いつもの暴走にも困ったものです!
リリィエストとエリスの一件以降特に取り立てることなく三人は馬車の元まで戻り今に至る。
午前のような進化途中のモンスターに会うこともなく、マッピングを遂行していった。
一対一の正面戦闘が相変わらず苦手なエリスだったが、幾度の戦闘の中で隠密行動の技術が抜きんでていることが分かった。
攻撃が浅いので暗殺とまではいかないものの、死角を動き背後に迫り奇襲をすることがエリスの誇れる武器になりそうだった。
それを見ていたルートスも指導を正面戦闘のいろはからいかに大ダメージを与えられるかにシフトしていた。
戦闘に自信なさげだったエリスも自分の強みを自覚できて嬉しいようで、ルートスの指導を今まで以上に真剣に聞くようになっていた。
話をしているうちに日は傾き森はどんどん薄暗くなっていった。
森の中は日の光がまともに届かなくなったことでより暗さを増していた。
ラズリ、シャナ、ケータの三人はもうすぐここに着くと、ルートスにメッセージを入れていた。
その間、エリスはルートスに戦闘の指導・・・ではなく勉強についての話をしていた。
リリィエストと仲を深められたことがきっかけだろう、今まであったルートスに対する距離感が少しだけ縮まったことでそんな話も聞けるようになった。
成績が中の上くらいのルートスも、一緒にうんうん唸りながらも丁寧に教えてあげていた。
そんな微笑ましい光景をリリィエストは少し妬ましそうに見つめていた。
三人が馬車に戻ってから数十分ほどでラズリたちも戻ってきた。
三人とも疲労困憊の様子でケータは武器を放って焚火の前に倒れこみ、ラズリはリリィエストの後ろからなだれ込むように抱き着いていた。
三人の中で一番しっかりしているシャナでさえ弓を置きその場で足を投げ出して座り込み大きくため息をついた。
「どうした、そんなにヤバい状況でもあったのか?」
ルートスが疲れ果てた三人に尋ねるがケータとラズリは無反応で、空を仰いでいたシャナが姿勢を正して返答した。
「いやなに、危険な状況だったわけではなかったのだけど・・・成長した白狼やら山猿やらに遭遇してね。地形的にラズリが思うように戦えなくてちょっとだけ苦戦してたの。」
ラズリは基本開けた土地で距離をうまく使って戦うスタイルの剣士だ。
草原地帯のような何もない広い場所ならともかく、木の密集した森の中では動きが制限されて好きに戦えなかった。
「その上、山猿の成長後のが厄介で・・・ケータもあんまり活躍できなかったのよ。」
真っ直ぐ突進してきて攻撃をしてくる白狼とは違い、山猿は深追いはしてこないタイプである。
それゆえカウンターを得意とするケータにとってはタイミングの掴みずらい相手で、ただの小型の山猿ならばカウンターするまでもなくただ切り落とすだけなのだが中型や成長したモンスターではそうはいかない。
ヒットアンドアウェイで警戒しながら戦われたおかげでなかなか決め手に欠けていたのだ。
それでもフィニッシュはシャナの援護射撃による足止めで何とかなったのだが、好きなように戦えず振り回されたことで体力も気力も持っていかれたようだ。
話を一通り聞いたルートスは一人考え込み始める。
誰から話すでもないその空間は静寂に包まれたが、寝転がるケータの腹の虫が低く鳴く音が響いた。
「ご、ご飯にしましょうか?」
エリスがおずおずと聞くとケータが目を光らせて起き上がった。
「飯!エリスの飯っす!」
元気よく復活したのはケータだけではなかった。
ラズリは体はリリィエストに抱き着いたまま顔をエリスに向け右手を出し親指と人差し指を伸ばして言った。
「エーリスゥ、そこは『ご飯にする?お風呂にする?それとも、あ・た・し?』って言わないと~。もちろん私はエリスをいただくけどね!!」
ラズリの暴走も相変わらずだった。
「ラズリ、エリスをあんまりいじめちゃだめだよ?それにそういうのはエリスのお婿さんしか聞いちゃいけないんだから。」
わたわたして慌てるエリスを見てニヤニヤと笑うラズリを注意したのはシャナではなくリリィエストだった。
しかしそんな注意も受けとめずラズリは真面目な顔で続ける。
「それなら大丈夫。エリスは私の嫁だからモーマンタイ!」
「・・・はぁ。シャナも大変だね。」
いつになくフルスロットルなラズリの妄言に今まで抑止してきたシャナの苦労が思いやられて同情する。
当のシャナには聞こえておらず、自分の方を見ているリリィエストを見て小首をかしげるだけだった。




