失踪のプライバシー
キキーっと音をたてて、車が来た。
真っ赤なアルファロメオだった。
「新型ジュリエッタ…か? すげえ……」
伸弘は車を見ながら思わず呟く。
まだ、日本じゃ販売してなかった。
それに、アルファ147の後継台だったはずだ。
「あれはすごいのか?うちは車が腐るほどあるから全部同じにみえるけどな」
佳織は目を丸くして、聞きかえす、
後に聞くところによるとジュリエッタは橋田家のものらしい。
麻美を見ると、コクリコクリと頷いている。
やっぱり、この2人金持ちなんだ
始めて見たときも雰囲気がそんな気がした。
やっぱりこういう時の直感は当てになる。
「…このブルジョワがあッ! 何でまだ日本で販売してない車が家にあるんだよ!」
「私が知るかッ! 恐らく親父がどうにかしたんだろうさ」
「すげぇ……」
「きっと、私のお父様も持っているはずです。…要るのなら差し上げますが?」
麻美は、金の髪を左右に振りおろおろしている。
「何故に俯いているんですか?」
「いや…恐ろしい冗談だなって……」
そんな話をしていると、ドアが開いて、中から人が出てきた。
見た感じ、まさに執事…のような人だった。
言い切れないのは執事を見たことが無いからだ。
「お嬢様方、伸弘様…。お乗り下さいませ。」
「あれ…?…なんで俺の名前知ってるんですか?」
今思うと、こんな事聞かなければ良かったな…と思った。
「少々、調べさせてもらいました。」
にやっと、ニヒルに笑う男。
悔しいが、ナイスミドルの格好よい男だった。
「「教えて頂戴!」」
2人はジュリエッタのドアを思いっきり閉じる。
「もっと優しく扱え!車!!って、俺のプライバシーどこだよ?」
「ふふ…言っとくが、橋田家のサーチはすごいぞ?」
佳織は伸行の頬を指でぷにぷにと押す。
顔を振るい、伸弘は抵抗する…が
「お任せください。では、お話はお車で……」
初老の男は再び、ドアを開けて入るよう促す。
入って座るが、伸弘は逃げないように左右に挟まれる。
しかし、さすがアルファロメオすわり心地は最高であった。