砂漠ツアーに参加
★ドゥーズ再び
朝、髪を洗って外に出る。変わらないドゥーズの町。
やっぱりいい町だなぁ。改めて思う。恋人に久しぶりに会ったかのような喜び(笑)
前回買い損ねたチュニジアスタイルの皮靴を買いに。ズックみたいでかわいいのだ。
その靴を見せたくてナセルの店に向かう。
向こうから、トゥアレグ姿の人が歩いてくる。ナセル?と思ってじっと見ながら歩く。
視力悪くなったなあ。だいぶ近づいてから違う人だとわかる。
彼はナセルの店と同じ並びの店の前の小さな椅子に腰を下ろした。
彼も私が見ている間ずっと視線を合わせていたから、結構長い時間見つめあってしまったような(笑)
そのまま通り過ぎるのもなんなので、服を指して
「トゥアレグ!」と言う。かっこいいね、という気持ちで。
彼も何故自分を見つめるのか不思議だったんだろう。トゥアレグ好きとわかったのか、ここでやっと笑顔を見せる。
お店を見ていけと言ってくれた。ナセルは店内なのかいないのか、姿が見えないので彼のお店で時間をつぶそうと思った。
この人、背がとても高くてとんでもない美形。
面長で浅黒くてイケメンなので、「チュニジアの速水もこみち」と密かに命名。
その時、ナセルがどこからともなくやってきた。どこから出てきたの?
砂漠の人達はいつも気配もなく現れる。本当に不思議だ。
もこみち君には悪いけど、ナセルに挨拶して先にナセルの店に入る。
ナセルは再会を社交辞令的にはしゃいだり喜んだりすることもせず、相変わらずクールだ。
砂漠ツアーに参加することになった経緯を10秒で説明。私の靴をみて、
「同じの持ってるよ。」とショーウィンドウの裏から出して見せてくれる。
「こないだ何も買わなかったから、今回はこのお店でなにか買いたいんだ。トゥアレグの財布とかネックレスとか。」
「as you like.」
別に喜ぶ風でもなく。本当に君は、感情がフラットと言うか、クールだよね。
彼から感情を表す言葉とか、形容詞を聞くことはほとんどない。
実質的というか、事務的というか。私の出会ったチュニジア人の中では結構変わっているタイプ。
これまた事務的に12時半に来い。ちょっと出かけようと言う。
時間の確認はきっちり。
「あなたと約束するときは時間にナーバスになるよ。」と言うと前回のことを思い出したらしく、
「俺は9時半って言ったらきっかり9時半に来るからね。」と笑った。
お店を出ると、さっきのイケメン兄さんがいたので彼のお店を見せてもらう。
ナセルは友達なんだ、いい奴だよと言う。
前回この人に出会わなかったのは何故なんだろうなぁ。まぁお店もシフトでいつも同じ人じゃないからね。
とりたてて変わったものはないけど、例のごとく、端からゆっくりと見せてもらう。
彼も私に合わせて一つ一つ説明してくれる。
フェスタに使うヤギの皮を張ったタイコを叩いてくれた。いいねぇ。砂漠最高!
