


モクタールはベルベル人だそうで、風貌にもそれが見える。

細面の顔と、青や緑や金色の混じった神秘的な瞳。私の持っているベルベル人の写真集と同じ。

典型的なベルベル人の特徴。

北アフリカ全域に元々住んでいた人々で、今ではアラブ民族や黒人とかなり混ざってしまっているけど、田舎に行くと、その地域のベルベルに会える。

あの瞳は反則だよなぁ。つい瞳に見蕩れてクラクラっとしてしまう(笑)

本人は至ってのん気でおっとりした普通の若者なんだけど。


ワインを飲み終えると、アハメッドはビールを自分で飲み始めて、いい気分になってしまったようだ。

明日からイギリス人のツーリストと3日間のサハラツアーに行くって言ってたのに大丈夫なの?

一緒に来たらホテル代だけで同行させてあげると言われたけど、見返りを求められるのも怖いので(笑)お断りした。

イギリス人ツーリストだってきっと誤解するし。

アハメッドはまだ飲んでいて、仕方ないのでモクタールと歩いてドリスまで帰ることにした。


月が半分出ているのでそれほど暗くない。その分星はあまり見えないけど。

それでも東京で毎日眺めている嘘の夜空とは比べ物にならない。

モロッコでも驚いたけど、みんな街灯の無い暗い道でもよく見えているらしく、足元の悪い道もすたすた歩く。

道になっていない所は、当然あの穴の住居があるわけで、彼はその縁を歩いたりするわけなんだけど、私にはよく見えない。

後ろからモクタールのジャケットを離さないようがっしりとつかんで歩く。


ホテルに到着して、モクタールと別れて部屋のある広場へ。

ここも大きな穴に放射線状に部屋を掘った形なんだけど、私の部屋の向かい側の部屋のドアから明かりが漏れている。

誰か泊まっているのか、それとも従業員が寝泊りしてるのか・・・と思いつつ部屋に入る。

薄暗い広場にたった一人で寝るのはやだなぁと思ってたのでちょっと心強い。

と思ってたら、トントンとドアを叩く音。


出てみると、金髪白人の女性。後ろには子供。

「ハイ!」とちょっと戸惑ったような笑顔で女性が挨拶した。

多分30代で、健康そうなきれいな人だ。用件がわからずに私もとりあえずハイ!と笑顔で挨拶。

「あの、えっと、誰が泊まってるのかなと思って・・・あの、確認に」

きっと彼女も不安だったんだろう。子供もいるし、変なヤツが近くに泊まってたらそりゃ不安だ。

夜中は従業員もいなくなっちゃうだろうし。

「私はツーリストで日本人です。今日と明日ここに泊まる予定なの。あなたも旅行で?」

「私もヨーロッパからのツーリストよ。誰かいるのかと思って・・・あの・・・チェックに。」

とチェックを何度も繰り返す(笑)彼女も英語は母国語じゃないのかしら。

それにしても、いつここに来たんだろう。

ツアー以外でここにくる人なんて珍しい。お互い様か。

いきなり東洋人でびっくりしたかも知れないけど、怪しくはないとわかってもらえた(はず)。

おかげで遠くに子供の声を聞きながら私も安心して眠りについた。


翌朝。

確か、朝食付きと聞いてたのでレストランに食べに行ったけど、中々出してくれない。

モクタールが見つけて厨房に言ってくれた。でもしばらくして出てきたのは冷めたカフェオレとパン。

これで朝食付きプライスは詐欺だよ。レセプションで明日は朝食なし価格にしてもらおう。


その後、MUZEにモクタールが連れて行ってくれた。MUZEと言ってもとても小さくて規模も・・・なんだけど。

彼がそこのおばさんと少ししゃべって、私も呼ばれた。タダで見せてもらった。

穴の中の1部屋に昔ながらの生活の風景が展示されていた。

ほこりがかぶったまま・・・。あるのはそれだけだった(笑)


そこを出て、村中を案内してもらった。廃墟の穴の住居に入ってみたりもした。

面白かった。一人じゃさすがに怖くて入れなかったし。

「いくらで泊まってるの?14D?あそこはスターウォーズのバーがあるってだけで高いから、ホテルベルベルにすれば?僕が紹介するよ。8Dで泊まれるから。」

ドリスのコスパの悪さにはがっかりしていたので、移ることにする。


チェックアウトしてホテルベルベルに連れて行ってもらう。

レセプションで12Dと言われる。

なんだよーモクタール、ちゃんと言ってくれてないの?

