到着――男子はどんな環境であろうと同じです。
全ての用意を終えて、車で学園に向かう。
長橋学園が見てきた。
…相変わらずの大きさだなぁ。
伸弘は左端に座っている。
2人は何かを喋っているが、伸弘の頭には入ってこない。
…な、なんだか気分が悪くなってきたぞ。
「の…さん……伸弘さん?伸弘さーん!!」
「うぉッ!どうした?」
麻美の呼びかけに少し遅れて、反応する。
「どうした?じゃない!学園だぞ?」
佳織が、フォローを入れる。
「ま、まっかせろい!!!」
伸弘の変な気合の入り具合を、麻美と佳織は顔を見合わせて笑う。
普段結構澄ました顔をしてることが多いので、
こういう空回り具合は珍しい。
そして、先に車を伸弘が降りて礼を言う。
「ありがとうございました、魔池流さん。」
そういって、麻美、佳織の順に手を取りおろしていく。
「ありがとうございます。」
「ありがとう。」
2人もキチンと頭を下げて、礼を言う。
「では、案内をお願いします、お嬢様。」
学園で伸弘は2人をお嬢様と呼んで、丁寧に対応することにした。
そうしなければ2人に迷惑がかかってしまうと、
佳織と麻美の遠慮を押し切ったのだ。
「ふふっ…こしょばいなあ…。」
「全くです、私たちは別に構いませんのに。」
2人は自分の気持ちをそれぞれ言いつつ、先頭に立つ。
「そんなわけにはいきませから!」
伸弘は、校門をキョロキョロと見ながら後ろを着いていく。
―――何だこの校門…でけぇ。
そんなことを思いつつ、歩いていく。
そこで、何故か3人に視線が集まっているのが分かった。
……出来るだけ、耳に意識を傾けないようにしよう。
と、思うのだが、逆に意識がいってしまう。
「プリンセス達に、何か男が引っ付いてるぞ?」
「なんだあれ?」
「プリンセスと居る男性の方…誰かしら?」
「知らないわよ。」
と、このときは男女、様々な声が聞こえる。
待て…プリンセス?お姫様?
「プリンセス?!」
伸弘は声を少し出してしまう。
「「その呼び方は辞めろ(て)!!」」
まさに神速の反応。
「まさか…2人が?」
……沈黙。
ぽこっと、佳織に肩を殴られる。
2人を見ると、顔を真っ赤にして下を向いている。
麻美はぎゅっと、ちぎれんばかりにかばんを握り締めていた。
「うらさい!さっさと行くぞ!」
スタスタと佳織はスピードを上げる。
ちなみに、うらさいは噛んだだけで、うるさいですよ!
「…着いて来てください。」
袖をちょこんと摘まれて、先を急ぐ。
そして、数人の男子の声が聞こえた。
「おいっ!あいつ麻美様に手をつままれているぞ!!」
「誰だか知らんが……粛清だ。」
「おい…お前ら!いきなりだが、麻美様より佳織様だろうが!!」
「うるせー、あのおしとやかさが、最高なんだろうが!」
「なんだと?!!あの凛とした佳織様こそ至高だ、くそ!!!」
以下――――――――略
あー…大変だ、お陰で緊張が解けちゃったぞ。
有難いことだが、何か…男はどこまでも男だな。
「そうだ、全部……全部……聞かなかったに事にしよう。」
そう心に決めた伸弘だった。
「ん?」
首をかしげる麻美と、
「早く!」
顔が真っ赤なままの佳織。
そんな2人と、職員室に向かった。