話していてハイタッチをしたら、すごく大きくて分厚い手で、こっちの手がじんしん痺れてしまった。
背も高くてガタイもいい。強そうだなー。そしてこの美貌にアーモンドの目。
黒いダイヤモンドだ。この目で口説かれてNOと言える女性はこの世にいるだろうか。
黙っていたらフォトジェニックなのに、本人は自覚がないようで、気さくな土産屋のあんちゃんといった感じ。
セジュナン焼を見つけた。ヘタウマ的な人や魚の焼き物なんだけど、3個買うことにした。
ハッタダで2Dだったけど、ここは砂漠。4Dと言われた。3個で10Dにしてもらった。
良心的な値切りではないでしょうか。
知ってるアラビア語を使って話したら、兄さん大喜び。
焼き物を新聞に包みながら私の名前を連呼(笑)
写真を撮ろうと兄さんから言い出してくれた。ラッキー。
トゥアレグらしく、ターバンのヒラヒラでマスクをして目を残してキメポーズ。
アーモンドの目が光ってめっちゃかっこいい。
マスクを取ったのも撮らせてもらえばよかったな。とにかく、目の覚めるような二枚目だった。
ホテルに戻って砂漠ツアー代を払う。日本人の女の子が一人来た。
彼女も一緒に参加することになった。楽しみだな。
再び外に出ると、サムの友達に会った。コーヒーを飲みながら話して、時間間近になってナセルの店へ向かう。
近くでおしゃべりサムに出くわす。遅刻したら大変なので、なんとか振り切ってお店へ。
「サムと話してたの?」お店の中に入ると、そう聞かれた。ほんの1分も話してないけど。
私にはいつどこから見ていたのか見当もつかないんだけど、チェックしてるのね。
マジックリン的なものと新聞を使ってガラス拭き。へぇ~掃除するんだ(笑)
よし、行くぞ。えっどこに?ちょっと待って。
スタスタと黙って歩くナセルの後をひたすら追う私。
けっこうせっかち。で几帳面。
「ご飯、食べるでしょ?前に食べたロサがいい?そこのベルハビブもいい店だよ。」
と言ってずんずん入っていく。
「いいかい?俺は店に戻ってちょっとお店を見てから戻るから、先に食べてて。わかった?」
はい。という返事しか用意されていないでしょ。
メニューは英語メニューの裏に日本語メニューも。びっくり。
久々にオジャを注文。それとハリッサとサラダチュニジアン。野菜は新鮮でおいしかった。
食べていると、ナセルが戻ってきた。よかった。このまま一人かと思ったよ。
「店に他に人がいない。注文しておくから後で食べる。」と言ってまた店に行ってしまった。
サラダをちょっとつまんで。えー。残念だなあ。一緒に食べる最後の機会なのに。
食べ終わってスークに言ってみると、ナセルは中のカフェで誰かと話していたので、ホテルに戻ることにする。
途中でさっきのサミの友達にまたつかまり、道で話しているとナセルが来た。
きっとスークに来た私を話しつつも視界の端で見ていたに違いない。
「食べた?」
「食べたよ。」
来いと合図してまたスタスタと店に向かう。うぅ、なんて男らしいの。
自分がマゾみたいに思えてくる(笑)
「今日は3時からツアーに行くんでしょ?バイクで友達と行くよ。」
まじで!嬉しい。もこみち君と一緒に来てタイコ叩いて歌ってくれたら最高なんだけど。
「場所わかるの?」
「当たり前じゃん。」そっかぁ。そーだよね。
お店の外にでるともこみち君が座っていた。ナセルも隣に座る。
リッチーサンボラともこみちという目の保養。贅沢だね。バチが当たりませんように。
「僕は明日もここにいるからね~♪」とトコトン陽気なもこみち君。
何を考えているのかわからない無表情なリッチー・・・もといナセル(笑)
二人は友人らしいけど、いつもどんなことを話すんだろう。
二人のキャラクターが違いすぎて想像がつかないなあ。
3時になり、砂漠へ。キャメルツアーの始まりだ。
スークを抜ける際にお店を見るとナセルはヨーロピアンツーリストと話していた。売れますように。
砂漠の入り口からは、ラクダ。久しぶりだな。
参加している日本人のうちの一人がとても気配り上手な人で、みんなのカメラを預かって写真を撮ってくれた。
2時間ほどラクダに揺られてキャンプ地へ到着。
おしりが痛くなるのでこの位の時間でちょうどいい。
夕陽を見ながらまたしてもみんなで撮影大会。
自分もフリースのタタウィーンマントをかぶってパチリ。
美味しい夕食の後、星を見にみんなで散歩。
モロッコのサハラで見た星空を思い出した。
そうそう、空ってこんなにたくさん星があるの。思い出したよ。
流れ星、天の川。うーん、やっぱり砂漠最高。
マントをかぶって寝っ転がって空を眺めた。
そして砂漠とセットのたき火とタイコと歌。
ナセル来ないなぁ。彼の性格上、時間や約束をたがえる人ではないから、理由があるんだろう。
テント組と、中で寝る組に分かれて、お休みなさい。
砂漠の朝、早起きしてみんなで日の出を見る。
まだ7時前だけど、ツアーのシブいおじさんが粉をこねている。
そのうちにご来光。みんなでこねた粉を焼くところを見学。
砂漠の砂を少し掘って、火を起こして、その中に生地を入れる。
上にも熱い灰をかけてしばらく待つ。
その間に、チュニジアに詳しい日本人からこの国の結婚事情を聞いた。
女性の方が男性の人口よりずっと多いのに、男は資金を作らなければならないからなかなか結婚できないとか。
「こんな渋いおじさまが毎日こんな風にホブス(パン)を焼いてくれたらそれだけで幸せなんだけどなあ。」
「それよ!外国人はお金なんか要らないって言うから大人気なのよ!」
そっかぁ。ドゥーズにも日本人のお嫁さんが数人いるらしい。
そう言えば、スークで奥さんが日本人って言ってた人がいたな。
彼がこれはイリュージョンなんだって言ってた。
「あなた、もうそのマジックにかかってない?結婚のイリュージョンにかけられられないように気を付けてね!」
むぅううう。実はこんな町でのんびり暮らしたいなぁって思い始めてた(笑)
実際生活するとなったら色々面倒や大変なことだらけなんだろうけど、ちょっと夢見ちゃったよね。
パンが焼きあがった。ベタベタの生地に灰が付くんじゃないかと思ったけど、焼きあがってパンパン!ってはたいたら全部落ちて、美味しそうなホブスが!
