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恋するドゥーズを後にして

★ドゥーズ~タメルザ~チュニス

恋するドゥーズを後にして、砂漠ツアーのメンバーと一路タメルザへ。

途中、サンドイッチを買うが、フランスパン半分サイズで800ミリーム。

安い。今までもこんなものだったのか。

思い返して見ると、サンドイッチ屋さんっていつも人だかりで、誰かが私の代わりに買ってきてくれていたので、値段を知らなかった。

フランス領だった国のパンはどこも美味しい。

途中のショットエルガルサという塩湖でお塩をたんまりゲット。

ミデスでビタミン補給にみかんを購入。これも美味しい。

見終わった頃にフランスの団体の車が到着。100台はあるそう。壮観だな。

週末に飛行機でドゥーズに来て2泊で帰る強行スケジュールだそう。

日本で言う弾丸ツアーってやつ。


トズールに到着。ホテルにチェックイン後、少しメディナを見て、土産屋につかまり、みんなでティを頂く。

今回は一人じゃないし、ちょっと違うエリアなので、アリに挨拶に行くのは断念。

日本人の一人が土産屋の兄ちゃんに日本語を教えてあげたら、お礼にみんなにローズドサハラをくれた。わーい。

アラビッシュでお礼とあいさつをしたら、お兄さんが君はモロカンアラビッシュを話すの!と驚いた。

アラビア語はアラブ圏共通だけど、それぞれ方言があるのよね。

ホテルに戻って荷物を取り、GAREへ送ってもらう。

名残惜しいけど、私はここで戦線離脱。一人列車を待つ。2時間!

売店もタキシフォンもない珍しい駅だった。

持っていたNewsweekを読み返していると、隣に座った女の子がのぞき込んできた。どうぞと渡す。

すると連れのおばあちゃんと一緒に1ページづつめくってみていた。

「シュクラン(ありがとう)」と言って返してくれた。


列車は乗った時はガラガラだったけど、途中の駅からどっと人が乗ってきた。

隣には腰の曲がったおばあさん。連れの息子らしき中年男性は席がなかったようだ。

ほんの数時間なら譲ってあげるところだけど、長時間だから、ごめんね。

その息子さんはデッキにいて時々母親の様子を見に来る。

席は二人がけで、車両の一番後ろだから、近いから息子さんも安心だろう。

スターウォーズマントをたたんで枕にして寝ていると、おばあさんが寄りかかってきた。別に構わないのでそのままにして寝ていた。

ふと意識が戻ると、なんだか騒がしい。眠いし夜でも電気が消えないのでまぶしくてそのまま目をつぶっていた。

おばあさんを誰かが揺り起こしているのを感じる。目を開けると息子さんだった。

周りを見るとひとだかり。何事!?立ち見までいて、まわりでワイワイ何か話している。

日本人が珍しいのか。外国人におばあさんがもたれて寝ているのが珍しいのか。

申し訳なさそうにしている息子さんに

「ムシュムシケレ(ノープロブレム)。」だからお母さんを起こさないでこのままで。と手振りで伝える。

息子さんはホッとした様子で胸に手を当ててメルシーと言った。

見物人たちも安心したようでみんなニコニコして何か話している。

アラビア語だよ!とも言っているようだ。頼むから寝かせて。

見物人の男の子がアラビア語話せるの?と聞いてくる。

こんな時に話せたら、観光客相手の人達とは違う普通のチュニジアの人々の話が聞けるのに。

しばらくして、おばあさん達は列車を降りて行った。

おばあさんはバイバーイと子供のように挨拶をして去っていった(笑)


