学園登校日の朝
あれから間も無く、転校手続きを終えた。
専属係は制服を貰わずに、スーツで学校に行かなければならない。
そんな登校初日の朝。
「あと五分だけ…」
片目を開けて、佳織はむにゃむにゃ言っている。
「あほかっ!今日から登校日だろうが!」
伸弘は、佳織にかかっている布団を捲り上げる。
「…いーやーだー!伸のばーーーか!!」
舌を出して、アッカンベーと伸弘にする。
そう、佳織は朝が弱いので、日によっては幼児退行化するのだ。
普段は、凛凛しいのに…ギャップが凄い。
「朝飯冷めちまうぞ?」
伸弘は必殺技を発動する事に決定した。
「…デザートあるの?」
「さぁ?いつもどおりだが……今日は登校初日という事で、朝からケーキが…」
ビューン!と漫画であれば書かれていそうな勢いで、大食堂へ向かう。
「麻美、朝だぞ!」
すると、パチっと目が覚めた。
この子は寝起きが良い…………嘘です、ゴメンなさい。
そう、麻美は朝は何故か知らないが甘えん坊になるのだ。
「おんぶ。」
「…はいはい。」
やり慣れた、この一連の動作。
よいしょっと、麻美を担ぎ上げる。
麻美はとても軽いので、運びやすい。
「ちょっ!耳噛むんじゃねーよ、ぁあ!」
朝から、男の頭のおかしい声が聞こえる。
「今日は晴れてる?」
まだボーっとした目で伸弘に尋ねる。
「快晴だ。」
「今日から学園だね。」
「そうだな。」
「楽しみ?」
「緊張してる。すっげー緊張してる。」
「大丈夫、私と佳織がいるから。」
麻美は、にこっと伸弘に微笑む。
肩に麻美は頭を乗せているので、顔が近くて恥ずかしい。
でも、少し緊張がとけた気がした。
しばらくして、大食堂に到着する。
「さぁ、お嬢様大食堂に着いたぞ。」
そう言ってゆっくりと大事に降ろす。
「手!」
短いフレーズだが、それだけで伝わる。
ギュッと手を握って、大食堂に入った。
「あぁ!手つないでる!!」
佳織はケーキを上品に食っていたのだが、走ってこちらにやってくる。
「私もー!」
えへへーと笑いながら
佳織は、空いてる左手を取って握った。
「あー嬉しいんだが、飯が食えんぞ。」
そう言って、取り合えず2人を座らす。
こいつらが、エンジンかかるのは炭水化物を取った後だ。
「手を合わせてください!」
「「頂きます!」」
談笑しつつ、飯を食い終わる。
ご馳走様の音頭を取り、飯を終える。
そうして、2人はいつもの2人に戻っていくのだ。
ただ朝の2人の出来事はツッコンだら負けで、黙っているのが暗黙のルール。
調子に乗って、寝ぼけていた話をしたら…殺される!!
大げさではなく、真剣なのだ。
皿はちゃんと流しに持って行って2人は部屋に戻る。
伸弘は、皿を洗って用意を進めている。
こうして、朝は過ぎていった。