情報の取得
朝早く、俺たちは学園のグランドに出ていた。
「えーして…この長橋学園は…」
校長が話している。
幸い天気は晴れ、ピーチク、ピーチクと鳥たちが鳴いていて
春をまだまだ感じさせてくれる。
専属係や執事、メイドなどは制服ではあるが必ず主の近くに居るものだ。
だが、伸弘は今少しはなれたところで理事長…すなわち橋田潤一郎と居る。
「これが資料じゃ。」
真面目な顔をして資料を渡す。
「ええ…これが長谷川ですか…。」
見れば見るほど自信が無くなる。
もしかしたらお嬢様は、この人と結婚するかもしれないのだ。
容姿端麗で文武両道、あげくに超BIGNAMEの会社の跡取り息子である。
ただ、注意欄にはこう書かれている。
『危険!自分以外の人間をあまり信用せず人使いが荒い。また己の願望のためならどんな事もする。』
(俺の姉ちゃんみたじゃねーかよ…。)
その欄を見て、伸弘はげっそりする。
『また、卑怯な手を使う事も多々ある、嘘や偽装など…。』
これは、不味い。
もし、伸弘が嘘情報でも流されれば、
ここに来てまず日が浅いので危機に陥るだろう。
それだけはどうしても避けたい。
『…また乱暴なので、部下などを使って襲い掛かる可能性有!』
ますます危険だ。
「すいません、先に護衛許可お願いしてもいいですか?」
「ああ、既に許可しておる。嘘情報に惑わされるな、そこはもう手を打ってある。」
祖父様はにやりと笑う。
というわけで、嘘情報は気にしなくても良さそうだ。
「…えぇ…では出発してくだ……さい…ね?」
校長が号令をかける。
(あの校長…大丈夫かよ?)
「心配するな、あれは昔のワシの右腕じゃ!」
「心を読まないで下さい!」
「とにかくじゃ、しっかり頼んだ。」
そう言うと、手をポンと肩に乗せる。
「はい!」
ちょっとして、葵と麻美と佳織と合流する。
始めに行く旅館は紅葉旅館といって、この市内にある大きな旅館だ。
他のクラスの奴は、何か飛行機を使う人も居るらしい。
どう考えても…やり過ぎだろう。
「では、向かうか!」
今度は、佳織が号令をかける。
「「「「「「「おーーーー!!」」」」」」」
勢いのある声が響く。
って――――あれ?
何か3人分の声量じゃないよね。これ!
伸弘が後ろを振り返ると、クラスの全員が団体になっていた。
「私が呼んだの!」
葵が、中央付近から手を振る。
「「伸弘君…こっちへいらっしゃい!」」
出た―――我がクラスでも稀な肉体の2トップ。
通称、ガタイブラザーズ。
初日に伸弘にキャラメルクラッチを食らわせたのだ。
「「「「あがががががががッ!!」」」」
後ろには何やら怪しげな一団が居る。
(これ…全部クラスメイトなんだ、俺は絶対こうにはならん。)
話を聞くと、葵がせっかく佳織と麻美が変わってきたことだし
と言う事で、勿論了承を取ってクラスメイトを同じ旅館に呼んだらしい。
行動するのは3泊4日の2日目までと言う事だ。
伸弘自身は全く問題有りだ。
ここで、他のお嬢様やお坊ちゃまを怪我させるわけにはいかない。
不審な人物が居ないか確認して、歩をみんなで進める。
確認した限りでは問題ない。
それにここには何人かの専属係や護衛係がついている。
ただ、もしかしたらどこからか情報が漏れているかもしれない。
何かあるとしたら紅葉旅館が
様々な理由を付けれるので、妥当な所だが…。
取り合えず、団体一同は歩きながら紅葉旅館を目指す。