こういう時に限って姿ないし。

「8Dだと聞いて来たんだけど。」

「いや、今の時期はみんな12だし食事付いてるし。」

「食事は何も付けなくていいから8にしてっ。」

食事なしと言ったらあっさりOKだった。

ガイドブックには食事もおいしいって書いてあったけど、ツアー客ならともかく個人にはわからんもん。

一人のためだけに作るの面倒だろうし。

またドリスと同じ朝食出されて4Dも取られたらかなわないしね。


「いいホテルでしょ?8Dだったでしょ?」

「いや、12って言われた!ミールなしで8になった」

「あれ?そうだったの?おかしいなあ。言ったんだけどなあ。」

まあいいよ。結果オーライで。ありがとモクタール。


今日はタメズレットというベルベルの村に行くことにした。

それほど興味があったわけじゃないんだけど、あまりにここが何もなさすぎなので(笑)

ルアージュ&ワゴン乗り場までモクタールに案内してもらってバスを待った。

待つ間、陽気なおじさんと仲良くなる。

ベルベル語で名前を書いてもらったり、腕に腕時計を書かれたりして遊んでいるとバスが来た。

一人乗り込む。そして、一人降りる。

山肌に張り付くように村がある。村の中に入って、頂上をめざす。

家屋に人々が住んでいるのを感じて何故かほっとする(笑)

カフェもMUZEも当然閉まっていて、村の上のほうは人もあまり姿を見せずガランとしている。

あ~マトマタは淋しい!

人が少ないっていうのがこれほど淋しさを感じさせるとは。

もっと淋しそうな砂漠のほうが人やラクダが沢山いてにぎやかだ。


村をでて、帰りのバスを待つ。が、マトマタ方面に向かう車両は全く通らない。

しばらく待ったけど来ないので、歩いて戻ることにする。

一本道だったから、時間はかかっても迷うことはないだろう。

途中で車を見つけたらヒッチハイクすればいい。

途中、道沿いに大きなカフェが開いていたので、休むことにする。

見晴らしもいいので車が通ればすぐ行ける。

コーヒーが淹れられるのを待ちつつ外を眺めていたら、バイクに乗ったモクタールが通った。

通りに出ると、反対方向から来たヨーロピアンツーリストの乗用車を止めて何か話しているのが見えた。

きっと「キュートな東洋人の女の子を見かけなかったか?」と聞いているに違いない(笑)

通りに出て目一杯手を振った。気が付いたモクタールがやってきた。

よかった~嬉しい♪

「私の為に来たの?」

「Yes.ベルベルタクシーだよ」

モクタール、ほんといい子だわ。


まだカフェを飲んでいなかったのでモクタールにもおごる。

ここの人は彼の縁者だそうで、飲み終わってから建物の上にあがらせてもらった。

まぁ狭い土地だから、ほとんどがお互い知り合いなんだろうな。


モクタールのバイクに乗ってなだらかな一本道を走る。バスよりもずっと気持ちいい!

途中、止まってもらって写真を撮る。モクタールがバイクに乗った写真も記念にパチリ。

道沿いには建設中のホテルもあって、そこも見学した。

オーナーだと言うおじさんは、何年もかけてここを作ってるそうだ。

なかなかおしゃれな作りで、完成していれば1泊くらい泊まってもよかった。

駱駝もつながれている。ハトも飼っている。

おじさんと彼がおしゃべりしてる間に建物をあちこち覗き見。

そのうちオーナーに呼ばれた。彼が出来あがっている部屋を見せてくれる。

かわいくておしゃれの部屋もあれば、ピンクだらけで大きなハートが書いてあるベッドルームも。

おっさん、いいだろう?ウヒヒと笑うけど、なんだかなぁ・・・(笑)