夜行列車なのに、一晩中電気は煌々と付いている。

まあ治安を考えるとこの方がいいんだよね。

席もだいぶ空いてきたけど、今度は若い男のグループがやってきてやかましいこと。

うるさくて文句を言いたかったけど、かかわらないようずっと寝たふり。

煙草を吸っているやつまでいて煙たい。

そこに、今度は揉め事。車掌と男が大声で揉めながら通路を通り過ぎていく。

沢山の野次馬もそれにくっついていく。

その次は、ちょっと頭のおかしい男がきて、彼をまた沢山の人達が囲んでワイワイ。

なんだかシュールな舞台を見せられているようだった。

みんな、どうして寝ないんだろう。

どうして、車両から車両へ移っていくんだろう。


朝5時半にチュニス到着。明るくなるのを待ってホテルへ。

それでもまだ早いので、部屋の掃除の間、ホテル1階のカフェで待つ。

大きなグラスにストローが2本ささったジュースが出てきた。

値段も普通の2倍。ひゅ~都会だね。

少し前に砂漠にいたのがウソみたい・・・。

部屋は2階。隣がシャワーなので楽。とりあえず、寝る。

起きてシャワーを浴びて外に出るともう3時過ぎだった。

帰国目前でお土産を買わないといけないんだけど、日曜日でメディナも店仕舞いが早いんだった。

開いているお店で良い物が見つからず。

歩いていたらニコニコ話しかけてくれた陽気なおじさんのお店でロティを食べる。美味しかった。

やっぱりチュニスは寒い。ホテルに戻ってあったかい服に着替えてネットカフェへ。

受付のお兄さんはお客の写真をスキャナーしたり印刷したりしている。

日本人の男の子がいたけど、無言。彼らがよく言う、警戒心ガチガチの日本人(笑)

そういう私だって、南からチュニスに戻ると少しナーバスになる。

話しかけられても気分じゃないと邪険に突き放してしまうこともある。


大通りを歩いていると、カフェのガルソンが挑戦的な顔でgive me 1minitと言う。

嫌な予感しかないけど、立ち止まる。

「俺は怒っている。金がない。1Dくれ。」訳がわからない。

「あんた、この仕事があるじゃない。」

「日本人はリッチだろ。」

「みんなじゃない。私もリッチじゃないし。ヨーロピアンにもらえば。」

と、自分もめちゃくちゃなことを言ってしまった。

後でものすごく落ち込んだ。もっと対処のしようがあったような気がするけど、突き放すようなセリフを並べてしまった。

昨夜の夜行列車からずっと機嫌が悪いのだ。

最高に楽しい夢をみて、もうすぐその夢が終わるって時に上機嫌でいられるほど人間ができていないもんで。


翌朝、ホテルの掃除のおばさんに、日本に持って帰らないセーターやTシャツをあげる。

イサムに買い物に付き合ってもらおうと電話をしにいく。

ホテルマルハバのタキシフォンに行って両替を頼むとないと言う。

思わずチッと言ってしまう。私のココロ、相当すさんでるな・・・。

メディナを突き進んで、タキシフォンを見つけて電話。

ちょうど今メディナの入り口にいると言う。

どうしてマルハバから電話しなかったのと言うので説明する。

チャンピオンに行くところだと言うのでちょうどよかった。


シナゴークの隣にブルギバスクールがある。

ちょっとアラビア語を話すとブルギバに通っているの?とかよく言われた。

日本人も結構通っているらしい。

授業は英語やフランス語。週3回のレッスンに行く人が多いらしい。

それで年間2万円しないらしいけど、本当かな。


チャンピオンで、端から見てまわる。イサムがいて良かった。

お茶なんてどれがいいのかさっぱりわかんないし。

マジューン(デイツペースト)も聞いてくれた。

ハリッサの小さい缶も自分用とお土産にいくつか。

お礼にチョコバーを買ってあげる。私はフィグヨーグルト。

市電で戻って、酒屋へ。

と言っても、看板とか何もなくて、観光客じゃわからない。

古ぼけたビルの中に入っていくと、倉庫のようなあやしい売り場がある。

案内や表示は皆無で何を売っているのかわからない。

そこでイチジクのお酒、ブハを購入。

透明なんだけど、イチジクのフルーティな香りで、とてもおいしいのだ。

ボトルも砂漠っぽくてかわいい。

多分チュニジアでしか手に入らない気がする。イサムが

「まるでマリワナやコカインの密売所みたいだ。マリワナ2gくれ、みたいな。」

あはは、確かに。


それからマルシェ近くのダット(デイツ)のお店でマジューンを買う

ダットペーストだ。1kgで1D。自分一人で買ったら5Dとか言われる気がする。

重くなった荷物をいったんホテルに置いて、カフェで食事。

サラミとフロマージュたっぷりのパイ。イサムはコーラ、私はレモネード。

イサムの母親は2年前に亡くなったのだそう。

父親は他の女性と結婚したがっていたので、母親が亡くなってすぐチュニジアに来たそうだ。

「母が亡くなってからの自分はnothingだ。父とはうまくいってないし。母が死んでから酒でもなんでもやるようになった。」

は、話が重すぎるよ、私は何も助けてあげられないし・・・。

「君を好ましいと思うのは、頭がいいから。ちょっと母を思い出すんだ。アラブの女の子はダメだ。みんなバカだから。」

この旅で何度も耳にしたけど、そんなにアラブの女の子って俗物?

