動く
「困る!」
佳織は戸惑っていた。
ナンパなんてものは、空想の産物だ。
そう思っていたのに、自分は今それに出くわしている。
「いいじゃん、ちょっと抜け出して遊ぶだけだって!」
2人の男が私を挟んでいる。
俗に言うチャラ男?というやつだ。
好意をぶつけられて、嬉しくないわけでは無いが、しつこいのは嫌だ。
トイレから出てから、ずっと同じような言葉の繰り返し。
きっとこいつらがどれだけかっこよくても、私はついて行かないだろう。
「ほらー、行こうよ!!後で、連絡すれば大丈夫だって!!」
1人が強引に手を引っ張ろうとする。
誰も助けてくれない――…。
見てみぬふりのオンパレード…。
その時、伸弘が怒っている形相で近寄ってきた。
「伸弘!!!」
私と麻美を命の危機から助けてくれた、一生の恩人が…。
☆
ナンパ野郎に近寄っていく。
ああいう奴を見ると…なんと言うか…。
男なら、どうどうと誠意をみせ、潔い良いのが当然。
断わられたらすぐ引くべき。
まして、女の子相手に実力行使に出ようとしていて2人掛りなんて、
全くもってナンセンスだ!
「…それ俺の友達なんだけど?」
苛立ちを隠せず、そのまま勢い任せに言葉を発す。
そんな俺を気にくわない様子の2人。
香水のにおいが鼻についた、
適量であれば柑橘系の匂いが漂うはずなのにもったいないな。
「あんた、友達なのにしゃしゃってんじゃねーよ!」
思いっきり睨まれる。
が、それをさらっと無視して佳織を呼ぶ。
こんな奴らにせっかくのご飯を邪魔されたくない。
「ほらっ、早く飯食おうぜ!」
伸弘は怯えもせずに、佳織を笑顔で呼び、2人の手を離そうとする。
「は・な・せ・よ!!この子は卑怯者には釣り合わねー!!」
二人組みはそう言われて恥かしくなったのか、
「しつけーな、もういいわ。行こうぜ!」
「だな!」
捨て台詞を、店を出て行った。
「佳織!!…何もされてねーか?」
☆
この人は、他の人とは違う。
見てみぬふりだけじゃない…。
「大丈夫…ありがとうっ…。」
少し照れながら、伸弘の後ろを歩きながら礼を言う。
昔から、人とあまり深いつながりを持たず、私と麻美は生きてきた。
それこそ、親よりも長い時間を過ごしている。
本当に私を心配してくれる人は、数少ない。
もしかしたら…この人は…
「悪い!遅れた!」
伸弘と佳織が、席に着く。
「どうしたの、佳織顔が少し赤いけど?」
さすがに麻美は見抜いてくる。
「いや―――なんでもない。皆はメニューは決めたか?」
そう聞きつつ、佳織もメニューを取ろうと――…。
手が伸弘と、少し触れ合う。
「すまん!」
さっきあんなことがあったばかりで、少し過剰に反応してしまう。
そんな佳織の様子も伸弘は全く気付いていない。
みんなのオーダーが終了して、話は本題に入そうだった。
麻美の出番増やしたい!