驚きの先行眼
「ええ、実は麻美さんも佳織さんもファミリーレストランに行きたいと…」
『駄目だ』
きっぱりと言う。
そこまで、断言するには…何かかがあったのか?
『だって、ナンパされたらどうするんじゃ! 2人とも普段執事を呼ぶのを嫌がるからのう。不貞な輩に触らせとうない!』
執事を普段呼ばないのか…。
しかし……魔物……なるほどね…。
「いや、俺とマイケルさんが居るんで大丈夫ですよ」
『珍しいのう、魔池流がいるんか?』
「ええ、お迎えの方に来ていただいて」
『ほうほう…して小童よ?
何故行く事を内緒にせなんだ?内緒で行っても問題無かろうが…』
声からも感じる貫禄。
初めての経験だった…何も隠す事が出来ない。
嘘をつけばすぐにばれると真剣に思った。
2人を見ると、ソワソワしながらこちらの話を聞いていた。
「嘘を吐くのはあまり…いい事ではないですから」
それだけ言った。
『ふ~む、大島伸弘、調べた通りじゃな。では…孫を頼むぞ』
「(何を調べたのか、気になるけど…。)分かりました、お任せください」
『その言葉忘れるでないぞ!』
この時、こんな安易な発言をしなければ良かったと、
後悔することになるとは思いもしなかった。
「マイケルさん、ファミレスまでお願いします!」
伸弘は、そう言いつつ携帯を佳織に返した。
「あのじいちゃんを丸め込みやがったのか?」
佳織はシートベルトを引っ張って暴れていた。
「丸め込むっていうか、ちょっと過保護なだけのいいお祖父さんじゃないか!」
伸弘はそう思っていた。
「ふふふ…ハンバーグっ…」
麻美は何かをぶつぶつと呟いている。
ファミレスに到着し、4人は席に案内される。
お嬢様と執事と一般人は、目立っていた。
こういうファミレスには最強的に似合わない組み合わせだ。
周りからはひそひそ話で、
『あそこの雰囲気やべーよ』
とか、
『一般人だけ場違い』だの、散々言われていた。
こういう時この耳は本当邪魔だと思う。
「これは何ですか?」
機械的に麻美は伸弘に尋ねる。
なんだか、とても可愛らしく見える。
「あぁ、それを押すと店員さんが―――。」
ピーンポーン。
そう来ますか、プロですね。
店員さんに、謝って間違いだと告げに行ってから帰ってくると、
マイケルさんも、佳織も居ない。
「2人は何処に言ったんだ?」
「異国に旅に行きました!」
とびっきりな笑顔を伸弘に向けるが、
(しまった、少し見惚れてツッコミが少し遅れた…タイミングを完全に逃した。)
嫌な空気が流れる、まさに凍てつく波動。
このままじゃ、麻美がスベって大怪我をした事になる。
それだけは避けないと―――…………。
「主よ…嘘を吐いて、ごめんなさい。」
麻美は、神に懺悔していた!
本当に、掴めない子だなあ…
伸弘は一気に脱力し、ツッコミを放棄した。
すると、魔池流さんは何故だか、
おぼんに大量のコップを乗せて持ってこちらに来た。
「すいません、マイケルさん…何してるんですか?」
「え?これはお嬢様の様々なニーズにお答えしたく…。では!」
爽やかな笑顔を浮かべてコップを置き、更に持って来ようとする。
「まだ、ドリンクバー注文してませんよ!!」
頭の上に?マークがついていた。
一通り説明を2人にして、おとなしく座ってて貰い
佳織を探しに行く。
佳織はトイレに行ってたみたいで、その先でナンパされている。
祖父さんの先を見据える力の凄さを思い知った。