カップルが痴話喧嘩をしているのも何度か見たなぁ。

そのうちの一回は彼女がリビアの男とこっそりメールのやりとりをしているのを彼が見つけたとか言ってた。

何でも欲しがるとか、すぐに男を乗り換えるとか、浮気するとか色々聞いたけど(笑)

どこの国にもそういう子はいる。


ホテルに戻って要るものと捨てていくものを分ける。

お土産を入れるスペースを作らなきゃ。

砂漠のことは考えないようにしている。悲しくなるから。

夜、イサムと軽く飲む。だけどささいなことで私がキレてしまった。

都会の全てが嫌なんだと思う。

もう自分をコントロールするのが難しくなって一人で大通りを歩く。

広い歩道の真ん中に車椅子のおじいさん。

足がなくて、手の指も足りない。生まれつきなのか、戦争なんかが原因なのか。

人通りは結構あって、実入りもいいようだ。

私もいつものように小銭をだして、すでにおじいさんの手では持ちきれなくなっているコインいっぱいの上に手を支えながら置く。

その指の足りないおじいさんの手に触れたとたん、堰を切ったように涙があふれた。

その手をそのまま握って、ボロボロ泣いてしまった。もう止まらなかった。

おじいさんはびっくりした顔のまま、手を引っ込めることもせず、私を泣かせてくれた。

チュニジアでの全ての感情が一気に駆け巡った。

おじいさんは戸惑った表情で、泣き止まず、手を放さない私を見上げていた。

通りすがりのビジネスマンが、

「どうしたの?大丈夫?」と声をかけてくれた。説明のしようもなく、

「なんでもないんです。大丈夫。アイシャク。」

これじゃおじいさんの営業妨害だ。

おじいさんがちょっとはじの方に行こうとジェスチャーする。

仕事の邪魔してごめんね。これ以上迷惑はかけられない。

慰めてくれているのか、私の手を強く握り返してくれた。

「ごめんね。メディナ、あっちだよね。」指を差すとおじいさんはうなづいた。

おじいさんに頭を下げて一人でホテルに向かって歩く。

なんだか、チュニスに来てから沢山の人を傷つけてしまったかも。

南にいる時のように、のどかでフレンドリーな自分になれない。


翌朝、受付に荷物を預けて、夜取りにくるといってホテルを出る。

まずはメディナ入り口のカフェでコーヒー。

中で頼んだ方が安いと知ってからいつも中で買って2Fで飲む。

メディナに行って、欲しかったチュニジア人形やお土産用に香水瓶、などゲット。

あまり安くならず。

服や靴のスーク、日用品のスーク、お魚スークを通り抜けて外へたどり着く。

タキシフォンがあったので、アディルに電話することにする。

あの日バスステーションで別れたままだったから、このままじゃ後味が悪いし。

3D近くも話してしまった。

アルベンアダブラーMUZEをのんびり見学。迷いながらグランモスクの前に出た。

土産屋のおじさんが眺めがいいから店のテラスに登れという。

お腹が空いているのでラブラビが食べたいんだけどと言うと、ユースホステルの方の通りの立ち食いに連れて行ってくれた。美味しくてお勧めらしい。

確かに混んでいる。

ツーリストがラブラビを立ち食いで食べるのがおかしいのか、他の客にクスクス笑われる。

キャップをかぶったおじさんが

「美味しい?ボナペティ!」と言ってくれる。

横に来て、持っていたビニール袋からダットを取り出してくれた。

それを片手に持ったまま再びラブラビをかっこんでいると、もう1つわら半紙においてくれて、チャオ!と言って去っていった。

グランモスクの階段でしばし休憩。

ラブラビ屋さんに案内してくれたおじさんのお店に行ったけど、おじさんはいなかった。

のんびり新市街まで歩き、さまよった。何軒か本屋に入る。

サハラフェスのハガキを買った。


日の暮れたところでいつものメディナ入り口のカフェへ。2Fから下を見下ろす。

イサムがメディナに入っていくのが見えた。

元気でね。幸せを見つけてくれるといいけど。

ここは人の目を避けられるからいい。長居できるしトイレもあるし。


ホテルに戻って荷物を引き取る。不愛想なおじさんに代わっていた。

時間がたっぷりあるので、メトロでチュニスマリンまで行って市バスに乗ることにする。

