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2014.12.4

誤字訂正しました。


ご報告、感謝致します。



ついでに、プラスあるふぁー、させていただきました!





 私、ベティことレベティアナ・リツァーデンは、心身共に疲れていた。


 疲れを癒すために多忙の中、わざわざ時間を割いて訪れたのは私専用(プライベート)庭園(ガーデン)。庭全体を見渡せる場所にはお気に入りのテーブルセットが置かれている。

 このテーブルセットは三年前に両親から贈られた物だった。錆に強いという特別な合金製の特注品でこのガーデンに良く馴染む白のテーブルセットは、オリジナルの模様が施されている。そしてそれは、母が私を思ってデザインしてくれた。



 そのテーブルの上には、自らが用意した淹れたての紅茶がまだ温かそうに湯気を立てており、それと共に上品な香りも風にのって私の鼻をくずぐった。これと風景を合わせた空間が、私の癒し空間その一だった。



 

 こうして、今日も疲れを少しでも取ろうと癒されモードに突入しだした矢先、事件は起こりました。

 はい、過去形ですよ。


 言わずもがな、その理由は目の前の御仁のせいでございますよ!!










 ********



 時は遡ること数分前…。


 生垣の向こうから現れた、花も恥じらう美青年。




 満面の笑みをその紅顔にきらめかせて近寄り、当たり前のように私の正面に座ると、どこからか持ってきたティーカップに当たり前のように私の紅茶をそそぎ、そして当たり前のように目の前ので飲みだした、このスットコドッコi……否、この青年。何を隠そう、私の二番目の兄でございますyo。





 彼の名は、グレイシス・リツァーデン。

 リツァーデン侯爵家第二子次男として産まれた彼は、今年で十四歳。父譲りのその類稀なる武才を生かし騎士となるべく若干十歳にして家を出て騎士団の養成学校へ入った。

 剣武術養成学校は全寮制度だったので、彼もそうせざるをえなかった。その当時、年の離れた一つ上の兄と私たち下の兄弟の面倒はいつも彼が見ていてくれた事もあり、彼とのお別れはそれはそれは壮大な涙のお別れシーンだった(主に、下の弟ズ)。


 入学してからの兄の成長は目まぐるしいものがあったと、当時彼を担当していた師はいつか私に語ってくれたことがある。

 メキメキと頭角を現し、上級生をも凌いでしまっていた彼は、色々なやっかみも多かったらしい。しかしソコはかとなく切り抜け、その後は勿論だが主席で卒業を果たした。

 噂を聞きつけた将軍に腕を買われて、そのまま騎士団に入団。そこでも彼の社交性が吉と出て、瞬く間に出世していった。そしていつの間にか史上最年少での我が国の第一王子の近衛隊長であり、側近という高官を勤める程になったのである。




 そんな兄は、結構マメな人だった。

 忙しい勤務の合間をぬって、手紙はしょっちゅう届いていたし、休みの度に少し離れていた生家(ここ)にも顔を出してくれていた。






──そんな、忙しい筈の兄がナゼ、ココニ…??






 私の疑問はそこだった。



 この次兄は、身内に対しても礼儀を忘れず、いつもは必ず手紙にて先触れを出す。

 それが、確か今回は無かった…はず。






──アレェ、可笑シイナー…。






 疑問はさらに先日貰った手紙の内容。


 先日届いた手紙には、確かにこう書いてあった。

 曰く、『あのアホが、視察と称して隣国のグルメツアーを決行しようとしている』と。


 ちなみに彼の称する〝アホ〟というのは、他でもない主君と呼ぶべき我が国の第一王子の事である。

 彼とは友人のような関係であるが故のものなので、本人は何とも思ってはいない(断定)。もっとも、彼以外の人間が公然とこの言葉を吐けば、不敬罪として死刑は免れぬだろうが。




 元来、我が国の第一王子は真面目で国民からの支持も厚い将来有望だと言われている。しかし実際に仕えている次兄からすれば、そんなものは世迷い言で、『アホ』のこの言葉で言い尽くせる御仁らしい。





──はて、この国の行く末は大丈夫なのだろうか…。





 何て思っていても、いくら兄でも流石に問うことは叶わなかった。

 しかし実のところ、あながち間違いではないのでは?と思うことも多々ある。

 それは、兄から事細かに語られる一連の騒動(もはや災害でしかない…)は、とどまることを知らないからだ。



やれ、王子がまた逃げた…

やれ、王子がすっぽかした…

やれ、…エンドレス。



 途中で手紙を読むのをやめてしまった程だったそれ。もはや、サボっているということしか綴られていなかったその内容に、呆れを通り過ぎて感心してしまった私であった。

 まあ、自国の王子なので内情はさておき、このくらいで勘弁しておくとする。



 さて話が随分違う方向に曲がってしまいましたね。ああそうそう、兄が手紙を云々でしたっけ。






──ん?間違っていたのかなぁ…。アレ?…まあ、いっか。






 そんなこんなで、傍から見れば一人百面相している私を、対面で面白そうに見つめていた同じ色の一対の瞳があったことなど、その時の私は知る由もなかった。

















4:了

今回も短いです。

そして、なかなか喋らせてあげられなくてゴメンよ、兄2。。。



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