外出!前半戦!
ガタン、ガタンと電車に揺られる。
外の風景は目まぐるしく変わって…―――
座ってる4人はそんな景色も見ずにおしゃべりをしている。
心なしか、近づいてくる町に気持ちが高ぶっているようだ。
駅で止まって、人が入ってきた。
そこで伸弘は一人の御婆ちゃんが目に入ってきた。
座る席が無くて、立っているしかなさそうだ。
「あーすいません。」
こういう時はすぐに、席を譲る。
気が付けば体が動いている。
「はい?」
御婆ちゃんは眼鏡を少しクイッとあげて伸弘を見た。
「席、どうぞ!」
「いいんですか?」
「当たり前じゃないですか。」
そう言って、伸弘は席を譲った。
「悪いな、伸弘。」
佳織が、残りの2人の代弁をした。
「いいや、構わないぞ。」
つり革を手に持ち、またしばらく揺れる。
今度は何故か会話が無かった。
『次は、壱花中央、次は、壱花中央……。』
そのアナウンスを聞いて、4人揃って電車を降りる。
中央だけに、ここで沢山の人が降りた。
町に出ると外は春の陽気に包まれていた。
「んで、始めはどこに行くんだ?」
この3人の事だ……ノープランという可能性もある。
「見たいものがあるんだ。」
まずは、佳織が挙手して言った。
そんな佳織を先頭に立たせて、案内させる。
しばらく歩くと、大型のゲームセンターが見えてきた。
「ゲーセンか。」
それにしても久しぶりにゲーセンに来た気がする。
「来た事あるのか?」
佳織が伸弘に聞く。
「昔は良く来た…ってまさか…3人とも……。」
「初体験だ。」
「初めてね。」
「初めてです。」
やっぱりそうか。
「許可は取ったのか?」
後ろに魔池流さんがいるので一応問題ないのだが、聞いておく。
「大丈夫だ。」
「問題ないわ。」
「2人と同じです。」
(本当かよ……魔池流さんに連絡しとこう。)
「ちょっと待ってろ。」
そう言って、3人をその場に待機させて魔池流に伸弘は連絡を入れる。
プルル、プルル。
「魔池流です。」
「伸弘です。」
「ええ、分かります。」
やっぱり2人のこの会話おかしい気がする。
「ただ今、えーっと……2時45分によりゲーセンに突入します。」
「分かりました、背後により安全を確認します。」
そこで切れた。
「「「早く!早く!」」」
3人は早く入りたくて仕方ないようだ。
「これが欲しいんだけど…!あ―――…また、失敗した。」
佳織がUFOキャッチャーの前で地団駄を踏んでいた。
麻美と葵はその隣のUFOキャッチャーをやっている。
「このぬいぐるみか、任せておけ!」
佳織の番を終えて、伸弘は金を入れた。
(昔、俺はUFOキャッチャーの魔人と呼ばれたんだ!)
ウィーンと、機械音が鳴る。
(ここだッ!!)
ガチャンとぬいぐるみが落ちてきた。
「凄い!!取れた、取れた!ありがとう、一生大事にするぞ。」
「そこまで…しなくても…。」
佳織がここまで喜んでるくれるのがとても嬉しかった。
「今度はこっちもお願いします!」
「うぉおお!!」
「伸弘君!これも!」
「せやぁああああ!!」
こんな感じで、ゲーセンのぬいぐるみやらお菓子やら大量に取っていった。
ちなみに、荷物もちは勿論……伸弘です。