途中、階段で荷物を持ち上げる時にキャスターが回ってバゲッジが裏返しになってしまった。

すかさずすれ違った男性がひょいと助けてくれた。小さなことが嬉しい。


タキシフォンを見つけたので、最後にナセルに電話をする。

20時少し前。もうお店は閉めているだろう。

「私だけど、覚えてる?」

「おう、サヴァ?」相変わらず、感情フラットな声。

ちょっとは驚くとか喜ぶとか、ないんか。

「今、忙しい?」???わからないみたい。

「えと、仕事中?」

「ノ、ノ」

「フィニッシュ?」

「イエス。今、チュニスだね?」

「うん。・・・・ねえ、ディファレントメンタリティって言ったでしょ?」

「イエス。チュニスの人はドゥーズとは違う。」

「ほんとだね。私、チュニスはあまり好きじゃないや。ディファレントピープル。」

「イエス。」

「ドゥーズの方がうんといい。」

「イエス。」

「ドゥーズに戻りたいよ。」

「ああ。」

「ありがとうって言いたくて電話したんだ。」

「おう、サンキュー。」

「またね、インシャアッラー。」

「イエス、インシャアッラー。」

「Thank you for everything.」

「おう、グッバイ。チャオチャオ。」

「チャオチャオ。」

ほんっとうに君は冷たいね(笑)

嘘でもいいから、何かこっちの気持ちがよくなるようなこと言ってくれてもよくないか。

一言でいいから言えーーーと思いつつ話したんだけど、彼はブレない。全く。

英語がそれほど得意じゃないってことを差し引いてもドライだ。

もうちょっと彼のことをよく知りたかったなぁ。

私の出会ったチュニジア人の中では断トツ異彩を放っている。

全く読めない人だった。


この電話で動揺したのか、メトロは反対方向に乗ってしまった。

男の人がホームに連れて行ってくれて、乗りなおした。

バス停で、どのバスに乗ればいいか聞く。

まだ誰も乗っていないバスに一人座わって待つ。

若いポリスがしばらく入り口にたたずんでいたが、そのうち乗り込んできた。

夜に薄暗いバスに女一人乗っているので危ないと思ったんだろうか。

「英語話すの?」と聞かれた。

「少し。」

「フランス語は?」

「できない。」

そう答えると、ポリスはそのまま黙ってしばらく座っていた。

気まずい。

普通の人なら気軽に話しできるけど、ポリスとおしゃべりはさすがにいくら図々しい私でも。

ポリスはそのうち、ゆっくりとバスを降りて行った。


次に普通のお兄さんがエアポートに行くの?と聞いてきた。

イエスと答えると、後ろのバスが先に出るよと教えてくれた。

そのバスは既に結構人が乗っている。

またしてもバスのステップが高いので一段づつえっちらおっちらバゲッジを持ち上げていると、ニット帽をかぶったお兄さんが見かねて引っ張り上げて席まで持って行ってくれた。

座るとチケット?と言って後ろにあるブースで買ってきてくれた。

親切だわ~。最後に空港までの道すがら沢山の人に親切にされて心があったまった。

バスはほんの20分弱でエアポートに着いた。

またしてもお兄さんがバゲッジを持って降りてくれて、カートに載せてくれた。

そのままとっとと行ってしまった。

かっこいいね。どうもありがとう。


で、こうしてエアポートのベンチでこれを書いているけど、この期に及んでも、チュニジアを去るなんて信じられない。

ずっとこの国にいる気がしてるのに。1か月間で、すっかりここに馴染んでしまった。

2階は人も少なくて寒々しいので、下にいる。

1か月前、ここから始まったんだなぁ。感慨にふけってしまう。

沢山の町を訪れて、沢山のホテルに泊まって、沢山の人に出会った。

なんだか、毎日楽しくて、パーフェクトな旅だった。

いつもチュニジア最高!サバク最高!って叫んでいた気がする。

なんで日本に帰らなくちゃいけないのか全くわからない。

日本に戻って、私は生きていけるんだろうか。

最高って思っているうちに離れるのが一番幸せだって知ってるけど、チュニジアに恋している今はひたすら悲しい。

今はただ飛行機が欠航して帰国が遅れることを祈っている。




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