そのオーナーが自分が住んでいる穴の住居を見せてくれると言う。

穴の上(いわゆる地上)から見ると、広場の部分はなかなかかわいいインテリアが施されている。

ツーリストが喜びそうな、ちょっとこじゃれたベルベル風だ。

降りて、横穴の小部屋もいくつか覗かせてくれた。

これまたどの部屋もかわいく装飾されている。

広場のベンチに座るよう促されて、お茶をご馳走になる。

「4年前に日本のテレビ局が取材に来たよ。フジTVだ。」だって。

帰るときに、「ホテルも資金難でね、少しばかりの援助を頼むよ」と広場の真ん中にあったバクシーシ用の皿を指す。

しょうがないなぁ。

彼の顔も潰せないし、色々見せてもらったし、手持ちの小銭を多めに入れた。


ホテルに戻り、一休みするといってモクタールと別れ、荷物の片付けをして日記をつける。

夕方、ホテルの外の小さな丘にあがって夕焼けを眺めた。

一人で座ってぼーっとしていると、知らない男の子がやってきた。

モクタールの友達だと言う。8時に出てきてくれという伝言を伝えに来たらしい。自分で来て言えばいいのに。

OKだと伝えると少年は行ってしまった。


8時少し前に、穴の上からモクタールが私の名前を大声で呼んでいるのが聞こえた(笑)

今夜はたった1軒だけあるバス乗り場近くのカフェで夕飯を食べることにしていた。

ご飯を食べたら夜の散歩に行こうと言うのでOKして、カフェに向かった。

オジャを頼んで、彼は食べ終わる頃にまた来るよと言って出て行った。

待っていると、日本人の男の子が一人入ってきた。びっくり。

この国を一人で旅する日本人が他にもいたとは。

一緒に食事をしながら、日本語をめいっぱいしゃべった(笑)

日本人というか、ツーリストの姿に飢えていたのだ。

彼は今日ドリスに泊まってるそうだ。一日早ければ一緒だった。

民族衣装が好きで、色んな国を旅して衣装を集めているそう。素敵だわ~。

私もその国の服っていうの好きだけど、男子でそういうことしてる人に初めて出会った。

ドゥーズの木曜マーケットで例のマントを買うつもりなんだとか。

マーケットに間に合うスケジュールなど話し合い、情報交換をした。

彼は、ものすごくゆっくり食事を摂る。

私のような早食い女王が5回食べれるほど遅い(笑)

そのうち、モクタールがやってきてまだなの?光線を出すので彼とまたドゥーズで会うかもねと言って別れた。


夕飯代はモクタールが払ってくれていた。

夜の道はまっくらで、どこかで飼われているらしい犬がワンワンとうるさく吠えている。

月がだいぶ満ちてきて、星はあまり見えない。

それでも、静かで綺麗な夜空だ。


そう言えば、6年前の今日も、こんな小さな町で旅人だった。

トルコのカッパドキアにある、ギョレメという町にいたんだっけなぁ。

カッパドキアでもここと同じく洞窟ホテルに泊まったんだった。奇遇だな。

何故思い出したかと言うと、今日は私の誕生日だった。

イスラムでは特別な日ではなく、祝うの風習もないので私も気にしなくなっていた。


「廃墟に行ってみよう」

「えっ、怖い。絶対無理」

「大丈夫だよ。ろうそく持ってるし」

後で聞いた話だけど、使われなくなった穴の住居は、デートなんかに使われるそうな。

ははーん。なるほどね。

どこを歩いても、静かだ。彼は普段何処に帰って寝てるんだろう。

家族はいるんだろうか?

ガベスでのアディルも、タタウィーンでのモハメッドも家に呼んでくれたけど・・・。

もしかすると家族は離れた所に住んでいるのかも。スースでのモルディのように。

「ファミリーはここに住んでるの?」と聞けばいいんだけど、この静かな夜を壊してまで声を出したくなくて黙っている。

彼はうっすらヒゲもあるけど、まだ声変わりもしていないような涼やかな声を出す。

こんな僻地でガイドでもないのにカタコトにしてもこれだけ英語を覚えてるって言うのはこうやって積極的に数少ない時間的余裕のあるツーリストに接触してるからなんだろう。

ホテルまで送ってもらって、また明日ねと別れた。

遅くに帰ったからか(そんな遅い時間でもないけど)、ホテルのおじさんがモクタールに何か文句を言ってるようで、彼は「サマハニ(ごめんなさい)」と言っていた。



もっと何かあればあと一日くらいいるはずだったけど、あまりに退屈で、ドゥーズに向かうことにした。

「ノーノー。あと一日いればアハメッドが他のツーリストを連れてドゥーズに行くから、同乗していけばいいんだって言ったじゃない!それに直行だからバスとは別の道で、景色がとってもいいんだよ。なんで今日行くんだ?」

モクタールは熱心に引き止めてくれた。

彼は本当にいい子で、私にとてもよくしてくれた。

でも、なんだか人がいなくてしんどいのだ。

ごめん、モクタール。アハメッドによろしくね。


バス停に向かって歩いていると、ワゴン車が通った。モクタールが車を止める。

これに乗るんだよと言って荷物を載せてくれた。

最後にネームカードをくれた。

え?そんなんあるの?メールアドレスまで書いてある!

