5話 蕾は綻び、咲き乱る
「な、な、なんだこの書類は!」
「見た通りです、グラヴィル宰相。」
書類が机の上に散らばる中、アレンは自信満々に口角を上げる。
「我々は証人の身柄を拘束している。フランシス・ジョン・ド・バロワが全部喋りましたよ。あなたの指示でフローラに近づいたこと、内側からこの国を崩そうとしていたことも全部。」
「くっ、うつけだとは思っていたが、ここまでとは!」
「逃げ場はありませんね。宰相?」
「くっ……。」
────────。
「サバナ共和国の自治権、両国とも手放したようですね。」
「ええ。」
「エリオール連合国とは公平な貿易関係を結ぶそうですわ。元々我が国の鉄が目当てだったみたいですし。」
「……ええ。」
「……ちょっと。さっきから生返事ばかりじゃありませんの。」
アレンの指揮の元、国内情勢が落ち着き、ポリニャック邸にも平和が訪れた。
サブリナとハンスは庭園でお茶を飲んでいるが、2人とも心ここに在らずのようである。
「……サブリナ様の、陛下への想いは消せないのだと、あの夜思い知りました。」
「ハンス……。」
「私がどれだけ愛しても、陛下とサブリナ様が過ごした時間は消せない……。」
ハンスが肩を震わせる中、サブリナはふう、と息をつく。
「私もあの夜まで気づきませんでした。私は……ずっとフローラに嫉妬していたのね。」
「サブリナ様……。」
「でも、これからは違う。私にはあなたがいる。いつか陛下といた時間より長くなる。
意見が違っても、ぶつかっても、きっと一緒にいられる。
そんな希望があったから、私は貴方を選んだのです。」
「サブリナ様……。」
ハンスはサブリナの手を取ると、そっとキスを落とす。
「私の姫君は、生涯あなただけです。」
「あら、キザですこと。」
庭のモクレンはふっくらと蕾を膨らませ、いまかいまかと咲き誇る日を待っている。
これはかつて、歓楽街の男を思いのままにした女の物語。
陽の当たる愛の物語は、これから始まる。
完




