謎の美人登場
「転入生には高等科の生徒全員に体育館で、挨拶してもらうことになっているんだ。」
歳は20前半で、伸弘とほとんど変わらない身長。
髪の毛は短く切られていて、
顔には黒ぶちのメガネをかけている男性は、笑いながらそう言った。
ちなみにお嬢様方は、クラス分けの張り出しを見に体育館へ行っている。
長橋学園には体育館や運動場などが、4つある。
幼等部、小等部……に各一つ。
場所は少し離れているので、中等部も高等部も違う学校のようだ。
「な…なんだって~!」
そんな説明はさておき、
職員室の中にある、各務室と呼ばれる場所で、
挨拶を任された伸弘の叫びはこだました。
「頑張ってね!」
そういうと、若い先生はアドバイスも無しに、どこかに行ってしまった。
挨拶って…どうしたらいいんだよ!と、思うがどうにもならない。
その先生の指示は部屋で待っておくようにだったが、全く落ち着かない。
再び緊張が体のあちらこちらを襲う。
「入るわよ?」
すると、扉の前で声が聞こえてきた。
先程の爽やかな男性の声とは違い、高くて綺麗な女の人の声だった。
「……どうぞ。」
どう対応して良いか分からずに、取り合えず適当にOKサインを出す。
「失礼します!」
入ってきた女の子は、とても綺麗で……。
☆
伸弘と別れて麻美と佳織は、体育館へ向かう。
この2人と伸弘はクラスを離れるという事はまず有り得ない。
…権力とは素晴らしく、そして恐ろしいものだ。
「伸は大丈夫なのか…心配だなぁ。」
佳織と麻美は特に行く必要も無い、体育館へ足を運ぶ。
「…本番に強い方ですから。」
2人のプリンセスは、オーラのようなものを出しながら体育館へ入った。
二人が入ると、キャーキャーと反響していた声が更にパワーアップした。
「しかし、高等部の全校生徒に挨拶とは…私だったらごめんだけどな。」
「私も嫌ですね。」
そんなことを言いつつ、クラスを確認しようと張り紙を見に行く。
すると、それまで張り紙の前でたまっていた、少年少女はすっと道をあけた。
「3-3だな。」
「ええ。」
二言だけ交わす、それは至極当たり前で何のドキドキも無いのだ。
「2人は誰か一緒になりたい子とか居るんですか?」
唐突に質問される、声の場所はだいたいしか分からない。
「「大島 伸弘」」
それだけ、答えるとすっと二人は隅の方に移動する。
―――――――爆弾を残して
☆
「転入生の子ね?」
高くて綺麗な声の持ち主は、そう伸弘に尋ねた。
見た目は、黒い髪のロングヘアー。
黒というか…漆黒と言った方がいいのだろうか。
目はスッと切れていて、それでいてはっきりしている。
身長は麻美とほとんど同じくらいだが、なぜだか麻美よりも高く見える。
「そうですが…。」
目での分析を終えて、質問に応答する。
「体育館へ行くから着いて来てね?……大島 伸弘君。」
クスッと笑いながら、手を引っ張る。
「何で俺の名前を?」
「…高等部生徒会長だからかな?」