そうよね。この土地にもどこかにPCがあるのよね。

メールしてねとキーボードを叩く仕草をする。

うんわかった。それじゃ、さよなら。

バイバイ。と彼はバイクで行ってしまった。

寂しいけど、さよならマトマタ。ありがとう。


車は、ガベスのバス停ではなく、街中に停車した。

見覚えのあるホテルの前。学校が終わったのか学生が沢山いて、こちらを見て笑ったりちゃかしたり。

そーかいそんなに日本人が珍しいかい。


前回はマトマタ行きの時に、ガベスで乗り換えたら、バス停で再会してしまったんだよね、アディルに。

今日はバス停じゃないから、会うこともないだろう。

でもこのホテル、アディルの知り合いがやってるホテルだとか言ってたなぁ。

やぶへびになる前にさっさとガベスを脱出せねば。



・・・・・。



嫌な予感と言うのは当たってしまうもんだ。

またしても、歩き出した途端に向こうからやってきた男、アディル。


なんで会っちゃうのーーー!?


もう、神様ほんとお願い 勘弁して。

遊びの化身アディルは「あーらまた会っちゃったのね!」と言うが早いか私の荷物を奪って目の前のホテルへ連行。

「あの、明日のドゥーズのマーケット行きたいからここは通過するだけで・・・」なんて私の声はかき消されてしまう。

「何持ってるの。パン?お腹すいてるの!?俺も。まずなんか食べよう」

確かに、朝買ったパンを食べ損なったままだった。そのまま街中に引きづられる。

街中の小さなパンスタンドは、食事時なのか、男たちが押し合いしてる。

「待ってて」

アディルが押しくらまんじゅうにもぐりこんで、私のパンに豆やハリッサ(辛いトマトペースト)を

挟んだのを手渡してくれる。彼もフランスパンに同様のものを挟んだものを持ってる。

そこらに座り込んで、貧乏サンドをかじる。うまい。

食べ終わるとカフェでコーヒー。彼はいつの間にか合流した友達とシーシャ。

「海沿いのホテルに行こう」と言うので行くことにする。

多分ガベスで一番のホテル。泊まらないから縁もないし。

行くと、綺麗なブラックの女の子がカフェにいた。

「友達のGFなんだ。喧嘩して揉めてるみたいでさ。」

しばらく、そのカフェで二人は彼女の愚痴?を聞く。

豊満な肉体に長いドレッドの髪。こんな美女の彼氏ってどんな人なんだろう。

小一時間すると、その「彼氏」登場。

えー。普通の、普通の、ほんとに普通の人。アディルのつるんでる仲間の一人。もったいない。

こんなゴージャスな女の子をこの人が(失礼!)・・・。うーん。


その後、二人で例のパームワインバーへ行く。

今日は彼らはドミノというマージャンみたいなゲームをやっていた。

それを眺めつつパームワインを飲む。これ、お土産に売ってればいいのになあ。

あるわけ無いか。自分たちの為に作って飲んでるだけだもんね。


その後、ブラブラしつつ、昼間のホテルの敷地にあるバーに飲みに行く。

ちょっとおしゃれだけど、ツーリストはいない。

いるの100%チュニジア人。プラス日本人一人。

ガベスも泊まっても何もないもんね。普通泊まらないね。

そこでみんなけっこうビールを飲んだ。

そろそろ帰るかと思ったのに、「友達とカフェにシーシャをしに行こう」だと。

えーもう無理。帰ると言ったけど、聞くような男ではない。


彼の友達と、そのワイフと4人で、初めて行くリゾートっぽい作りのカフェに来た。

素敵なんだけど、疲れてなかったらもっと楽しいんだろうけど、だんだんしんどくなってきた。

帰りのタクシーでとうとう具合が悪くなってきた。

あーなんでいつもこの男に捕まってしまうんだろう。

なんではっきりドゥーズに行くと強行突破できなかったんだろう。

自己嫌悪に陥りながら、目覚ましをセットして、薬を飲んで寝た。

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