自己紹介
それ以上聞くと、さらに心配になるので、
イヤホンを耳にさして聞こえないようにする。
「もうしばらく待ってくれ!」
ポニーテールの子はそういうと、こちらに向かって話しだした。
「紹介が遅れちゃったな…。えぇ…私は、橋田 佳織だ。佳織と呼んでくれ。そして、もうじ き高3になる。趣味は裁縫だ」
どうぞ宜しくといわんばかりに、再び手を取りぶんぶん振り回す。
腕が痛い、佳織は怪力のようだ。
「長瀬 麻美です。同じく高3になります。麻美とお呼びください。
趣味はボクシングです」
今度は麻美も伸弘の手を握る。
華奢な女の子の手だ。
…ん、あれ?ボクシングと裁縫?
この2人趣味が逆じゃないか?
「…今失礼な事を考えたな?」
佳織はキッと伸弘を睨みつける。
「いや、ちょっとだけ。趣味が2人逆になってるんじゃ…?ぎゃぁああああ、何か針が、壁に刺さったんだが?! 今、目狙ったよね?!!それ、もう裁縫じゃなくて、殺人だから、ってかどこに針仕込んでんだよ!」
「………裁縫大好きだからな」
それは答えになってないと思う。
「それに、『シュッシュ!!』麻美も俺に向かって『シュッシュ!!』パンチ打ち込まなくていいから!!」
佳織の針が終わると、麻美が軽快なステップで鼻を的確に狙ってくる。
「やめい、やめぇええい!」
伸弘がちょっときつめにツッコミを入れると
「すいません……」
しゅんとする麻美。
「俺、すげぇ悪い事した気分だ……」
そんなやり取りをしてると、
伸弘は自分の自己紹介することを、忘れていた。
まるで2人は昔からの友達のように親しみやすかった。
「おっと、自己紹介が遅れたな。大島伸弘だ。同じく高3になる、趣味は散歩と趣き探しだ。伸弘とか、伸とかで 呼んでくれ」
そういって礼をする。
こうして、一旦それぞれの自己紹介は終えて、再び雑談をする。
車が来るのは間も無くのことだった。