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その男、長谷川 慶 ナリ

 「なんだ、てめえ?」

 「俺か? 俺はだな……――」


 段々と声が近くなってきた。

 みんなには連絡を入れた。

 声に近づくほど、足が速まる。

 狭い路地裏を駆け巡り、俺は最短ルートで2人に近づく。

 何個目の角を曲がっただろうか、目の前に開けた景色は……

 1人の男が立っていた。

 短い髪を少し吹いた風で揺らして。

 顔を……見る限りこいつは、長谷川だ。

 だが、ここで俺が名前を知っていると怪しまれる。

 そう考えていると、辺りに大中小と男が3人ほど地面に転がっている。

 顔面は強打されていて真っ赤な血が鼻から滝のように。出ていた。

 麻美と佳織は端で目をつぶったまま、うずくまっている。

 「お嬢様!!」

 俺は一目散に、お嬢様の元へ駆け寄った。

 「「伸か!!」」

 顔上げて、2人ともこちらに近づいてくる。

 だがどちらも、顔は暗い。 

「大丈夫ですか? では……少し下がっていてください」

 それだけ言うと、2人を後ろに下がらせる。

 まだ、この立って居る男が2人を助けたとは限らないのだ。

 安心は――――絶対に出来ない。

 「おいおい、酷いな! 君は!!」

 言葉に苛立ちを込めているかのように、俺に話しかける。

 「これは失礼を……どちら様でしょうか?」

 それを聞くと、男はぶつぶつと文句を言いながらこちらに寄って来る。

 「…これだから教育の行き届いてない奴は嫌なんだよ」

 (聞こえてんだよ…ボケが!!)

 しかし、ここで絶対にボロを出してはいけない。

 じっくりと、長谷川を観察する。

 「長谷川だ、長谷川はせがわ けいだ」

 佳織と麻美は俺のジャケットの裾をギュッと握り締めている。

 ちなみに、宿泊祭なので私服だ。

 だが、執事や専属係、護衛などはそれぞれの服を着ている。

 「これは……大グループの御曹司様ではないですか?」

 わざと大きく驚いてみせる。

 俺の驚いた様子を見ると、長谷川は口元を吊り上げた。

 「そうだ」

 言葉からでも、上から目線が感じられる。

 「これはとんだ失礼を……うちのお嬢様方をお助けになって下さったのですか?」

 この答えは勿論……――

 「当たり前だろう? あいつらは2人を車に乗っけて、誘拐しようとしてたみたい  だ」

 大体予想してた通りだ。

 恐らく、仕組んだのは全部、長谷川こいつだ。

 まず要因の1つ、捜索に出たときいきなり男たちが現れた。

 これは不自然なタイミングだった…が長谷川がちゃんと言い訳出来る。

 そう、全部お嬢様方を誘拐しようと計画したやつ等のせいにすれば良いだけ。

 だから、青崎・池上の2人もついでに行方不明にしたのだろう。

 そしてもう一つ、それはこの場所。

 どうしてこんな人目につかないところに現れたのか……

 お嬢様たちは移動した際に犯人と思われる奴らの車を使ったはず。 

 なら、何故こんな近場に?

 という、疑問が生じる。

 それにしても、お嬢様方をどうやって車に乗せたのだろうか?

 そこが疑問だ、後で聞かなくてはならないようだ。 

 不自然な場所、不自然な時間、不自然な行動……これは……。

 ――――が、

 「そうですか……それは本当に、ありがとうございました!」

 きっちり頭を下げる。

 まだこれだけじゃ、長谷川が犯人なんて言い切れない。

 「まぁ、構わないよ。……俺は2人の婚約者だし」

 しれっと答える。

 「そんなの聞いてないぞ!!」

 佳織が後ろから、威嚇しつつ反論する。

 麻美は、もう何も言わない。

 「でも、2人ともきっと……俺に惚れるよ?」

 容貌は王子の様だから、ナルシスト的な言動も似合っている。

 効果音にはキラキラキラとつきそうだ。

 でも、なんだかすっげー苛つくんだが…!

 「「それは無い(です)」」

 即座に後ろの2人は否定した。

 おっ、少しすっきりしたぞ。

 長谷川の顔が若干ゆがむ、そりゃプライドずたずただろう。

 そこで、

 「「「「おーい! プリンセスー!!」」」」

 クラスメイトご一行が到着した。

 それを見ると、長谷川は舌打ちをして捨て台詞を一言

 「また後で……」

 そう言って、クラスメイトの横を通っていった。 

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