素晴らしき学園生活へ!
魔池流は再び車へ帰っていった。
何とまぁ…自己嫌悪で自分を吐き捨てたくなる。
今まで散々恩返しは、要らない要らないと繰り返していたのに、
自分の手に入れたかったものを差し出されると、思わず飛びつきそうになる。
本当に浅はかで、最悪だ。
「………いや、気持ちは嬉しいんだが…」
つくづく自分勝手だな、と思う。
決めきれない、迷ってる。
――――本当は、行って見たい。
全く違う環境で、新しいことに出会いたかった。
☆
「そんなに私たちと学園生活を過ごすのは…嫌ですか?」
麻美は、きゅっと手を胸の辺りで握りこぶしにする。
何故だかは、麻美も分からない。
どうしても、どうしても…他の人とは違う感じがする。
漠然とした感情だが、それしかない。
この人と学園生活を送ってみたい。
初めて会ったとは思えない。
もっと、この人を知りたいと思った。
「嫌とかじゃないよ、むしろ嬉しいんだ。
…ただ、なんと言うか自分自身が嫌で仕方ない…みたいな?」
少し笑ってごまかす。
訳分からないことを言ってるのは、よく分かっている。
それを聞いた佳織は、
「ふむふむ…。なら、一つ条件を付けさせてくれ。これなら、等価交換だろう?」
ドキンと心臓が高鳴る。
等価交換…なるほど。
俺は、少しだけ、少しだけ…卑怯な自分でもいいと思った。
「条件って?」
「私たちと…一緒に…一緒に…」
佳織は言葉に詰まる、一言が口から中々出てこない。
でも、これはきっと麻美も同じ。
「一緒に暮らしましょう!!」
麻美は、佳織の言葉を引き継いだ。
力強く、凛とした声だった。
ここで独断で決めるのは……
でも、このチャンスを逃せば、俺は一生後悔するだろうと思った。
何かを変える…いい機会だ。
「では、お嬢様方に精一杯のご奉仕を!」
格好をつけてみた。
そうでもしなきゃ、嬉しさが溢れ出てしまう。
…誰にも流される事無く、俺は決断をしたのだ。
――――何かが起こる、そんな予感がする。