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魔法の失敗はいつかの成功に繋がりますか?

「んなぁあああもおおおお、うまくいかないよおおおお。」

太陽がようやく顔をだし様々な生き物が活動を始める清々しい朝。

朝靄が立ち込める森から1つの叫び声が響き渡る。

辺り一帯が木々で囲まれおよそ人が住んでいるとは思えないような深き森のとある場所、そこに一軒の家があった。

木造二階建てのログハウスのようだが塗装がされていなくTHE木、という感じの一軒家。

灯の見える一室の窓からは煙が立ち込めり、先ほどの絶叫と相まって何かに失敗したことが伺える。

その後幾何もせずに一階の窓や扉がすべて開けられ、玄関から1人の少年が煙まみれで出てきた。

「まーたやり直しだよぉ・・・掃除もしなきゃなんないし・・・」

煙まみれの少年は服の汚れを手で払いながらぶつぶつと文句を垂れていた。

男の声というには少々高めで、背丈も少年な彼は腰まで伸びた髪をブンブンと振り髪についているほこりを落とす。

あらかた綺麗にし終えて、少年は草木生い茂る地面に座り込み天を仰いだ。

「はぁぁぁあ。いつになったら異世界にいけるんだろうなぁ。」

少年の名前はリリィエスト、異世界を夢見る魔法使いだ。




異世界という言葉が認知され始めたのは何も最近のことではない。

大昔から魔法の失敗により異世界へ行ってしまう人は少なくなかった。

だが異世界へ行ってしまった者が帰ってくることは稀な出来事であった。

それゆえに異世界へ行ってしまった者は死んでしまう、と考えられていた。

未踏の地に進んで行きたがる者はおらず、いつしか『魔法に失敗したら異世界にいっちゃうぞ』という子供を戒める常套句になっていた。

リリィエストも小さい頃はそのように言われて育ってきた。

そんな中一人の人物が一冊の本を書いた。

その本とは異世界から帰ってきた数人から異世界について聞き、その内容を書き表したものだ。

その本には人と同じ形をした翼をもつ人間、鉄でできた高速で走る乗り物、魔法なしに光る物体と様々なことが記されていた。

好奇心に掻き立てられた魔法使い達は異世界へ行く方法を魔法の失敗ではなく成功として実現させようとした。

そして異世界へ行けるようになったのは本の出版から数十年が経ったころだった。

これで誰もが異世界に行けるようになったーーーというわけにもいかなかった。

その理由は二つ。

一つは異世界の行き方だった。

異世界に行くにはそれ専用の携帯可能な魔法具が必要だった。

その魔法具に魔力を通さなければいけなかったのと、その魔力がそこそこ膨大だったことから魔力を持たない人間と保有魔力量が少ない魔法使いはそもそも行くことができなかった。

そしてもう一つが魔法具を一つの商品としてしまったことだ。

今現在異世界に行くための魔法具は一人しか作れず使用回数も2~3回と少なく、異世界から戻ってくるときのことも考えると一回行って帰るのに魔法具一つという効率の悪さだ。

また魔法具を作るのにも大量の魔力を必要とし、大量生産ができなかった。

付け加えてその魔法使いと仲が良い人間が魔法具を商品として販売したのだ。

その値段があまりに高く、貴族や名家でもないと手が出せなかった。

リリィエストもその内の一人であったが、どうしても異世界へ行くことがあきらめられなかった。

その魔法使いに会って個人的に頼もうとしたが、居場所がわからず断念。

どうしようか悩んだ末出てきた案が、自分でつくればいいじゃない、だった。

それからリリィエストは森の中に自分の家を建て何年も魔法の開発を研究している。




落ち込んだ気分を払拭し、元気良く立ち上がったリリィエストはこれからどうするか考えた。

「まずは掃除して、さっきの失敗をちゃんと記録して、それから・・・」

次々とやるべきことを考えていると、ぐうぅぅとお腹の虫が鳴いた。

「そういえば全然ご飯食べてなかった。よし、まずは町に行こう!」

タタタッと家の中に入り、身支度を済ませ再び外へ出る。

「じゃあ、いってきます!」

そう言ってリリィエストは森の中に走っていった。



森の中を歩いていると、小川が見えてきた。

この小川はもう少し下のほうで町につながる川とつながっていた。

リリィエストは小川の近くで何かを探すようにきょろきょろと周りを見回している。

「ん、あったあった。どれくらいひっかかってるかなぁ?」

近づくその先には一本の縄が木に括り付けられている。

反対側は川の中にあり、縄の先端には口の小さい入れ物がついていた。

入れ物の中には魚が大小合わせて五匹ほど入っていた。

中を見てリリィエストは笑みを浮かべ入れ物の口に蓋をし、木に括り付けた縄をはずして川下へと歩いて行った。



森を抜け、眼下に広がったのは一つの町だった。

町の入り口には『ようこそ、モグスの町へ!』と書かれた看板があり、リリィエストには見慣れたものだ。

右手に魚の入った入れ物を持ち、左手に木の実の入ったかごを大事そうに抱えて町の中に入る。

町に置かれた時計は十時を示していて、町の中心街はにぎわっていた。

さまざまな露店が中心街の道の両側にある中、リリィエストはその中の一つのまえで止まった。

店頭に並ぶ商品から魚屋だとわかるその露店の店主がリリィエストをじろりと一瞥する。

「おう、リリィエストじゃねーか!久しぶりだな、元気してたか!」

店主はニカッとした顔でリリィエストに話しかける。

「こんにちは、おじさん。今日も魚買ってくれる?」

そう言ってリリィエストは右手の入れ物を店主に渡す。

「バッカ言うんじゃねぇよ、俺とお前の仲だろう?ちょい割り増しで買ってやるさ!」

店主は原価の二割増しで魚を買い取ってくれた。

顔は少々怖い悪人面だが、昔からリリィエストに良くしてくれるいい人だった。

「ありがとう、おじさん!またよろしくね。」

「おう、また来いよ。今度はうちのガキ共とも遊んでやってくれな。会いたがってたぜ。」

「うん、近いうちに遊びに行くよ。」

じゃあな~、と店主が手を振って見送る。

リリィエストも振り向きながら手を振り返す。




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