仕掛けられた爆弾
「それって、関係あるんですか?」
「う~ん?」
手を引っ張って歩いていく生徒会長は、
あいている片手であごを触る。
そのポーズはより知的さを際立たせているように見える。
「多分関係は無いわね!」
クスッと少女は、大人びているにもかかわらず子供っぽく笑う。
(これがモテる秘訣か?)
なんて、伸弘は考えつつも次の質問を口にする。
「名前を教えていただけませんか?」
「新田 葵よ、宜しくね伸弘君!」
そう言って、伸弘の顔を覗きこむ。
「え、あ、新田さんですね。宜しく―――。」
「葵!!新田さんじゃなくて葵って呼んでよ。」
戸惑う伸弘をよそに会話を続ける。
「いい?新田さんは余所余所しいから駄目!」
葵はじっと、伸弘の目を見る。
「あ、葵さんで宜しいですか?」
「まだ、何か固いけど…もうっ!」
悪戯っ子のように笑り…握ってる手に力を込めてきた。
異性が気になるお年頃の子なら、
ここでズキューン!なはずだが、伸弘には通用しない。
(ふ~む…うちのお嬢様たちにはこれくらいになってもらいたいものだ。)
そう、今の第一優先事項は学業でもまして色恋でもない。
お嬢様の消極的な性格を少しでも積極的にすることだ。
家にいるときは、2人とも弁慶のようになる。
いわゆる―――――内弁慶……というやつで…。
春に1回何かのパーティーに行った時も酷かった………。
俺とホント限られた人としか喋らなかったのだ。
挙句の果てに、『眠たいから帰る。』と俺と魔池流を含んだ4人は帰ったのだ。
「困ったな…。」
考えている事が少し、口から出てしまった。
「ええ、頑張りなさいよ、挨拶!」
葵がポンポンと背中を叩いてくる。
「忘れてた!!!!!!!!!!」
☆
ざわざわと体育館には新3年生、新2年生、
入学式を先日終えた新1年生がずらりと並んでいる。
そろそろだろうか、転入生の紹介は。
「何か私まで緊張して来ました。」
胃の辺りを、手でさすり佳織に話しかける。
「私たちの専属係だからな、問題ない!」
本当なら、ざわざわとうるさいはずの体育館は静かだった。
嵐の前の静けさだろうか。
各々が、プリンセスの言動に耳を傾けている。
呪文が聞こえてくるのは気のせいだろう。
「大島伸弘……爆ぜろ。」
「プリンセス……プリンセス。」
もう、何か犯罪者みたいな奴もいる。
「お久しぶり!」
そこに現れたのは、漆黒の黒髪、はっきりした目…そう高等部生徒会長。
容姿はプリンセス…もとい佳織と麻美と比べても遜色の無い美人。
そして、性格は完璧超人と謳われている。
「「「「うぉ~~~!!」」」」
やはり、ファンというものが存在しています。
「静かにしなさい、今日は転校生を紹介するわね、クラスは3-3!」
不意に、静まる体育館…妙な雰囲気だ。
「趣味は、散歩!」
焦らす…。
「更に、趣があることを探したり…」
まだ…焦らす!
「橋田 佳織さんと長瀬 麻美さんの…専属係、大島 伸弘君よ。」