焼きたてホカホカのこれにジャムやチーズ、ダット(なつめやし)、ティにコーヒーで朝食。
またラクダに乗って町に帰還。
ホテルでシャワーを浴びたりパッキングしたり。
旅が終わる私は、荷物を減らすために長期滞在の人に要るものをあげたり。
これからミデス、タメルザ方面へ皆で4WDをチャーターして回ることになっている。
私も頭だけ洗って歯磨きして、11時に出発なので、急いでナセルの所へ。
お店をのぞいたけどいない。もこみち君もいない。
他の人が来て、ナセルを呼びに行ってくれた。
なかなか来ないので、またサムの友達としゃべって待つ。
やっと向こうからナセルがやってくるのが見えた。ボスと話しながら。
なんだかんだ言って、ナセルっていつも忙しいのかも。
先に中に入る。なんだか浮かない顔。呼び出して迷惑だった?
「元気?」
「うん。頭痛がするんだ。」
「薬は?私持ってるよ。」
バッグから薬のシートを出すと察しのいい彼はすぐにハサミを出して、一回分をチョキンと切り取った。
「ゆうべ、砂漠に行ったんだよ。」
「うそ。来なかったじゃない。」
「君らが着く前に行ったんだけど、そこにいたやつがダメだって。」
あーきっと仕切ってたおじさんだ。残念だったなぁ。
でも理由がわかってよかった。やっぱり彼は約束を守る人。
「タトゥーだよね。」
私が帰る前にもう一度書き直して欲しいって言ってたのを覚えてた。
頭痛いんだからいいって言えばよかったのに、私も10分しかないから焦って気遣う余裕がなかった。
インクの質がよくない。にじむ。
ちょっと待ってと新しいインクを取りにいく。
時間がないからいいと言ったけど1minitと言って出てって、すぐ戻ってきた。
描きながら、今日の予定を聞かれる。
これからカトカト(4WD)でタメルザ、ミデス、シェビカへ向かうんだ。
これが私の旅の最後の山場だ。
「ホリディもあと3日でおしまいだよー。」といってもああそうだねとつれない。
淋しくなるなとか、また来いよとか、嘘でも何か無いんかい。
描きながら、こちらを見もせず、ぼそっと
「あんまり誰とでもしゃべるな。他の町の奴らはメンタリティが違うから。」
うん。知っているけど、うれしい。
「同じチュニジア人じゃない?」って言ってみる。同じチュニジア人でも
「not like here.」
そうだね。素直に返事をしておく。
描き終わって、ハイ次はネックレスねとテキパキ。
どんなのがいいの?と聞かれるも答えを待ってくれない。
前に「このデザインは俺の村のシンボルなんだ。」と自分のしているのを見せてくれた。
同じデザインのがよかったんだけど、それを言う間もなく、せっかちな彼はもう在庫の引き出しからじゃらじゃらと出している。
ハイこれと有無を言わさずつけてくれる。鏡を見てみろと言われて映してみる。
ナセルが選んでくれたんだから、これでいいや。
そこにボス登場。不愛想なナセルが更にビジネスライクになる。
気の利かないおっさんやなー。私の為にちょっとどっか行っててよ(笑)
「いくら?」
「15」ナセルはこちらを見もせずに答える。
20D札を渡す。おつりを取り出そうとする手を止めてありがとう、さよならと言った。
アラブ式に頬と頬を4回。
「take care.bye bye.」とそっぽを向いたまま、そっけなく言われた。
最後までツンデレなナセルだった。




