ブレイク・モラル
「大島伸弘様。現年齢17歳、誕生日3月3日、血液型A型、身長174cm、体重64kg、
現在の家族構成、お父様、お母様、お姉さま、伸弘様の四家族と、犬3匹…。先祖は有名な武家とかで……」
家族構成のところは、それ以上は何も言わなかった。
昔、ある事故でおじいちゃんを失ったのも知っているのかもしれない。
「たいした事無い、普通の家族ですよ」
伸弘はははっと苦笑いをする。
「ほうほう……分かった。ありがとう」
佳織は礼をする。
「どうだ?凄いだろう?!」
子供みたいに、凄い事をアピールしニヤっとする佳織。
「…凄いのは凄いが、れっきとしたプラバしーの侵害だ!!どっから調べてやがる!」
「天から!」
「意味が分からないし、答えにすらなってないんだが…」
そんなやり取りをしていると、
「食事は召し上がられたでしょうか?」
初老の男はバックミラーでこちらを見つめながら聞いてくる。
今の時刻はぴったり午後1時。
「いえ、まだですが…。そろそろ、家で用意しているかと」
朝は何も食べていないので、さすがに腹が減っている。
婉曲に家に帰せと言ってみた。
「伸弘様の実家には全て話は通しておりますゆえ……頃合ですしお昼を取りましょうか。宜しいですか、皆様?」
「すいません」
伸弘はついつい頭を下げてしまう。
「お顔をお上げください、お嬢様方の恩人ですから、礼をするのは当たり前でございます」
やはり、このミドルは格好だけでなく、内面までカッコイイと思った。
同性にときめくなんて…有り得ないと、言い聞かせる伸弘であった。
実は母さんがこんな無茶な話を、信じるのは伸弘自身のせいでもある。
人助けをたくさんやっているので、こうやってお礼に食事をとか、
金品を渡されたりもする。
普段は断わるのだが、
まれに、家の連絡先を聞いて、後日家族みんなご飯に招待されたり、
物をプレゼントされたりする。
※金品や物は丁寧に送り返している。
伸弘自身は、偽善とかそういうつもりでやってる訳ではなく、
本当に純粋な気持ちで人助けをしているのだ。
むしろ感謝されると、逆にこちらが助けられている気持ちになる。
そういう意味では等価交換だな、とも思う。
「そうだな!魔池流場所は何処にするんだ?」
執事さんは、マイケルというらしい。
外人さんだろうか?
……このマイケルという人の漢字をみると驚くだろう。
この、桜花町は田舎とは言っても
隣の壱花市とは近いので、結構不便はしない。
いくら近いとは言っても、車でも15分はかかるし、
桜花町はコンビニやスーパーは無いので、
週末にたくさん買い物をしなければならない。
「サン・デ・ミエーロは如何でしょうか…?」
え?サンフランシスコ?見えろ?
困った、高そうなところに入られると息が詰まる。
そこで、麻美が挙手する。
「どうか致しましたか?」
「私、1回ファミレスに行ってみたいです!!」
な、なんだってー!伸弘は驚いた、
(ファミレスに、行った事無いのか…)
「私も行ってみたいんだが!!」
佳織も勢いよく、手をあげる。
なんだか、目をキラキラさせている2人を見ると、
驚きという感情よりも可愛らしいと思ってしまう。
「しかし、伸弘様のお礼ですし…何よりご主人様に…。」
ここでも、伸弘は体よりも心が反応する。