やはり俺の仮説ではその結論は間違っている
ジュリウスからいろいろと今の状況を聞けたルートスとリリィエストはフライブルの家に戻っていた。
ジュリウスは白狼討伐のクエストのため南の草原地帯に行くとギルド本部を後にした。
今ルートスはソファーに体を預けだらりと四肢を伸ばしている。
その向かい側ではリリィエストが淹れたお茶を冷ましながらちびちび飲んでいた。
「ルートスはどうするの?」
「あん?」
リリィエストはルートスにそう問いた。
どうするのとは先ほどジュリウスから聞いた四獣クエストのためのクエスト取り合い合戦のことだろう。
ルートスは反り返った体を反動をつけて元に戻す。
「ん~~あれな~~。俺たちはあの合戦には参加しないだろうな~、少なくとも俺はそのつもりだ。」
「よかったの?四獣のクエスト結構やりたがってたよね?」
リリィエストはルートスの答えを少なからず予想していた。
今のリリィエストは単純にあの合戦に参加しようとしないルートスの心の内が知りたかった。
「ジュリウスの話が本当なら、ジュリウスたちのギルドに連れて行ってもらえばいいからな。あそこは俺たちのギルドとは違って人数も統率も実力も備わってるから、貢献度争いなら負けはしないだろう。」
「そっかぁ・・・そういえばジュリウスのギルドってどんななの?サクヤって人がギルドマスターって言ってたよね?」
「ああそうだよ。ジュリウスが所属しているギルド”獅子風神”のギルドマスターがサクヤだ。まあ俺たちと一緒にいるならいつか会うことにはなるだろうから紹介はその時でもいいか。あ、ちなみにフィリアも獅子風神のメンバーだぞ。」
「え、フィリアも?」
驚くリリィエストにルートスはジュリウスとフィリアがそのギルドの中でもトップクラスであることを教えた。
いつも整然としてたまに弱気なジュリウスと快活で粗暴な友達のフィリアがとても強いことを知ってリリィエストは驚きを隠せない様子だった。
そうしてそれからリリィエストがステイジアで働いていた時の話になり、ルートスは相変わらずな二人の様子を時々笑いながら聞いていた。
小一時間ほど話した後ルートスはゲームをログアウトした。
家で一人になったリリィエストはマッピングでの疲労が思い出したかのように襲ってきてそのままソファーに横になって眠ってしまった。
そんなゲームの世界から変わって現実世界。
ルートスの現実側の青年は四獣のクエストについて情報を得るべく情報サイトから動画配信サイトまでくまなく探していた。
ゲームの中で出た情報誌が二、三時間前だとしてもその情報はそれ以前にその著者が得たもののはずである。
その情報もしくはそれに代わる新しい情報を探していたところ動画配信サイトに載った一つの動画に目が止まった。
それをクリックすると動画が開き、つぎはぎに編集された動画はいきなり本筋をそこに映った三十代の男性が淡々と話し始めた。
『我々が製作したフィジカル・ファンタジアに新たな要素を追加することとなったことを諸君らは既存であるだろう。ただそれが自分に何をするでもなく降りかかってくれるとは、努々思わないでいただきたい。現実と仮想の境界を限りなくなくそうとした我々のゲームにおいて、新要素は自らの手で勝ち取らなければならない。いつの時代も新しき物はそれを欲し、望み、努力を積んだ者にしか手に入ってこなかった。そしてそれはいつか普及し、当たり前になっていく。君たちにはそんな”当たり前”に対し、自らの手でつかみ取る機会を我々は与えよう。』
続きがありそうだったがこの動画ではそこまでしか載っていなかった。
おそらくあの情報誌の著者はこの動画を見たのだろう。
視聴後に止まる画面に残った男性が言ったことと、あのゲーム内の合戦は意外にも言いえて妙だった。
しかし青年にはゲーム内で感じた違和感、そしてマッピングの時に導かれた一つの仮説がどうしてもジュリウスの結論を否定する。
その青年は再び思考を巡らせるべく、ゲームとは違う黒髪を無造作に掻きながらイスにもたれかかり大きくため息をついた。




